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16・魔導というモノは問題だと叫ばれた

 麦の刈り取りが終った頃、暇を見つけてようやく試運転の日が来た。


 元の積載量であればきっとこの魔導機でも動くはずという、ドワーフの勘で成り立つ魔導車。


 それを運転するのは俺。ブレーキを付け操舵のために前輪も改造して操縦も出来る様にした。以前のようなヘマは無い筈だ。


 そしてゆっくり動き出す魔導車。


 そのまま村の中の道へと走りだし、村のみんなにお披露目である。


「ん?今日は町の教会から神官が来てるのか」


 神官服を着た人たちが道を歩いていた。


「ま、ま・・・・、魔族!!」


 いきなり神官がそんな叫び声をあげた。


 魔族?そう思って周りを見るがこれと言って怪しい奴がいる訳でもない。そもそも、魔族って誰だよ。


 魔導車を止めて神官の方を見る。


「お前、魔族か!」


 神官が俺を指さしてそんな事を叫ぶ。


「魔族ってなんだ?俺はドワーフだ」


 そう言うと一瞬ためらったように見えたが、何か意を決したような顔をする。


「そ・・そんなのは見ればわかる。だが、何だそれは!」


 何だと言われて指を指すのは荷車だ。


「何って南方で噂になっている魔導とかいうモノを作って載せてみた荷車だが?」


 手短にそう説明してやった。


「南方?パンノニアか!!」


 何叫んでんだろうか?この神官は。


「そうらしいな。向こうでは魔導で回る道具があるって言うから、聞いた構造を実現してみたまでだが?」


 神官が何を吠えているのかよく分からないんだが。


「お前、聖教の禁術を知らないのか?その魔導とか言って勝手に荷車を動かすそれは傀儡術ではないか!!禁術中の禁術だぞ!!!」


 そう叫んだ。禁術?それは何だろうか。


 俺が不思議そうな顔をして叫んだ神官を見る。


「ドワーフ殿。そなたは聖教の禁を侵した。確かにドワーフ族は聖教の信者ではないものが多い。しかし、だからと言ってレンジェレフで禁術を使ってしまえば、ここに置いておくわけにはいかない」


 と、いきなりな事を言い出す別の冷静な神官。


「いや、これは呪術ではなく、魔力と魔物素材で生まれた動力だぞ?炎や電撃と同じ類だ」


 俺も彼らの言っている事がよく分からなかったので冷静にその仕組みを簡単に伝えてみたのだが


「魔族認定を受けたモノは皆がそう言い訳するのは知っている。しかし、その馬の無い荷車を動かしたという事が、聖教における傀儡術の禁に触れるのだよ」


 なんだよ、それだともしかしたら魔力ではなく蒸気機関や内燃機関も傀儡術と言いそうな勢いだな。まあ、この世界には存在しちゃいないだろうが。


「おいおい、それだと帆を立てて風で動かしても傀儡術になるんじゃないか?」


 と、冗談を言ってやる。


「帆は目に見える。その魔力で動いているという事をドワーフ殿はどうやって私に見せてくれるんでしょうか?魔力は目に見えません」


 トンデモナイ話だぞコレは。


「風も目には見えないんだがな?」


 そう返したが、そう言う事ではないらしい。


「風を受けた帆が膨らむだろう!その魔導というのは魔力で光ったり膨らんだりして動くのか?」


 復活した絶叫神官がそう問うて来た。


「いや、目に見えはしないな。只回っているのが見えるだけだ」


 という事は蒸気圧や気筒内爆発ならこの問いをクリアできそうだな。が、モーターは無理か。電気でも魔力でも。

 などと冷静に考えている俺。


 そんな事をしているところに騒ぎを聞きつけたエッペやケビも現れた。


「他のドワーフの方も居ましたか。この方は魔族認定されましたので追放となります。貴方方は認定の場に居なかったので魔族ではありません」


 冷静な神官が二人を見付けてそう語った。


「おいおい、俺たちもソレに関わってるぞ。そいつだけじゃなぇ」


「な‥なんですと!!!」


「いえ、認定は彼だけです」


 絶叫神官の叫びを遮ってそう宣言する冷静な神官。


「この村では新しい農具や武具が生み出されております。周辺にもそれは広まっていますね?貴方方の貢献は計り知れません。本来、禁術を使った者はその場で処断されるモノですが、生憎とここは辺境の村。しかも、魔族とは言えど村への貢献度も多大。ならばパンノニアへの追放に減刑し、関係者の責も問わない。という事にさせていただきたいのですよ。騒ぎが大きくなれば村その物に関わりますので」


 完全な脅迫である。たかがモーター作った程度で何だというんのか。が、俺は醒めていた。


「そうか。魔導機の開発は俺の功績であり、俺の責だ。その2人にゃあ関係ない事だ。荷車を弄ったら魔族ってんなら、今目にしてる神官らも係累だよなぁ?」


 醒めてはいるが、怒っていない訳ではない。冷静な神官を睨み返す。


「そうですね。我々もただ叫び、魔族認定するだけで貴方を止めるでもなく、ましてや傀儡術を暴けてもいない。それを責と問うなら、甘んじて受けましょう」


 全く感情の起伏なくそう言った。


「エッペ、ケビ、そう言う事だ。俺はパンノニアでこいつを更に研究してみたい。俺の作った物より進んだ魔導があるらしいって事なら、喜んで俺は行こうと思う。後の事を頼んでも良いか?」


 彼らもどこかでパンノニアへ行きたいと思っているかもしれない、しかし、だからと言ってせっかく出来上がった農具や武器を放り出して皆で向かうのは違う気がするんだよな。


「巧い事言いやがる。まあ、任せとけよ。だが、そのうちそっちへ行くぜ」


 苦笑しながらエッペがそう返してきた。

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