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15・魔導というモノを実現してみた

 コウチンへと戻った俺は早速その魔導というモノを試してみることにした。


 きっとそれはモーターの様な構造をした装置であろうと思う。動くというのだからそうだろう。


 なにせ、聞いた構造がまさにモータのそれだった。


 という事で、魔結晶と猪の骨を用いて作ってみたが、さて、どうだろうか。


 そもそも、なぜ動かないかは話のとおりなら水車をモデルとして巨大な水車自体を回そうとしたのではないかと思われる。つまり、モーターと同じような動き方をするのであれば、可動部が骨の付いた軸のみ。外周が動くわけではないはずだ。

 失敗したという原因はそこにあるのではないかと考えた。


 が、実際に制作してみたところ、確かにあのドワーフの言った通り、只回る程度の事しか出来ない代物だった。


 問題があるとすれば、骨では魔力による回転力が足りないことだろうか。ならば、骨ではなく、やはりモーター同様にコイル状に魔物の糸でも巻けばいいのだろうか?


 そう思って魔物の糸を骨に撒いてみたが全く結果は変わらなかった。


「何やってるんだ?」


 エッペやケビがそう言って興味を示しては来るが、彼らも解決策は見いだせなかった。


 魔法の発動にはブースターを使う、それは杖であったり剣であったり。


 いずれも魔石や魔結晶と魔物の素材が使われた品だ。


 この魔導もそれは変わりがない。そもそも魔術系はドワーフではなく魔術師がやる事なので門外漢ではある。

 ただ、一応の基礎は魔法剣の知識として知っている。


 入力側と出力側、当然そう言う方向性が存在している。


 骨を魔結晶に向けているのはそう言う事。そこに魔物糸を・・・・・・


 巻いたんじゃだめじゃないか。糸が魔石に対して毛先を向けていないと。


 という事で巻いた糸の毛先を骨と同じ方向に向けてみた。


 うん、多少、気持ち、たぶん速くなったし力も増した。


 だが、どうも違うらしい。


「一体何やってんだ?骨を回す玩具か。骨が回っても面白くないな、人形でも回せば売り物になるかもな」


 エッペがそんな冗談を言ってくる。


「今のところ、売り物に出来る状態にゃ程遠いがな」


 そう肩を竦めるしかなかった。


 ふと思った。この魔導がモーターの様に動くのであれば、ハーベスターや藁を切っているあの藁切りも回転式のカッターを作れるのになぁと。


 秋の収穫で使用した刈り取り機や脱穀機を点検し、ふと思いついた。


 いっそ、糸を骨に並べてしまえば良いのではないかと。


 早速その通りやってみたら、今までの悩みは何だったのかと思う様な成功である。


 そして、長さではなく魔結晶に向いている量ではないのかと考えて短く切って束ねてみた。これが成功すれば小型化が可能になる。

 が、手で抱えられるサイズ。よく農機具に使われるモーター程度のサイズに作ってみたが、出力が大きく下がる結果となってしまった。


 一応、直径1メートルサイズでは稼働するので定置式の脱穀機なら可能になるだろう。出力的に石臼も回せるかもしれない。

 ただ、まだ動かせるのはその程度。


 ただ、出来たのは確かなので早速それをエッペやケビに見せてみることにした。


「おお、すげえな。魔力流すだけで動いてやがる」


 エッペは魔術武器の知識も豊富らしく、魔結晶を魔力源とする方法も知っていた。


 これで個人の魔力を気にせずとも動かすことが可能だ。


「外殻の強度は魔力供給次第じゃ魔物素材で十分いけるんじゃないか?」


 防具の知識を生かしてケビもそう提案してくる。


 それらを取り入れてさらに実用性を持たせるために動力源になるコアを増やす事で出力を上げることにした。

 モーターならば直結で連結した状態になるだろうが、内装が可能なので三つの骨と束ねた糸を見覚えのある円筒形の外殻に取り付けて製作した。


 これまでの魔導機はコアが一つなので直径こそ1メートルあるが長さは30センチ程度でしかなかった。それを3連にしたので長さも1メートルほどとなってよりモーターに見た目が近付いてきた。


 出来たものを2人に見せると大はしゃぎだ。なにせ、初めて作った魔導なのだ。何に使うか夢が膨らむ。


「こいつを使えば水車や人力の代わりに何でも動かせるな。なあ、いっそ、まずは荷車でも動かしてみないか?」


 当然の様にそう提案されるわけだ。


 脱穀機や唐箕を改造してコイツとベルトで繋げばあっという間に魔導脱穀機や唐箕となる。だが、それは芸が無くて面白くない。

 アッと驚くモノが何かといえば、それは当然自動車だろう。


 モーター出力から考えて、プラウやハローの牽引は未だ難しいが、単独で荷車を動かすぐらいなら出来る。


「それは良いな。早速取り付けてみようか」


 荷車を3人で弄って魔導機を載せたのは良かったが、そのままベルト駆動としたのでは速すぎた。止まり切らずに村長宅に衝突する事故を起こすことになった。


 壁が崩れたがそれは3人で謝って修理し、試験の続行も認めてもらった。


 随分甘えているのは確かだったと言えるだろう。


 次は減速機を設けて回転速度を落とし、ブレーキも装着するという事になったので農具の手入れの合間を縫っての作業となったので春の麦収穫を終えるまで試験はお預けとなってしまった。 

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