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13・そして新たなドワーフが現れた

 畑が拡大した事で麦の収穫量は倍増している。それ以上か?


 この国の税制がどんなものか知らないが、少なくともこの周辺はそんな苛酷とまではいかないらしく、随分実入りが残る状態らしい。


 それを利用すれば狩人の定期滞在にも問題なく対応できるとの事。すでに鍛冶師が二人いるので狩人への武器や防具に関する対応は問題ない。


 シツィナで魔物素材が取引されるようになり、商人を通じて狩人にもコウチンの話が入っている頃合いになった夏頃、更に狩人が村へと訪れるようになる。


 そして、周辺の村について尋ねたところ、以前のコウチンの様な寒村しかないという。


 そろそろプラウやハローを他の村に広めても良い頃合いだろう。


 俺はそう思って周辺の村を回って少しばかりの対価を受け取りながらプラウとハローをひろめて回った。


 牛か馬は何処の村にも居るには居る。荷車を引くのに必要という事で最低限は飼っている様だ。ただ、多くを養うほどのエサの目途は無く。本当に最低限しか居ない。


 そんな村々なので2頭曳きのプラウと人力の車馬鍬という取り合わせで1セットか2セット程度を置いて来るだけになったが、それでも在ると無いでは違うだろう。まだコウチンは豊かな方だったらしい。


 そして、未だ脱穀が済んでいない村などでは脱穀機と唐箕が大盛況だった。人手が少なくとも効率よく脱穀、選別が済むのは何よりうれしかったようだ。


 農作業が効率化すれば他の作業に時間が取れる。それだけでも大きく村の状況は変わる。


 こうして農具をばらまいておけばドワーフが村々を回る事も出来る様になるので、俺たちの仕事も出来るって訳だ。シツィナで師匠をはじめ、狩人向けの武具製造が本格化しているので俺が三角ボウを作らなくともあちらで、或いはエッペが作れるので、まずは俺が村々を回る事にしようか。


 そうやって村を回ってコウチンへ帰り着いた時には既に秋の収穫が始まっていた。あちこちへと行ったり来たり、かなり広範囲に巡っていたからだろうな。


 秋の収穫でも刈り取り機は活躍している。そして改良がくわえられて一筋に倒していくのではなく、ある程度纏めて落とすように改良が加えられている。

 もちろん、俺はそんな余裕はなかった。


「お、あんたか、アレ考えたの。なかなか良い物考え付くな。今までありそうでなかった代物だった。俺は刈り倒したものを集めて纏めようと考えたことがあったからちょっと弄らせてもらった」


 そう言って来たのは新手のドワーフだった。


「俺もべルーシからの流れ者でな。北の海沿いに居たんだが酷いもんだったぞ。ケビだ。よろしくな」


 俺たち同様、べルーシから逃れて来たらしい。ただ、北方の海沿いの地域だったらしく、被害に遭ったのは俺たちよりも後の事だったという。

 まだ北へ連中が進むのかもと思ったが、寒さと連中が欲する食料が乏しかったらしく、すぐに南下を始めたらしいと噂になっていたそうだ。

 そんな彼も当然鍛冶師で、農具を主に作っていたらしい。

 

 そして、刈り取り機を見てあのアイデアを実現したというのだから。俺の知識チートとは一体。


 いや、分かってるさ。バインダーの結束装置が作れない現状では纏めるという作業の必要性を考えていなかったことくらいは。


 何だかんだで抜けが多いな。


 そんな新たな鍛冶師の加入で俺が悔し紛れに言い放った放言についてケビが考えているというのでまた驚きだ。


「あの風選装置の更なる改良案があるって?エッペは風をそのまま利用して台揺らそうとしたが無理があるって言っていたが、あんたなら出来るのか?」


 そんな風に聞いて来た。


「まあ、風で揺らすんじゃなく、台自体を動かせば良いとは思うが、手で回すのは酷だろうな」


 そこまで分かっているらしい。


「そこまで分かっているなら話が速い。その通りさ。箕を唐箕の中に取り付けて揺する事が出来ればさらに綺麗な選別が出来るとは考えた。だが、その方法を思いついていないんだ」


 正確には諦めているが正しいが、そう言っておく。すると腕を組んで考えているが、歯車やベルトで動かす事は出来るが、人が手で回して持続させるという点にどうしても無理があった。


 もちろん方法が無くはない。水車や風車という動力源を使えばそれも可能だ。粉ひき小屋だけでなく、新たに選別小屋を建てる。それはさすがに効率的とは言えないというのが二人の一致するところだ。


 ケビがやって来て農具関連も彼が覚えて担当するようになると、ますます俺は自由になった。


 夏に作った大型プラウも馬が新たに増えたことで秋には稼働しだしている。


「しかし、凄いものを考えたな。あんなのがあれば普通のプラウの何倍も捗るじゃないか。あのハローって奴もそうだ」


 4頭曳きのプラウは人を載せて反転させて、畑の端へ着くとプラウを引き上げる。するとカムが動いて勝手に左右の切り替えをしてくれる。

 後は馬を操って次の筋へと導いてプラウを下ろすだけ。時代を超越した構造だけにその作業能率は非常に高い。6頭曳きに出来たならもっと深くいけるのだが、4頭なので比較的浅くしている。それが見た目上の速さに繋がっているのは内緒だ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 知識チートばかりでなく、それを踏まえて周囲が工夫し出すのは面白いですね。
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