12・そう、それは固定観念さ
さらにプラウも新たに作る事になったが、そちらも二連タイプを作ってみることにした。
二連で双方に反転させる。ちょっと考えてみて欲しい。
二つのプラウがあるという事は、一つ目、前に対して後ろのプラウが反転する側の内側。右へ反転させる場合、後ろのプラウは左にオフセットして取り付けられている。
さて、そのまま左へ反転させた場合どうなるだろうか?
困ったことに後ろ側のプラウが前方のプラウが返した土の上を更に返していく。そんな冗談みたいな状態が出来上がってしまう。
つまり、多連プラウの場合、反転板だけでなくプラウのフレーム自体も動かさなければ上手く耕す事が出来ない事になる。
なので、ここは乗用として大型のプラウを製作する。
人が乗って畑の端まで行ったらレバーによってプラウを引き上げ、そしてカム機構によってフレームから左右逆に動かす。
実際、日本で発売されていた多連双用すきがそのような機構となっており、似たような機構を採用した小型のプラウも存在している。
が、かなり複雑になる上に重量も結構なモノになってしまう。
「こいつは4頭いないと無理だぁ」
完成したプラウはそのような状態となってしまった。流石に2頭では無理。かと言って今季は馬の工面もすぐには付かないのでお蔵入りという惨状。
結局、新たにプラウを2つ作ってお茶を濁すだけという状態に甘んじるしかなかったが。麦と魔物の収益があるから秋にはさらに馬を買い入れることは可能だと話していた。
さて、畑の準備が整うと種蒔きだ。
冬に大量に作った播種機を用いて種播きが始まる。
人力で使う場合は単車。牛や馬に曳かせるものは3連として使ってみたが、トラブルなくいけている様だ。
播種機の構造自体は難しくないので俺ではなくほぼ木製な事もあって大工が作っている。前輪の重みだけでは溝が作れないようなので種が落ちる管の直前に溝切り棒を追加したのが唯一のトラブルだろうか。
そんな作業がひと段落すれば、積み上げていた麦の脱穀が行われる。
麦の脱穀は叩き棒で叩くのが一般的だ。
米であっても多くの地域ではこの方法がとられているので千歯扱きの様な道具は使われていない。なにせ、千歯扱きと同等か叩く方が容易だから。
転生モノで千歯扱きが万能農具に扱われることが多いが、ジャポニカ米の様に難落性の穀物でない限り、叩き棒で十分なのだ。
だが、俺としてはそれでは気に入らないので足踏み式脱穀機を作ってみた。
明治時代に作られたそれは扱ぎ胴が丸裸でムシロを掛けて飛散を防ぐ構造だったようだが、近年販売されている脱穀機は全体を金属板でカバーしている。
当然、作るならカバー付きだろう。
何よりこの世界には魔物の革という便利な材料があるのだから。
エッペに教えられたように魔物の骨を軸受けに使い鉄のは強度が必要な骨組みのみとしてほぼ木製。そして外板として革を貼る。そうすることで投入口と排出口以外はカバーされた状態になる。
「いったいこれは?」
敷物を敷いて叩き棒でせっせと叩いているところに脱穀機を持ち込んでみた。
「脱穀する道具だ。叩き棒とどちらが早いか分からないが、使ってみてくれ」
そういって使い方を教えて使ってもらった。
「面白いように落ちる。これは良い」
やはりというか、一部の心は子供の男性陣が大はしゃぎして冷ややかな視線を受けていたが当人たちは一切気にした様子が無い。
実際、そんなに効率は悪くなさそうで、叩き棒のようなコツも要らないので誰でも出来ると好評だった。
問題は時折穂ごとちぎれるものがある事だが、まあ、それは仕方がない。受け網を付ければさらに効率は上がるのが分かっているが、そんなものを足踏みの力だけで回せる保証が無いのだから。
当然、脱穀が出来たならば選別も必要になる。
選別に使う唐箕も当然だが製作している。これも殆ど大工の仕事だ。
「軸受けを魔物の骨で作ったから非常に軽い。あまり勢いよくまわすとすべてを吹き飛ばすから注意してくれ」
唐箕はその人の個性が出る、慎重になりすぎて風量が足りなかったり、勢いが良すぎて籾まで飛ばしていたりするがこれは経験となれの問題だから口で説明してもどうにもならないだろう。
そして、俺はハローや播種機の更なる改良へと取り掛かっていたのだが、気が付いたら脱穀機と唐箕を荷車に載せて脱穀した先から唐箕に投入できる代物が完成していた。
「どうだ?お前が考えた農具を合体させてみたぞ」
やったのはエッペだった。
なるほど、一段高い台の上に脱穀機を載せてそこで脱穀してそのまま唐箕に落ちるようにすれば人力ハーベスターの出来上がりではある。駆動に二人必要になるが、叩き棒で叩いて箕で風選する事を考えると非常に効率化が出来て人手も少なくできる訳だから、ここに行き着くのは当然だったか。
ただ、ハーベスターやコンバインを知る俺は固定観念として動力が無ければその先へと進めないものと思い込んでいた。実際には人手をかけることである程度実現できるというのは軽い驚きと言えるだろう。
だからと言って、悔しくない訳はない。
「選別は箕で揺らしながら風を当てるのが本来の姿だから、唐箕に揺れる棚を設けてそこに風を通せばさらに効率が上がるかもしれない」
などと無茶振りをするという暴挙に出た。




