表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/55

10・知識チートを乗り越えてくるドワーフって異常だろ

 牙兎の巣から出てきたのは7頭。そして、さらに慎重に探ると2頭出て来たのでそれは近接戦で狩人が槍で仕留めた。


 兎なのに羽じゃないんかって?この地域じゃ頭だそうだ。


 仕留めた兎を絞める狩人たち。新人教育も兼ねて教えながらやっている。


 角猪は角と革、肉が採れる。牙兎は主に牙だが、肉も食べられるし筋も使える。そして、毛皮としての需要も無くはない。個体が小さいのでコートは作れないが靴や手袋にするには十分だ。


 冬の間、そうやって狩りを行ってこれまでにない収入がどんどん増えていく。


 そして、俺は街へと師匠を訪ねた。


「しかし、これはよく考えたな」


 俺の製作した三角ボウをマジマジと見る師匠。


 狩人相手に仕事をしてきた師匠はその有効性もすぐさま理解したらしい。


「弓の名手じゃなくとも一人前の事が出来る弓というのはなかなか良いな。作りが特殊でしっかり整備や調整をしてやらんとダメになりそうだが、マトモな狩人ならそんくらいの事は分かってるだろう」


 当然ながら、リムが骨と筋という結構繊細な品であるため、前世のグラスファイバーやらカーボンのようにはいかない。滑車もプレスの量産ではないので量販品のようには扱えず、個々の調整が必須。


 といっても材料自体は牙兎というありふれた魔物の骨と筋、角猪の骨、そして鉄があれば作れてしまうので高級品というほどでもない。


「しかも、狩人には向いているが、兵士や騎士に持たせるには難があるというのはなかなか良いなコレ」


 そう、ここが何よりポイントが高い。


 剣とか盾、或いは普通の弓であれば領主や国のお抱えがやって来て勧誘や譲渡を求めてくる。


 べルーシでそういう所の対応で困っていた師匠にとって、メンテナンス性に難があって武人の蛮用に耐えないと云うのは得点が高いらしい。


「何なら師匠も作ってみては?原理はそれを見ればわかる様に、偏芯滑車が梃子の働きをすることですから。応用も可能ですよ」


 どうやらすでに小型の三角ボウではなく、大型のコンパウンドボウについて考えていたらしい師匠はニヤリと笑う。


「長弓部隊の兵士より遠くへ飛ばせる弓も可能って事だよな」


 そう、コンパウンドボウというのは相当に飛ぶのだ。前世において和弓やトルコ弓など有名な弓で最大射程は400メートルを超える程度だったが、コンパウンドボウならそのくらいは平気で飛ばせる。イングランド弓の様な強弓に対抗可能な訳だ。

 さらに、上級者用のモノでの千メートル越えという記録があり、アーチェリー連盟の条件下で283メートルだそうで、的を狙って200メートル越えが可能という、ある意味伝説級の弓を作り出せるようになった訳だ。


 なにより、それを扱うのが一握りの名手ではなく、弓を扱う才があるならだれでも目指せるというのだから既存のモノとは比べ物にならない。師匠が何を考えているかはよくわかる。


「お前の名前を冠してマッツ弓とでも名付けるか」


 冗談なのか本気なのか、そんな事を言いだした。


 それから師匠が弓作りに嵌ったので魔物素材がそれに合わせて必要になった。


 師匠は大型のコンパウンドボウを作っているので俺の三角ボウとは競合しない。あっちは弓使い用であり、俺のはクロスボウ使いが扱うのに向いているので自然と扱う層が違う訳だ。


 ちなみに、あの弓の才能があった新人は師匠の弓を手にしてさらに才能が開花したらしい。


「ヤンの奴、あんな遠くの獲物をしとめたぞ」


 どうやら150メートルくらい向こうをうろついていたチュークを串刺しにしたらしい。いや、文字通りに地面に鳥が縫い付けられている 


 それを見て師匠の弓を求めるものが出たが、そんな距離で射止めることなど出来るはずもなく、ただ散財しただけの者が大半だった。君たちにも扱いやすい三角ボウならその半額以下だぞ?


 実際に使用した結果として、予想通りに師匠のコンパウンドボウは弓の上位互換、俺の三角ボウは連射可能なクロスボウといった認識が出来上がった。


 

 さて、春の兆しが見え始め、魔物素材で活況を呈するコウチンへやって来る狩人がちらほら増えはじめている。

 それと同時に魔物素材を扱う商人も顔を出すようになった。

 畑の麦も青々と元気良く育っているので先を見越して狩人や商人向けに宿の建設も始まるらしい。


 昨年初めて来たときにはただの寒村に過ぎなかった村が魔物を狩る狩人がやって来る拠点へと変わろうとしている。


 そのおかげか、商人と共に村へとドワーフが顔を出す。


 シツィナより更に西の街から噂を聞いてやって来たらしい。


「ケネトの弟子というのはお前か?」

 

 俺を見るなりそう言うドワーフ。


「そうだが?」


 少々警戒しながらそう答えると


「そうか、面白そうなやつだ。しばらく厄介になる」


 そう言ってこの村に居着くことを宣言してきた。


 そのドワーフ、エッペは師匠とそう変わらない腕の持ち主らしく、早々に魔物素材の槍や矢の製作をはじめ、気が付いた頃には三角ボウやコンパウンドボウすら作るようになっていた。


 何とも吸収と応用が速い事で。


 そんな彼に狩人の相手を半ば押し付けて麦の色が変わる頃には俺は農具の製作に集中することになった。

 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ