異世界行進曲
第2話目となります。
お休み期間なので毎日投稿ができーる(*´ω`*)
とはいえ、今日ぐらいからひっそりと仕事を始めねば。。。
軍人は現実主義者だ。
原理としては1の犠牲で100が助かるなら、その手段を厭うことなく実行する。言わなくても分かる。
(あえて傭兵と呼称するが)では傭兵はどうだろうか。
同様に現実主義者だ。元々軍人上がりが多いのに加え、軍人よりも対価に差し出す命の割合が多い。
更には、どれだけ殺した、どれだけ制圧したなどのノルマも発生する。
ゆえに余計に差し出す対価の割合が多くなる。
だが、良い点もある。
それは金だ。
軍人が稼ぐ年収を1か月で稼ぎ出せる。
ただ、その価値観は余程クレイジーでなければ受け入れられない。
現実主義者だが人一倍臆病でなければ、生き抜いていけない。
その自負があるにも関わらず、吹き飛ばされるのだから、この業界は世知辛い。
★ ★ ★
二日酔いの如く頭が痛む。いっそカチ割ってしまいたい。
どうしてこんなに痛いんだ。何してた。目を開くのも億劫だ。
俺は仕方なく現状を確認することにした。
なんで装甲車の中にいるんだっけ。というか整理整頓を信条としているのに車内のこの散らかりようはなんだ。
まずは身を起こす。
そうすると次第に思い出してきた。
戦場から音速でバックれようとしたら亜音速で無人偵察機にケツ掘られたんだ。
天国・・・ではないな。こんな物騒な天国はご免だ。
丈司 :アテンション!総員、報告!
二日酔いにも似た頭痛に自分の声が響く。
チームのメンバーが飛び起きる。
張 :張、問題ないネ。
:全身打撲で2週間ぐらい労災欲しいネ。
モーリス:俺も同じくでさ。
ジョン :以下同文。
コーディ:俺がケツ打たれた時ですら労災なんて・・・。
スコット:任務に支障なし。
張 :スコットの声、1か月ぶりぐらいネ。
狙撃手、遠距離火力支援担当のスコット。こいつは物静かで仏像のようにその存在感が薄い。
そして極端に無口。いわゆるいぶし銀の職人肌のような節がある。
全員の無事が一旦は確認できた。
しかし、逃げている途中に吹き飛ばされたんだ。このまま無事というわけにはいかないだろう。
ハマーH1Aを改造し、防弾ガラスの外側にシャッターを取り付けしている。
丈司 :コーディ、火力支援準備。Goサインで即銃座。
コーディ:了解。
敵に囲まれていることを想定し、飛び出して銃撃できる体勢を整えながら俺はそっとシャッターを開けた。
全員が固唾をのんでいる。
見渡す限りのグリーン。俺はそっとシャッターを閉じた。
脳が見た光景拒絶している。
中東からアマゾンまで吹き飛ばされた?
よく火星まで吹き飛ぶという比喩表現を使うが、リアルな路線だとアマゾンなのか?
ジョン :ボス。普通に運転席から丸見えですが
:密林の中としか思えないです。
丈司 :ですよねー。シャッター開けた意味ですね。
:というか俺の頭がおかしくなったのかと。
今、自分たちがどこにいるのか。まずは探る必要がある。
車両は森の広場のような場所にあり、ひとまずはそのままで問題ないだろう。
丈司 :総員、これから探索を行う。
:張以外はバディを組み、
:装備点検後、12時、4時、8時の方向に散会。
:戦闘は厳にせよ。
:俺は機材確認をする。
全員 :了解。
全員が装備の点検後、矢のように飛び出していった。
俺は衛星電話やGPS、諸々の機材の点検を実施していく。
こういう場合、まず確保すべきは電源だ。
電動でソーラーパネルを屋根に展開し、大型のリチウムイオンバッテリーに電気を貯めておく。
この業界は備えがあるほど生存率が高まるため、このような装備は常に整備点検が肝要だと思っている。
そしてGPSを起動し、俺は氷付いた。
機材はActive、しかし探知不能。誤作動の可能性は限りなく低い。
この機材は軍用と同じ通信帯を利用しているため、まず測れないはずがない。
それこそ衛星31個を誤差数㎝で測れる代物だ。
にもかかわらず、探知不能。誤作動の確率は俺の頭がイカより低い。
丈司 :おいおいマジかよ・・・
:この機材にいくら掛かったか・・・
思わず愚痴も出る。
ということは直で電信をしている機材以外は使えないということか。
この状況で衛星電話が使えないとかシャレにならない。
通信機器のチェックを終え、弾薬、ガソリンなどの物資を確認を終えた頃、張が戻り、その他のバディも戻った。
俺は急遽車内で緊急会議を行った。
丈司 :俺からはバッドニュースだらけだ。
:誰か良いニュースは?
張 :12時方向側に行ったヨ。
:食料に関しては問題ないネ。
:ウサギみたいなのを今血抜きしてるヨ。
丈司 :流石だな。
:でもウサギみたいって?
張 :ウサギじゃないネ
:でもきっと美味しいヨ。
思わず頭を抱えてしまった。
なんで東洋人はこうも前向きなのか。
中華系は取り合えず火を通せばオッケーみたいな感覚だし、俺の母国日本もフグを食べたり魚を生で食べたりと中々ファンキーな文化を持っている。
ほら見ろ、コーディなんてドン引きしてしまっているじゃないか。
丈司 :そ、その他は?
張以外は全員首を振っている。
丈司 :じゃあバッドニュースのご開帳だな。
:まず、なぜか衛星通信ができない。
:だから直で電信する機材しか使えない。
:次にガソリンも予備が200リットルしかない。
:だから車では500㎞の移動が精一杯だ。
:4tはある車体を手押しとか吐き気がする。
:俺からは以上だ。
モーリス:モーリス、ジョン組から報告。
:8時方向を探索した結果、
:周りの群生は見たことがない。
:衛星が使えない事と併せて考えると、
:地球じゃない可能性も視野に入れる必要がある。
丈司 :うわー。モーリスくぅん。
:薄々俺も思ったけど、やっぱり?
:最新鋭の機材が衛星通信できなくなるとか
:それ以外無いもんなぁ・・・。
張 :ウサギモドキもみたことないネ。
モーリス:その通りだ。ジョージ。
丈司 :ジョン、その他何かある?
ジョン :恐らく鉱物の体系も我々は知らない。
丈司 :弾薬の補給できないじゃん!
:もう聞くのが怖い。
:コーディは?
コーディ:コーディ、スコット組からの報告。
:4時方向を探索。もはやSFの世界だね。
:周囲に危険な生物は無し。
:でも同じく群生が違い、紫色の沼も見た。
:沼から先はまた生態系が違うみたい。
:荒地が広がっているようでした。
丈司 :完全異世界疑惑だな。
:紫色の沼って・・・。
:周辺ですぐさま危険はないことが確認できた。
:とりあえず制空権は取れてそうだ。
:ドローンで偵察する。
:その間、各員装備の精査と飯の準備。
全員 :了解。
各員がすぐさま武器、弾薬の確認を始めるため、外に出て行った。
俺は電動でアンテナを張り、ドローンを飛ばした。
結果、西北西50㎞の方角に石で囲まれた街を発見。
門のようなものもあり、レトロな槍のようなものを持った兵士4人、城門の上にはレトロなボーガンを抱えた兵士4名の計8名で門を守っている
住民を見る限り、コスプレしているようにしか見えない。
中世ヨーロッパ風か?
もしこれが偽装なら見事に俺はハマってるね。
ミサイルや地雷で吹き飛んだ奴らは、主の元ではなく、こちらにやってきてるのか?
おかしくなりそうだ。
しかし俺は否定する。もし吹き飛んだ奴らがこちらに飛ばされているなら、こんな文化水準はあり得ない。
こうやって可能性は潰していく必要がある。
違っていて欲しい異世界説はどんどん現実味を帯びていく。
ドローンの限界航続距離に近いためオートパイロットで一旦帰投させる。
ドローンに帰投命令を出す頃には食欲をそそる脂の香りがしてきていた。
きっと張だろう。歓声も聞こえてきてた。
丈司 :のんきな連中だ。
彼らの無邪気さに自然と笑みがこぼれる。
これは役割分担だ。俺が考え指示し、彼らは得意分野で貢献する。
こうやって5年間、お互いに信頼を積み上げてきたんだ。
ここがどこであろうときっと切り抜けられる。いや切り抜けて見せる。
それが彼らの信頼に応えてきた俺の矜持だからだ。
そんなわけでまだ導入部分から抜け出せずにいます。
次話では遂に街に突入ですかね。。。多分。
もしよろしければ、コメントなど頂けると今後の励みと改善へと繋げることができるため、お時間の許す限りご協力いただければと存じます。