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7話 様々な攻防

 



「フラン、なんだか言葉選びが…」



 おかしいと言う前にフランシスカの頬に涙が伝う。



「え?フラン?何故泣いているの?」

「私よりも、クリステル様の方が良いのですか?」

「いや、良いも何も、まだ友達にすらなってない…」

「でも、今、お誘いしてらっしゃいました」

「ええ、本日、お誘いしたわ」

「私も伺ってよろしいですか?」

「あ、ダメ!」

「……やはり…」



 フランシスカの瞳がギラリと光る。

 それどうやるの!?

 とにかくフランシスカを落ち着かせないとクリステルとおちおち話しも出来ない。



「フランシスカ、確かにすぐには貴女に話せないわ。でもちゃんと理由があるのですわ」

「理由?」

「ええ!私の持っている情報と、クリステル様の持っている情報が違えば、貴女に話しても混乱させるだけで意味が無い事になりますし、私の一生を賭けた計画も練り直しになってしまいますもの。そんなあやふやな物に大事なフランシスカを道連れにできないでしょう?お友達辞められたら困りますもの」

「どうしても最初からはダメですの?」

「内緒話しに混ぜてほしいな。僕の天使」



 ふわりとジェシカは抱きしめられて耳元で囁かれる。



「お、お兄様!?」



 振り返ると同時に抱き上げられる。

 この兄は細くどう見ても王子さま体型にも関わらず、ジェシカをいつも軽々と持ち上げるて腕に抱く。

 文字通り、よくお父さんが幼稚園児、またはそれ以下くらいのお子様を腕の上に座らせている図を思い出して欲しい。

 あんな感じで抱くのだ。

 たった3つ歳が上なだけなのに。



「下ろしてください!」

「今日の会談に僕を混ぜてくれたら」



 にっこりと天使の笑顔で笑う。

 この顔は兄の断らせない為の常套手段。

 騙されてはいけない。



「お兄様は絶対ダメですわ」

「ではノイエットなら?」

「それも不可」



 お兄様との攻防戦はいつもなら折れてあげるけれど今回ばかりはダメだ。

 なんせセルエルは攻略対象。

 確かセルエルの従兄弟で幼馴染兼従者になるはずのノイエットもそうなはず…全部クリアしてない事が悔やまれる。

 だからこそのクリステルとの話し合い。



「とにかく、フランには情報が整理できたら話しますが、お兄様とノイエット様はダメです。乙女の秘密です。そして、いい加減下ろしてください」

「良いって言わなきゃ下さない」

「ノイエット様…」



 困って、セルエルと対でいる男の子、ノイエット・ブラウンを見る。

 彼は伯爵家の次男。

 セルエルとは従兄弟の関係だ。

 彼の母君と養母様、つまりセルエルの母君は姉妹だった。

 養母様の産後の肥立ちはあまり良くなくセルエルはノイエットと一緒に育った乳兄弟でもあるので、むしろ双子の如く対でいる。

 ジェシカの事に関しては、セルエルのストッパー役である。

 銀に近いアッシュグレーの髪に切れ長のアイスブルーの瞳。

 笑うと糸目になる。

 確か…攻略対象…だったはず。

 セルエルほど印象的ではない為、忘れている。

 今はとっても優しく厳しく、セルエルに関してはとても頼りになるお兄様だ。



「セルエル、女の子は秘密を持つものだよ?それを暴くのは紳士的じゃないと思わないかい?」



 トンとセルエルの肩にノイエットは手を置くともう片方の手をジェシカに差し出す。



「それに、ジェシカ嬢はもう小さなお嬢様ではなく、小さなレディなんだよ?さあ、下ろして差し上げないと」



 その言葉にジェシカはノイエットの手を取る。

 ノイエットはもう片方も差し出すのでその手もジェシカは取る。

 その様子に柳眉を潜めつつセルエルはそっとジェシカを降ろした。



「ありがとうございます。ノイエット様」

「どういたしまして」



 ノイエットがふんわり微笑んだ。

 やっぱり目が無くなる。

 優しげな顔にセルエルの影に隠れているものの、令嬢方の人気は実は高い。



「さあ皆様、そろそろ行かないと午後の授業遅刻しますよ?」

「そういえば、ノイエット様達は何故ここに?」

「魔術の授業ですよ」

「ああ、なるほど。では御機嫌よう」



 ノイエットに向かって挨拶をする。

 セルエルには怒っている事を見せないといけない。

 何故かここ最近のセルエルはジェシカにベタ甘で、構い過ぎなのだ。

 セルエルを無視してクリステルとフランシスカを誘導して、教室に向かう。

 フランシスカはチラリとセルエルを見た後、その背に続くと口を開いた。



「ジェシー、私は情報を整理したら秘密を教えてくださるのよね?」


「ええ、隠さなくてはいけないことは話しませんが、基本的にはお伝えしますわ。もちろん『私の事は』ですけど」



 言外にクリステルの事はクリステルに任せると匂わす。



「ならば今日は我慢いたしますわ」



 フランシスカはもう一度セルエルを見た後、いつもの優しい笑みを浮かべた。

 隣でクリステルは「ひっ!」と何故か怯えているが何が怖いのだろうか?



「さぁ、遅れないように急いで戻りましょう」



 ジェシカ達は足を早めた。



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