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3話 ジェシカは見覚えのある顔を見つけた!〜フランシスの初めての嫉妬〜

 


 自分がゲームの悪役令嬢『ジェシカ』と自覚してから改めて学園で周りの人間を見渡す。

 いくつかのグループはあれど、だいたいにおいて親の位順に纏まっているらしい。

 さて、ジェシカは今のところ侯爵伯爵グループに一応いるらしい。

 子爵令嬢である幼友達のフランシスカもジェシカ附帯として同じグループにいた。

 でも今はまた幼友達である。

 ならばゲームと同じ要素ではない事を揃えていけばバッドエンドから回避されるかもしれない。

 さて、できるだけ詳しくイラストなどゲームの内容を思い出してみる。



「ジェシカ様、今日は難しいお顔をよくされていますわねぇ。どうかなさいましたか?」



 柳眉を潜めて少し憂いのある顔でフランシスカ・ダーエ子爵令嬢が首を傾げる。

 白い肌にアッシュグリーンの髪、瞳は髪と同じアッシュグリーンだ。

 どちらかというとジェシカよりは地味…ではあるが堅実な美人だ。

 この令嬢は幼友達でそれはそれはおっとりした性格で我の強いジェシカに暫くの間は怯まずにいたらしい。

 ゲーム上、高等部に上がってからジェシカとは袂を分かってしまっていた。

 一人で苛立っていたジェシカのイラストがあった。

 多分傲慢で我儘なゲームの中のジェシカにフランシスカは見切りを付けたのだろう。

 そうならないようにしなくては。

 ジェシカは緩やかに首を横に振りニコリと微笑む。



「いえ、大丈夫ですわ。少し自分の在り方を考えてました」

「『自分の在り方』ですか?難しい事を考えてらっしゃるのねぇ。なんだかこのところジェシカ様はなんだか変わられました」

「え!ダメな方向に?」

「いえ、逆ですわ。前はもう少し、ご自身の事ばかり気にされてましたが、最近は皆様の調和を重んじられているような」

「そうね…確かにそうですわ。私、少し心を入れ替えましたの。だからねフラン、もし私がおかしな事をしていたら遠慮なく窘めてちょうだい。貴女くらいしか私に意見してくれる方はいないのですもの」

「……私で良ければ」



 少し考える素振りをしてからフランシスカはニコリと微笑んだ。

 これでもし何か私が仕出かしたとしても少しはストッパーが働く筈だ。

 ほんの少しだけ安心する。

 ホッとして視野が広がったから何となく見覚えのあるような顔がまた視界の隅に捉えた。

 何度となく目には止まるのだが、でも名前が思い出せない。

 フランシスカなら知っているかもしれない。

 がっつき過ぎないように気をつけながら出来るだけ何気なくフランシスカに問うた。



「ところでフラン、あそこにいるご令嬢はどなたでしたかしら?」

「え?どなたの事ですか?」

「ほらあの藍の髪の薄紅のお洋服を召された方」

「ああ、クリステル・ラザフォード様、ラザフォード子爵令嬢ですわ」

「そう…あら、授業が始まるわね。席につきましょう」



 授業を真面目に受けているフリをしながら考える。

 ゲームの中でクリステルという名前に心当たりは無い。

 ただし姿形はなんとなく覚えがある。

 もっとも知っているのは歳の頃17、8の姿だ。

 ジェシカの高飛車イラストの後ろに必ずいた娘だ。

 確か取り巻き1。

 そして何より怪しいのは絶対に目を合わせないようにかつ、ジェシカの視線の先にいるとわかった瞬間、何気なくその場から立ち去るのだ。

 これを怪しいと言わずしてなんと言おう。

 絶対尻尾を捕まえる!

 彼女は同じく転生者の可能性が高い。

 逃げている=バッドエンドを知っているのだろう。

 そしてジェシカと同じく、クリステル的バッドエンドを恐れている。

 ならば巻き込んだ方がジェシカのバッドエンド回避にも好都合だろう。

 何よりジェシカはそれほどこのゲームの内容を覚えていない。

 イラストコンプ未達成なのだ。

 自分の兄のセルエルは辛うじて落としていたので内容は知っているものの、この先せめて家族から嫌われるのは避けたい。

 それを考えるだけで心が縮み上がる。

 セルエル始め両親はそれほどまでに今はジェシカを愛してくれていた。

 そして何より前世の自分はセルエルに実はメロメロであった。

 容姿はもちろん、あの声!

 今のセルエルが成長したらあの声になるのだろうか?

 実際に罵倒されたら傷付き過ぎて死ねるかもしれない。

 ゲームと本人は違うにせよ、家族は大事!





 クリステル・ラザフォード

 藍の髪に黒い瞳、少しばかり上向いた鼻の上には薄くそばかすが点在する、愛嬌のある顔立ちだ。

 それが、ジェシカに見つめられている事と気付くと張り付けたような笑顔のまま、それまで話しをしていたグループから抜け出して教室から抜け出した。

 にゃろう。今、明らかに目が合ったのに逃げやがった。



「フラン、私ちょっと失礼しますわ」

「え、ジェシー、どこに?」



 いきなりのジェシカの行動に今が学園にいるにも関わらずフランシスカは幼い時の親密な呼び方になる。

 どんなに普段通りにと言っても畏まって学園では呼んでくれなかったのだ。

 それを聞いてほんの少しニンマリするが、顔を引き締めてクリステルを追う事にする。

 フランシスカとの友情の為にもバッドエンドは回避するしかない。



「ちょっと狩に!うまくいけばバッドエンド回避!」

「え?え?ジェシー?!待って…行っちゃった…」



 置いていかれてフランシスカはどうしようもない黒い感情が湧き上がっている事に気付く。

 ジェシカは今まで他人に興味を持った事は無い。

 その容姿からジェシカの兄のセルエル共々興味を持たれる事は多々合ってもだ。

 いつも無表情、良くて愛想笑いを浮かべてシレッと卒なく交わし仲良くする事は無かった。

 だから友達という友達はフランシスカだけ。

 最近では社交的なってきているようだが、友達作りというより情報収集の為に広く浅く他の娘達と付き合い始めてはいた。

 それを利用して浅ましくも必要以上にジェシカにコルダ家に近づこうとするものはスルリと今まで通り交わしていた。

 だけど…クリステルはジェシカ本人が自分から興味を持って追いかけた。

 嫌だ。嫌だ…嫌だ!

 ジェシカのジェシーが他の娘に興味を持つなんて。

 自分とて貴族だ。

 ダーエ家に害がある存在にジェシカがなったのであるならばすぐに袂を分かたなくてはならないが、今は家同士も順風満帆。

 ジェシカは数少ないほぼ唯一と言っていいほど仲の良い幼友達である。

 それなのに!

 フランシスカはそれがつまらぬ嫉妬だと自覚しながらジェシカを追いかけた。

 せめて自分も一緒にいなくては嫌だ。

 ジェシカは足が速い。

 頑張って追いつかなくては。



明日は更新出来ません。

ごめんなさい。

お読みくださっている方ありがとうございます。

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