27話
凄く久しぶりの投稿です
「……悪役令嬢とは、主人公のライバル的な立ち位置の女の子です」
「何故『悪役』と付くのです?」
「時として主人公に意地悪したり虐めたり、貶めたりするからです」
その言葉を聞いた瞬間フランシスカはジェシカに振り向いた。
反射的ににジェシカは叫んだ。
「してない!してない!誰も虐めてない!てか、まだ主人公に会ってない!し、誰も意地悪してない!」
「…本当ですの?」
フランシスカのこの迫力は一体どこから出ているのだろうか?
無意識に小刻みに震えながらジェシカは思う。
喋っていいと言われていない事を思い出して口に手を当てて涙目でコクコクと首を縦に振る。
むしろ今、ジェシカが虐められてる気分だった。
そんな事言ったらまた口の中にケーキを突っ込まれるのは目に見えてわかっているので貝になるしかない。
「まだ主人公には会ってませんよ。私も主人公ではありません」
「ではクリステル様は物語の中のどのキャラクターでしたの?」
「ジェシカの…ジェシカ様の取り巻きその1だと思われる方です。名前すら公式…設定には無いキャラクターです」
「ジェシカの取り巻き?」
「腰巾着と言ったら通じますか?ゲームの中は主だったキャラクター以外名前は付いてないのです。本の世界だと肉屋のオヤジとか花屋の娘…とかいった感じで、ジェシカ侯爵令嬢を持ち上げている令嬢その1です」
「…成る程、確かに物語の中は主要キャラクター以外名前は出てきませんわね。では主人公は誰ですの?」
「………あの…」
クリステルがほんの少したけ迷った顔をしてジェシカを見る。
ジェシカはコクコクと頷く。
ジェシカはフランシスカに全てを話すと決めたのだ。
今わかってる事全てを。
それが誰からの口であっても。
というより、先ほどの失態からしてクリステルに話して貰った方があらぬ誤解を生まない。
ジェシカは瞳で物を言う。
全て話してと。
それが通じたのかクリステルは溜息を吐くと口を開いた。
「どこの誰だか思い出せません。わかっているのは市井の生まれの男爵令嬢という事。彼女は高等部3年に転入してきます。そして1年の間に恋愛を楽しみ恋人をゲットしてデビュタントデビューをするのです」
「市井生まれの男爵令嬢…」
「この世界に現実に存在するのかわかりません。彼女の攻略対象つまりお話しの中の恋愛対象は覚えている限りでは8名」
「8名も…」
「……ゲームですので。周回ループ…つまり一つのお話しを終わらせて、次のお話しを順次クリア…攻略していきます。8つのお話しをハッピーエンドで迎える…読み終えると隠しキャラ…キャラはキャラクター、登場人物の事ですね、を読む事ができます。彼等は2名です」
「ということは全部で恋愛対象は10名」
「はい、後はジェシカ…様との友情エンドと主人公的バッドエンド…つまり嫌な終わり方が、誰とも恋愛がうまくいかずに、一人寂しく領地に戻る。『都会は厳しかった』と言って」
「なんだか妙に実感籠っている気が……」
その言葉に僅かばかり動揺してフランシスカを見て話していたクリステルはそっと視線を外した。
フランシスカはその手を握り微笑む。
「田舎に引っ込ませませんからね」
「……何を」
「ダメだからね!領地ついてくからね!」
フランシスカの言葉にクリステルは誤魔化しを入れようとしたのに気づいたジェシカは慌てて叫ぶ。
絶対させない!
修道院送り回避!断固回避!
それもそうだけれどせっかく友達になれた…まだ友達思って貰えてなくてもジェシカにとって友達になりたい人に巡り会えたのだ。
諦めたくない。
貴族の世界は足の引っ張り合いだ。
情報戦だし、利害関係で基本動く。
友達だと思っても家の都合で平気で裏切られる。
フランシスカだってゲームの中では隣にいなかった。
もちろんそちらも手放すつもりは無いけれど、一人でも多く友達が欲しい。
身分や立場ではなく心からの友達が欲しい。




