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23話 顔と言葉のギャップは治りそうにもありません

1月まで忙しくてスローペースです。

 

 そんなクリステルを見てジェシカはフランシスカに目で合図すると彼女の耳に唇を寄せた。



「全部話すわ。そしてクリステル改造計画に協力して欲しいの」

「クリステル様の改造計画?無理強いじゃ…」

「違うと思う。クリステルは自分が可愛くないって思ってる。必要以上に自信ないみたいなの。可愛いんだからさ、ちゃんとね」

「……クリステル様が嫌がらなければ、ご協力致します」

「私の人生もかかってるから成功させる」






 妙に気合の入ったジェシカを品定めするようにフランシスカは見下ろす。

 ジェシカはそれに気付かなかった。

 フランシスカを無条件に信じているようだ。

 フランシスカとて貴族であるし、コルダ家と親しい間柄とはいえ、無条件に慕う事は無いのである。

 もちろん、ジェシカの事はクリステルに嫉妬するほど好きだし、隠し事をされていると思うと嫌味の一つも言いたくなる。

 が、ジェシカの妙な必死さはこれまでには無かった事である。

 クリステルの怯え方も尋常では無い気がするのだ。

 今も敵意を見せないただ優しく髪を編んでいるだけのノイエットを必要以上に怖がっている。

 一体何があるというのだろうか?

 二人に関わる事がフランシスカにも災いとして降りかかるならば距離を置かなければならなくなる。

 ジェシカは幼友達だ。

 少し前まで少々調子に乗っていていつ手を切ろうか考えていたのだが、このところの彼女はまだ浅慮な所もあるが、思慮深くなっているし、貴族なところは貴族らしく、ただ彼女がこれと決めた事はテコでも動かないジェシカらしさはそのままに短期間で一回り以上精神的に成長した。

 それと同時に妙にセルエルとノイエットから距離を取ろうとし始めている。

 もっともフランシスカと同じようにジェシカを見定めかけていたセルエルがやたらとジェシカラブに気持ち悪いくらいになってきているので全く意味は無かったが。



「これで如何かしら?」

「わっ!素敵!どうやったのか途中で分からなくなったけれど、フランシスカは器用ね!今度是非教えてください!」



 ジェシカは手鏡を合わせ鏡にして後頭部の髪型を確認する。

 その発想にフランシスカは驚く。

 貴族の女性は髪型や着替えなど基本的には侍女にやらせる。

 髪型などは全て侍女任せである。

 それなのにジェシカは自分でやると言う。ならばとフランシスカも習ったが運動の後など確かに便利だった。



「なるほど、そうすれば確かに後頭部が見えますわね」

「でしょ!本当はこう、三つに鏡がある鏡台が欲しいなぁと思うけど、難しそうだし、職人さん探すのはもう少し大きくなってからでいいかなって」

「なるほどそれならば手鏡はいらないと」

「そうそう、でも出回って無いなら特許取った方がお金になるかなぁとか。あ!これ内緒ね?」

「特許?え?はぁ、それもまた後でと言う事でしょうか?」

「うん。あ!きゃークリス素敵よ!ノイン素晴らしいわ。お兄様より上手なんじゃないかしら?」

「ジェシー、呼び方に注意なさいまし」

「そうね。ノイエット様素晴らしいですわ」



 興奮していたジェシカがその言葉にすぐさま優雅に微笑む。

 猫の被り方は天下一品である。

 もっとも最初から行わなければ意味は無い。

 貴族の世界では7歳になればいくら幼馴染でも他家の男性は様付けで呼び公的には親しくしてはならない。

 淑女たるもの男女7歳にして席を同じゅうせずなのだ。



「ノイエット様は殿方なのにどうしてそんなに上手に編めるのですか?髪が長いから?」

「くすっ。違いますよ。僕には姉がいますから、美容が大好きな姉は研究熱心で、髪の編み方は姉の髪を編む為に侍女に気に入った髪型は最初に僕が教わるのです」

「あら、まあ」

「僕の髪が長いのは姉の練習用です。本当は切りたいのですが、姉のデビュタントまではこのままの契約なのですよ。今回お役に立てたようで何よりです。編み方が知りたければまたお時間のある時にお教えいたしますよ」

「本当?嬉しいわ。是非教えて頂きたいわ」

「ええ、お呼びくださいジェシカ嬢。では僕はこれで失礼致します。女子会をお楽しみください」



 優雅に一礼してノイエットは部屋から出て行った。

 フランシスカは「コホン」と咳払いをして、残る二人の注目を集める。



「もう『女子会』を始めていいのかしら?」



 あざとく可愛らしく顎の下に手をやり小首を傾げてポーズを取るとジェシカを見つめてゆっくりと瞬く。

 ジェシカとクリステルは顔を見合わせて頷く。



「ええ、でもその前にお茶会の準備を」



 ジェシカがドアを開けてクリスタルのベルを鳴らすと直ぐに侍女達はやって来てお菓子にお茶を準備し、速やかに退出していく。

 予めジェシカが言い含めておいたのだろう。



「それでは第一回、フェアスワバッドエンド回避作戦会議を開きたいと思います!どんどんぱふぱふ」」

「どんどんぱふぱふ?」



 盛大に?を飛ばしてこういう時の通訳者のクリステルをフランシスカは見た。

 彼女は項垂れて溜息を吐いていた。

 顔が疲れ果てている。



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