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22話 身嗜みを整えましょう

 


「……ら、怖く……ね、って、聴いらっしゃいます?」

「え?」

「ほら、もう怖くありませんわ?ね、こちらにいらして?」

「は、はい」



 領地に帰る妄想をしてぼーとしていたらフランシスカに声をかけられていたらしい。

 優しい声音から鋭いものに変えるのはフランシスカの十八番らしい。

 某、ナ○○カか!とクリステルとジェシカは心の中で突っ込む。

 フランシスカの中でクリステルは小動物確定のようだ。

 彼女の差し出された手を取ってクリステルは大人しく付いていく。

 内心はやはりまだビクビクしている。

 前世でも今世でも殆ど喧嘩に携わった事は無いのだ。

 諌め方も分からなければどう回避すれば良いのかも分からない。

 側から見れば怯えているのが丸わかりな視線になっている自覚はあるもののどうしたら平然と出来るか分からない。

 分からない事だらけで申し訳なく思う。



「ごめんなさい。クリスに苦しい思いをさせるつもりは無かったの」

「すまなかった」

「セルエルを止めなくて申し訳ございませんでした」

「い、いえ、あの、大丈夫…」

「大丈夫じゃないですわ。御髪が乱れまくり、罰としてセルエル様はクリステルの、ノイエット様…ではなく、私がジェシカの髪を結う事」

「僕がジェシカの」

「セルエル様は反省なさってないようですわね」

「いや、そんな事は…さぁ、クリステル嬢、失礼した、こちらへ」



 フランシスカが再びこめかみに青筋を立てたのを見てセルエルはすぐさまクリステルに向き直る。



「セルエル、貴方ではクリステル嬢は怯えている。どうだろうか、僕では?」



 ノイエットがセルエルの前に一歩出ると、クリステルはホッとしたような顔になる。

 もちろんクリステルにはそんなつもりは無かったがジェシカラブ過ぎるセルエルより一歩引いた感じで、まだ穏やかな気がするノイエットの方がほんの少し気が楽なのだ。



「そ、そんなに怖かったのか…申し訳無い」

「ではノイエット様、綺麗にして差し上げて下さいませ。セルエル様、もうご用事は終わったのでしょう?いつまでいらっしゃるのですか?」

「そうよお兄様、今日は女子会なんだから」

「女子会?なんだそれは?」

「ばか…」



 クリステルはまた呟いて顔を覆った。

 ジェシカは結構うっかりさんだ。

 通用しにくい言葉のチョイス。

 今後が思いやられる。

 一応説明しないとセルエルは納得しなさそうだ。

 そう思って口を開いた途端、横槍が入った。



「女子会とは女性だけの会ですわ。セルエル様、参加されたいなら…おわかりになりますわよね?覚悟は出来てらっしゃいます?」



 フランシスカはにっこりと綺麗に笑って手をチョキにしてハサミの様に動かす。

 思わず前屈みになるセルエルだった。

 後ろでノイエットが口を歪めて密かに笑う。



「いや、その、そういう事であれば、僕達は遠慮しよう。ノイエット、クリステル嬢の髪を女子会仕様に美しくして差し上げてくれ。僕は怯えられてしまったからな」



 優雅に一礼してひらりとセルエルはジェシカの部屋を去った。



「やはり取りたくは無いようですわね。ノイエット様は如何です?」

「私も遠慮させて頂く。もとより僕は貴女方の邪魔をするつもりはありませんよ。さ、クリステル嬢、こちらへ」

「さ、ジェシー、こちらへ」



 ガチガチのクリステルとは逆にジェシカは楽しそうにフランシスカに身を任せていた。

 クリステルはノイエットの指先が髪に触れる度身体がビクリと逃げる。

 やりにくいだろうなぁと思うけれど、怖いものは怖い。

 前世も今世も幼馴染以外はここまで近くに男の子がいた事は殆ど無い。

 ましてやこんな美形…並んでいる姿の鏡は見たくなくて始終俯き加減になる。



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