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18話 少年セルエルの奇襲

評価にブックマークありがとうございます。

勢いで書いてるので破綻も多いめです。すみません。

 


 コンコンコンコン



「ジェシカ、おはよう。朝ごはんだよ」



 返事を待たずにドアが開いてセルエルが笑顔で飛び込んで来た。

 その後ろから朝も早いのに当然のようにノイエットが続く。

 自分のドレスに再度着替えるのを諦めたクリステルは髪を一つくくりしようとしていて目が点になる。



「お兄様!部屋の戸を開けるのは返事をしてからにしてください!今日はクリスもいるのですよ!」



 ジェシカが怒るも一向にセルエルは気にする様子も無くその腰を抱きエスコートする。



「さぁ、朝食だよ。大丈夫。ジェシカのお友達にはノインを連れてきた」

「お手をどうぞ。クリステル嬢。ノイエット・ブラウンです」

「ご、ご丁寧にどうも。あの、く、クリステル・ラザフォードにございます」



 ノイエットの手を取らずにクリステルは深々と頭を下げる。

 いや、それ、日本人だから。

 と心の中で突っ込みつつ、ジェシカはセルエルから逃れてクリステルのところに行こうともがく。



「あの、クリステル嬢?如何されました?」



 ノイエットが手を差し出したまま戸惑った様に声をクリステルにかける。

 クリステルはまだ深々と頭を下げたままだった。

 ジェシカはそれを見てセルエルの手を振り切った。



「ノインに何かされた?大丈夫?!」

「……ジェシカ嬢、僕は見ての通りエスコートするために手を差し出しただけなのですが。セルエルじゃないんですから必要以上に見知らぬ女性に触りませんよ?」

「ノイン!それではまるで僕が誰彼構わず女性に触れている様ではないか!僕が触りたいのはジェシカだけだ」



 きっぱり言い切ったセルエルをジト目でジェシカは見る。

 妙齢の女性になっているならともかく、今は凸凹などまるでない7歳の子ども体型なのだ。

 ロリコンか?



「お兄様…それも変態ですから。ちょっと黙っててください」

「クリステル嬢?大丈夫ですか?可愛らしいお顔が見えなくなったまま結構経ちますが、頭に血が上りませんか?」

「だ、大丈夫です…」



 そっとクリステルが頭をあげる。

 ノイエットは柔らかな笑みを浮かべる。



「さぁ、手をどうぞ。朝食に参りましょう」

「は、い」


 生まれて此の方まだエスコートなどされたことは無い。

 今度の家のマナーの時間で勉強する事になっていた。

 どうすればいいのか?!

 ギギギと軋みそうに身体を強張らせたままクリステルは機械的に身体を動かしてノイエットの手に手を乗せようと--



「行きましょう!クリス」



 パッとクリステルの差し出したその手を掴むとジェシカは駆け出した。



「うわっぉ!?…て早い…早いからぁぁぁ」



 クリステルの令嬢らしからぬ叫び声が木霊し、残されたのは手を差し出したままのノイエットとジェシカに近付こうと一歩踏み出したセルエル。



「お手をどうぞセルエル嬢」



 にっこりとノイエットが微笑む。

 ヒックと頬を痙攣らせセルエルがその手とノイエットを交互に見る。

 そしてガシッとその手を上から掴む。

 ニヤリとしてやったりとノイエットを見る。



「では行くぞ」



 ノイエットはにこやかな外面の笑みを貼り付けたまま令嬢には決してかけぬ声で下から逆にガシッと掴む。

 そのまま腰を引き寄せ親密な令嬢に触れるように密着する。

 今のセルエルよりはノイエットの方がガタイがガッシリしている。

 握力も強い。

 将来は知らないが、この義妹にかける並々ならぬ情熱を注ぐ馬鹿(セルエル)を抑えられるように心も身体も鍛えねばならない。

 これは義妹馬鹿ではあるがノイエット自身が決めた主人だ。

 聞く耳を捨てた高慢な使えぬ馬鹿にならぬ限りは見限らないと一応決めている。

 多分、間違いなく面倒くさい主人になるのが確定している。主に義妹について。

 その義妹のジェシカもこのところ我儘はなりを潜め、聡明さが垣間見えるようになってきた。

 だからこそこの馬鹿(セルエル)はジェシカを構う。

 構い倒して自分で身動き取れなくしている。

 ノイエットとて、最近のジェシカは嫌いでは無い。

 気持ちはわからなくもないがあれはやり過ぎだ。

 ジェシカもジェシカで令嬢なのに行動力がありすぎる。

 先程のクリステル嬢は気の毒だがジェシカに気に入られた以上、いらぬ苦労を背負うだろう。

 どうにも今の彼女は身分などどうでも良いと捉えているようだから。

 お互い友人には苦労しそうだなと心の中で労う。



「おい、そろそろ離せ」

「嫌だね」

「まさか…」



 このままで食堂へ行くつもりか?と顔を痙攣らせればノイエットは満面の笑みで笑う。

 勿論そのつもりだ。

 人を朝早くから呼び出しておいて挙句、エスコート相手を掻っ攫われたのだ。

 面倒だと思ってはいたものの些か面白いものを見たから、この程度の鬱憤ばらしで勘弁してやろうと、ガシッとセルエルの腰に回していた手で身体のホールドを強化する。



「参りましょう。セルエル嬢」

「離せ!離せってば」



 まだ力では敵わない。この先も敵うかわからない。

 幼馴染兼従者のノイエットは貼り付けた笑顔と手の力は緩まない。

 そのままセルエルは食堂までエスコートされた。








 連れてこられたセルエルを見てクリステルが鼻血を噴きそうだったのは言うまでも無い。

 美少年と美少年の絡み合い。

 ピッタリとラブラブカップルの様に必要以上にくっついている。

 いや、これは単にノイエットの嫌がらせだろう。

 二人の顔が雄弁に物語る。

 それでも現実は妄想よりも美しかった。紙とペンを寄越せと危うく叫びそうになった。

 自重という言葉で自分を戒める。

 とりあえず、網膜に焼き付けて、家に帰ったら即スケッチだ。



「え?リアル美少年BL?」



 目の前の美少女から不穏な言葉が聞こえた気がするが…気のせいと思う事にした。

 この程度の…あれがBLなら、こっちはGLだと言われても反論出来なくなる。

 未だ繋がれたままの自分達の手にそっと嘆息した。



ノイエットの逆襲。

そういえばノイエットの容姿についてあんまり触れてはいなかった気がする。

とりあえず笑うと糸目になるイケメン確定でお願いします。

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