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12話 作戦会議!ゲームのセルエル編2

 


 学園祭の後、二人はしばらく街や学院でデートを重ねて、いよいよクライマックス間近のエピソード。



 セルエルが正式にお付き合いをする為に男爵令嬢を親に合わせるのに自宅に呼ぶ。

 その席の前にセルエルが席を外した隙にジェシカ登場。彼女は意図的に外されていたが押しかけた。「貴女が何故ここにいるのよ!お兄様に色目使って取り入ってコルダ家を乗取るつもりね恥を知りなさい!」と男爵令嬢にお茶をぶっかける。

 驚いて「あの…その…」程度しか言えない男爵令嬢。

 セルエルが戻り、惨状にブチギレられて「お前など侯爵令嬢の、いや、コルダ家の風上にもおけん!」と逆に花瓶の水をジェシカに掛ける。

「お兄様!お兄様の為を思って!その娘は我が家を乗っ取るつもりなんですわ!」「煩い!出て行け!いや、我々が出て行く」

 男爵令嬢の手を引いて退場。

 男爵令嬢を湯浴みをさせているうちに素晴らしいドレスを購入して男爵令嬢を驚かせる。

 そして卒業のデビュタントをエスコートさせて欲しいと告げる。

 勿論、嬉しいと即答で返事する男爵令嬢。




「台詞がくっさくて甘いんだよね」



 とりあえず、この目の前のジェシカ嬢はセルエルの台詞が甘く臭いのが何を置いても気になるらしい。

 それとも今が兄だから気になるのか?

 そろそろ一回くらい同意しておこうとクリステルは口を開く。



「甘いのは甘いねぇ…で、デビュタント前のイベントで修道院送りだっけ」





 そう、デビュタントの数日前、男爵令嬢のエスコート相手がセルエルと知りゲームの中のジェシカは即時家にとって返す。

 その日セルエルが令嬢を招いているのを知っていたのだ。

 客間で一人でいる男爵令嬢を見つけ出し詰め寄る。

 そこで颯爽とセルエルが登場しジェシカを詰る。



「お前はまだそのような恥ずべき事をしているのか?彼女は私の恋人だ。お前がとやかく口に出して良い相手では無い」

「お兄様!お兄様は騙されているのです!」

「兄だと?お前はもう妹では無い」

「お兄様はお兄様です!」

「先程正式に手続きが済んだ。お前は侯爵令嬢では無い。コルダ家の人間でも無い。7歳の誕生日に既に伝えた通り資格をを剥奪した」

「え…」

「なんだ?やはり覚えてないのか?お前は養女だ。父とお前の本当の両親が親友だっただけで引き取られたのだ。養女としての資格は品行方正、コルダ家に相応しい人間である事。お前にその資格は無い」

「そんな…お父様に…」

「お前に家族が呼ばれるのも穢らわしい。もちろん父も母も了承済だ。お前の行動は淑女でも何でもない。没落した生家の人間そのものだ」

「え…」

「いくらお前でも聞いた事あるだろう?ゼッター一族の事を」

「そんな…」

 ゼッター伯爵家一族は人身売買、騙仕打ち、賄賂、ありとあらゆる悪事をしたと言われている。

 発覚した後は一族取り潰し、その殆どが死刑になったという。

「お前の父親はその中で唯一まともだったらしいがな。だからお前は養女となった。だが、お前の性根はわからぬ。あの一族の血だからな。だから初等部入学の歳の誕生日に全て伝え、高等部卒業まで猶予とした。もっとも最初の査定はその前の観劇だったがな。我儘に我儘を重ねて父のコネクションを使えと散々喚き倒した。叶えて貰うのが当たり前を叶わなければどうなるか見られていたのも気付かず、その後も繰り返したな。浅はかな女だ。なんだその顔?すっかり忘れていたようだから親切に教えてやったのだ」


 フンと鼻で笑うセルエル。

 その瞳は冷たい。


「そんな…」

「安心しろ住むところは用意されているぞ?優しい俺の恋人が慈悲をと父に訴えてくれたからな」

「残念だな、ジェシカ。お前は奴の心を引き継がなかった。あいつの忘れ形見だからと目を掛けて、手を掛けたのにな。最後の情けだ。明日からの住まいはお前のお友達とゲオルグ島の修道院だ」

 ジェシカが唖然としているうちに養父のコルダ侯爵がいつの間にか佇んでいた。

「お父様!お願いです!ご慈悲を!」

「慈悲は与えたと言ったはずだ。連れて行け」

 ジェシカは泣き叫ぶが衛兵により引っ立てられて修道院へ。

 男爵令嬢は無事デビュタントをセルエルにエスコートされて晴れて婚約。

 甘い台詞のプロポーズエンディングだ。





「一番のジェシカ達悪役トリオの極悪非道エンディングだよね」

「悪人一族の末裔…」

「でもジェシカの裏設定はルートで少し変わるんだよね」

「本当!?」



 ジェシカはガタリと椅子の音を立てて思わず立ち上がった。

 クリステルはその勢いに呑まれる。



「う、うん。アレクセイルートだと単なる伯爵令嬢。没落してたし、養女も解かれて追い出されたけど、王太子命令でだから」

「お兄様の反応は?」



 心配そうな顔でジェシカは問う。

 眉間に皺寄せ、手を頬に当てて、若干青ざめている。

 今の兄妹関係は割と良いのだろうとクリステルは予想する。



「ラストは特に無し。アレクセイルートだとその前にセルエルから王太子婚約者を下りた方がいいと諭されるけどね。意地なのかなんなのかジェシカ嬢エスカレートしてくし」

「じゃあ、お兄様ルートが1番惨め決定ね?ただ、私はゲーム設定の養女と知っているしフラグは1本目は辛うじて無意識だけど折った。もうすぐ誕生日だしそろそろ覚悟しなきゃ」

「誰が本当の親なのか、どの家だったのか説明あった時に確認必須ね」

「うん頑張る。あと確認出来そうな事は?」

「うーん…とりあえず査定期間が決まっているなら…決まってても言わなさそうだけど。一先ずフラグ折ったから今のジェシカ様は認められている。私達はこの先も品行方正を目指すし、少なくとも私はターゲットに極力近寄るつもりはないです。ジェシカ様も、もうこの先の展開がセルエルルートは男爵令嬢次第で変わるね」

「クリス、私は貴女を手放さないわよ」



 キランとジェシカの瞳が光る。

 その視線の先からクリステルは視線を逸らす。



「……次誰にします?」



 視線を合わせないままクリステルは問う。



「クリス、逃がさないからね!」



 ワザワザ立ち上がってキュッと手を握って視線を強引に合わせる。

 逸らすと追う。

 妙な攻防戦が続く。

 その間ずっとジェシカはうふふと笑い続ける。



「……負けました…でも巻き添えはごめんです」

「それは当然じゃない。回避しても回避しても逃げ切れなかったら自分だけで行くわ。クリスもフランも絶対巻き添えにしない!」



 フンっと鼻息鳴らしガッツポーズ!

 あのスチルのジェシカじゃないよな…

 これ新ジェシカだわ…と口を開けば乾いた笑いしか出なさそうなので曖昧な笑いを辛うじて浮かべて、いつのまにか愛称を呼ばれている事態を突っ込む。



「ところでいつのまに『クリス』になったのですか?」

「え?ダメだった?この国の名前って結構長いからさ。日本人の時も結構、愛称で呼んでたんだけど、嫌だった?」

「いや、いいです」



 再びクリステルは視線を外す。



「え、でもなんか嫌そう…あれ?照れてる?」



 嫌そうに視線を逸らしたと思ったクリステルの頬は少しだけだが朱に染まっているのだ。

 指摘するとクリステルの頬は益々紅くなる。



「……いいから先を進めましょう。次は誰ですか?」

「えっと、やっぱアレクセイ?回避したいのは修道院送りが1番だし!」



 クリステルの様子は気になるものの、これ以上突っ込むと本格的に拗ねてしまいそうな予感がするのでジェシカは一先ず諦めて次の設定に移る事にした。




セルエルのゲームストーリィは終了です

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