1話 まさかの生まれ変わりですか!?
18/11/3設定付け足しと矛盾解消の為改稿とタイトル補充。
「あら?…ってこれ『ジェシカ・コルダ』じゃないの?!」
侍女がやるのを断り自分で髪を結う為に鏡に映った姿を見てジェシカは悲鳴に近い声を上げた。
「ジェシカどうした!?」
使用人と共に兄のセルエルがノックも無しに部屋に入ってくる。
「なんでも無いですわ!乙女の部屋に勝手に入らないで下さいまし!」
入ってきた使用人ごとグイグイ背中を押して兄を追い出す。
令嬢らしからぬと叱られる事だが、勢いに呑まれてかセルエルはそのまま出て行った。
普段なら行儀が悪いとすぐにお小言が飛ぶのに。
「す、すまん。しかし、ジェシカ大丈夫か?怪我とか誰か見知らぬものがいるとかじゃ無いだろうな?」
「大丈夫ですわ。髪を直していて失敗しただけです!自分でやりたいの!ちゃんと直しましたら、部屋から出ますのでもう少しお待ちになって」
「そ、そうか。では何かあったら呼べよ。皆行くぞ」
ドアの向こうからセルエルや使用人達の気配が消えると、ジェシカは「ほぅ」と溜息を吐く。
どうやら本当に心配してくれているらしい。
確かに今までのジェシカではありえないくらいの取り乱し方ではあった。
再び鏡に姿を映して頭を抱える。
「このタイミングで思い出すなんて…小説じゃあるまいし…なんて事なの…え?私バッドエンド?」
現在のジェシカ・コルダである私は前世は日本人で、25で独身のまま交通事故で死んでいる。
日本人の時の名前はぼんやりしか覚えてないのでまぁいい。それなりに愛着はあったので少し寂しい気もするが、そこは考えない。
恋人はいたはず…それなりに謳歌していた人生だった。
それよりもだ。
この鏡に映る顔は前世で楽しんでいた乙女ゲーム『フェアリー・スワン』の悪役令嬢の『ジェシカ・コルダ』だった。
改めてマジマジと鏡を見てみる。
ミルク色のキメの整った肌、天使の輪の輝く緩くウェーブの入った金髪、瞳はアイスブルー、薔薇色の頬、通った鼻筋、ふっくらしたツヤツヤ輝く紅色の唇。
記憶にあるイラストよりも幾分幼いが間違いない。
ジェシカのバッドエンドは修道院送り。
しかも侯爵籍を外されてだ。
兄は『セルエル・コルダ』コルダ公爵家の長男であり家督を継ぐ予定のイケメンだ。
そして、主人公である男爵令嬢の攻略対象だ。
男爵令嬢に対して優しく、紳士的で、時には悪戯を仕掛けて揶揄う。
そしてなんといってもそのボイスは甘いテノールで独特の甘い言葉を囁かれるとそれだけで身体にジーンと甘い痺れが走る。
暇つぶしにそれほど嵌らないと思っていた乙女ゲームをセルエルルートだけ3回も繰り返させるほど嵌った。
声優さんの他のボイスドラマやゲームを買ったけれど、セルエルほどほぅと聞き惚れない。
好みの外見のイラスト相乗効果でゲームと無縁のリア友には中々言えない前世の趣味だった。
そう言えば同類を求めてたどり着いたネットでセルエル萌えの方と喋ってお勧めの薄い本もいくつか聞いて買ったまま積んであったのを思い出す。
読んでおけばよかった。というか、あの本とかゲームって…誰が片付け…よし!考えるの止めよう。
それどころじゃないのを思い出す。
続いて今までのジェシカとしての人生を思い出してみる。
多少我儘ではあったが馬鹿ではない。
ゲームの世界のスワン学園には入ったばかり、学校の成績もマナーも上の上。
上から数えた方が早いくらいだ。
意地悪もしていなければライバル争いも今のところ無い。
そろそろこの国の王子である『アレク』に出会って一目惚れする頃か?
もう出会って纏わり付いて手遅れか?
今のジェシカの記憶の中に子どもの顔は少ない。
アレクの肌の色の子どもの記憶は無い。
いや、うん、まだ挽回が効きそうだ。
「よし!まだなんとかなる!バッドエンド回避!品性正しく、人生楽しく。やればできる!」
美しい頬を両手でピシャリと叩いて気合を入れる。
たとえこれから会う王子に万が一惚れたとしても品性正しく。
見込みなければ諦めるべし!
確かジェシカは養子。
極悪な一族の血を引き継いでいる養子。
セルエルルートでセルエル様が言ってた!
もう査定は始まっているはず。
良い子は無理だけど人として最低限の事は出来るはず。
大事な事がもう一つ。名前が思い出せない男爵令嬢には近寄らない。
いくつかの今思いつく回避策を素早く決めて誓う。
「バッドエンド回避!」
フン!とジェシカは令嬢らしからぬガッツポーズを決める。
のんびり書いてみる予定。
矛盾が少し解消してるといいけど…