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英雄になれると思いましたか?  作者: 蔵餅
前日譚 「夢落ちなんかじゃ終われない・・・」
9/68

八話 善意と悪意

※'16 12/13 言い回しなど変更しました

 決して冷蔵庫は大きいものではなかった

 それでも足に思いっきり倒れてきたせいか、ばきっという嫌な音がした

 足には力が入らず、痛みがじんじんと伝わってくる

 撥ねられた時とはまた違った痛みだ

 その痛みを我慢して、俺は玄関へ向かった

 そうやって這いずり回っていると、

{智里さんは置いて行っちゃっていいのか?}

 そんな悪魔のささやきと呼ぶべき声が、俺の頭の中に響いた

 そうだ、姉のことをすっかり忘れていた

 痛む体に鞭をうち、力を振り絞って自室のある2階を目指した

 1段、また1段と腕の力だけで階段を上っていく

 足には全く力が入らない

 もし無事だったとしても、もう歩くことはできないだろう

 そう思っているうち、だんだんと目がかすんできた

 視界がだんだんと歪み、腕に力が入らなくなる

 途端に浮遊感と強い痛みを感じた

 目をゆっくりと開けると、廊下が見えた

 たぶん階段から転げ落ちたのだろう

{ああ、これはもうだめだなぁ}

 そんな声が聞こえた気がした

<スキル 『過去移動さかのぼり』を使用します。魂の移動を開始・・・成功しました。続いて記憶の移植・・・成功しました>

 姉ちゃん、ごめん

 助けられなくて

 そんな苦しみとともに、俺の意識は消えていった





 目が覚めた

 まったく・・・目覚めは最悪だ

 とにかく隣で寝ている姉を・・・

 そうやってシーツをどかしてみると、昨日いたはずの姉はいなかった

 どこにいったのだろうか

 そんなことを考えながら下へ降りてみると、姉が居間で仕事をしていた

 姉は大学に通いながら、家庭教師のバイトをしている

 今はパソコンでプリントでも作っているんだろうか?

 とりあえず、一声かけた

「おはよ」

「あれ、おはよ~。今日ははやいね、起きるの」

 姉は疲れた顔をしながら笑った

 ああ、そうか

 昨日より早く起きたから姉がいなかったのか

「あ、ご飯作ってないんだ~。ちょっと待っててね」

「あ~いいって。忙しそうだし俺が作るよ」

「本当!ありがとう!」

 そういってまた姉は仕事に没頭し始めた

 確か8人ほど教えているとか言っていたな

 絶対無理しすぎだろと突っ込みたいところだが、まあ頑張ってくれてるし今は黙っている

{無理してるのは真司おまえもだと思うけどな}

 それを言われると何ともな・・・




 とりあえず今日はある材料だけで朝ご飯を作った

 姉は眠たそうな顔をしながら椅子に座り、ゆっくりと料理を口に運んでいく

 朝の雑談の中に、

「あ、そうだ。卵きれてたからまた買ってきといてよ」

 なんて会話を挟んだ 

「ん。わかった~—―――ぐぅ」

 そういって姉は茶碗を持ったまま眠リ始めた

 ガチャン!と音が鳴り、姉が持ったいた茶碗から米が零れ落ちた

 くまができているし、朝早くからがんばっていたのだろう

 机に突っ伏して寝ている姉に毛布をかけつつ、今の時間を確認した

 今は7時28分

 大体昨日起きた時間だ

 あと1時間ぐらいか・・・

 これならゆっくりと準備ができるな

{なあ、わかってるか?昨日みたいに時間がいきなり変更される、なんてこともあるんだぞ。今みたいな状況だと特にな}

 どういうことだ? 

{昨日とは違った起き方をしただろ?そんな些細なことでも未来は大きく変わってしまうもんなんだよ}

 ああ、確かにそうだな

 実際、9日(昨日)も天童さんを家で待たせたせいで死因が変わったからな

{そうだ。それに大原兄弟がもし生きていたら世紀の大発明をしたり、エイリアンから地球を守ったりしていたかもしれないんだぞ?}

 もしの話が無茶苦茶な気はするけど・・・まあいい気にしたら負けだ

 まあとりあえずは地震をどう対処するかだよな

{そうだな。まあ俺には関係ないから、1人でがんばれ}

〖一人ではありませんよ私がついていますから〗

 ああ、そうだな

 さてどうす、るか?

{・・・・・・}

 『二重人格ジキルとハイド』、お前そんな高い声出せたのか?

{知らないぞ俺は}

〖さて、どうしますか?マスター

 また聞こえた

 知らない、でもやはりどこかで聞いたことのある声が

 声質から女性だろうか?

 まあ聞くことは一つだろう

 あんた誰ですか?




〖私は『二重人格ジキルとハイド』です〗

{いや、俺が『二重人格ジキルとハイド』なんだよ}

 現在、すごいややこしいことになっている

 で、結局お前は誰なんだ?

〖だから『二重人格ジキルとハイド』だって言ってるじゃないですか〗

 ・・・もしかして、また俺の魂が集まって出来たパターンか?

{いや、違う。また別の魂が入り込んでそれが『二重人格おれ』に適合しちゃったらしい}

 なにそれめんどくさい

 そうだ、『二重人格ジキルとハイド

〖{なんだ(ですか)}〗

 やっぱりそうなるよな・・・

 そうだ!名前でも付けて個体分けすればこんな苦労も減るんじゃないか?

{別にいいとは思うけど・・・ネーミングセンスあるのか?お前}

 それぐらいあるって!!

 えーそうだな・・・

 よし、スキル名にちなんで『善意ジキル』と『悪意ハイド』なんてどうだ?

{それどっちがどっちだ?}

 お前が『悪意ハイド

〖では私が『善意ジキル』ですね〗

 ああ、そうだよ

 そうやって名前を付けてやると、

<告 上位技能 『二重人格ジキルとハイド』の【他人格】が 上位技能『善意ジキル』と『悪意ハイド』に進化しました>

 なんか進化した

{おお、個別に進化したか}

〖そのようですね。これからよろしくお願いしますマスター

 ますたー?

 そういえば『善意ジキル』が生まれた時から俺に対してそんなこと言ってたな

 で、なんでマスター

〖この体の持ち主はあなたです。だからあなたがマスターです〗

{そうか、それもそうだなマスター(笑)}

 うん知ってた

 知ってたけど改めてやられると傷つくな

 そいえば今何分だ?

〖今は7時33分です。死亡まではまだ時間がありますよ〗

 お、サンキュー

 そうか5分も話込んでしまったのか

 まあいい、時間まではまだ余裕があるしその間に準備でもしておくか

 準備って言ってもただ『生け贄』を使うだけなんだけどな

 あとは食料の調達と、テントの用意と・・・

 結構大きな地震だったから古い家なんかはすぐ壊されそうだ

 家は大丈夫かな~

 そうだ、避難する場所も確認しておくとしよう





〖現在は8時13分です。あと20分ほどですね〗

 そうか、了解

 これからの野外生活に備えてあのスーパーで必要な物を買ってきておいた

 勿論天童さんにも遭遇した

 やっぱり大量の菓子を買い込んでいた

 一体あの細い体のどこにあの量の菓子が吸収されるんだ・・・

 まあそんな乙女事情とやらは置いておいて、とりあえずダッシュでかえって姉を助けないとな

 走ったら意外と早く着いた

 行きが大体15分くらいだったのに対して今回は10分で着いた

 8時24分か

 あと12分だな

{で『生け贄』は結局使用すんの?}

 おっと忘れていた

 よし、じゃあ発動してくれ

{わかった}

<上位技能 『生け贄』を対象{橋谷 楼香(はしたに ろうか)}に使用・・・成功しました。これにより本日の堀山 真司の死亡は取り消されました>

 橋谷楼花か・・・

 聞き覚えがないな

 一応入学式で配られた学級名簿を見てみたが、そんな名前は載っていなかった

 とりあえず知らない人に死を渡せたし、後は姉とともに外へ逃げだすだけだ

{あっ、ソウデスネ(棒)}

 おい、その意味深な棒読みは何だ

{すぐわかる}

<告 スキル 『生け贄』の効果が打ち消されました>

 え!?

 おい『悪意ハイド』!死を書き換えるのって『生け贄』使ったらもう不可能じゃないのか?

{たぶん相手さんの技能スキルの効果じゃね?}

 はい?

 技能スキルって、え、うそ、もしかして、橋谷楼香も技能スキル持ってるってことか?

{単純に気づいてないってだけで、この世界で技能スキルを持ってる人間は少なくないぞ}

 あ、そうなの?

{お前も持ってたし信じることはできるだろ?それとも、自分だけ特別~、みたいなこと思ってたのか?( ´_ゝ`)プッ}

 そ、そ、そ、そんなことね~し~

 ただ、ただ驚いただけだし

 た、確かに俺が技能スキル持っているって死ぬまで気づかなかったからな

 テレビとかに出ている超能力者ってのもそんな感じか?

{いや。残念ながらお前が少しばかり特殊なだけで、ほとんどのやつはたとえ持っていることに気づいても使えないんだわ}

 そうなのか・・・

〖『生け贄』の再起動に失敗・・・使用できません〗

 ・・・ん?『善意ジキル』さん?

 何か言いましたか?

 なんか『生け贄』が使えないって聞こえたんだけど

{現実見ようか}

 現実って、どっち?

{あの世だと思う}

〖死なないと解除できないので、あきらめてください〗

 とうとう『善意ジキル』さんが諦めた!?

 これはあれだ、無理だ

 えっと今が8時34分か

 さてここで質問だ

 あと2分で死ぬならあなたは何をするだろうか?

 そんなことを考えながら、寝ている姉の足をつかみ外へ引っ張り出した

 そして、テントと、食料が入ったザックを近くに置いておく

 これで後は死ぬだけだ

 ん、ライトが少しぐらついているな

 もうすぐ来るか

 その瞬間に激しい揺れが襲い掛かってきた

 地面は激しく上下し、水屋内の食器がまた大変なことになっている

 ってか吐きそうなんだが

{やめろよ汚い}

 あ、お前にもそんな感覚はあんのな

〖わ、私はマスターがいくら吐いても引いたりなんかしませんから!!〗

 対照的にこの子は何を言っているんだろう

 なんかすごいことというか、一周まわって引くぐらいのことを言われたような気がする

 そんなことを考えていると、あの冷蔵庫が頭に振ってきた

 今度は一瞬でつぶされ「ぐちゃっ」というありとあらゆる穴を塞ぎたくなるような音とにおいが記憶の最後に残った

<スキル 『過去移動さかのぼり』を使用します。魂の移動を開始・・・成功しました。続いて記憶の移植・・・成功しました>

 意識が消えていくような感覚がして結局またあの時に戻ることになってしまったようだ



1人で約10人を教えるって考えてみたらとても大変そうですね・・・

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