七話 結構やばい危機
※'16 12/11 言い回しなど変更しました
スーパーのイベント?を追加しました
まぶしい光が俺の目元を照らしたことで、やっと俺の目は覚めた
・・・朝か
結局昨日は帰ったあと、すぐにベットに潜り込んだ
まあ昨日はいろいろあって疲れていたのだろう
数分で夢の世界に行けた
えっと今は7時22分か・・・
予想時間が9時25分だからあと2時間ぐらいだ
とりあえず起き上がろうとすると、腕にずっしりとした重みを感じた
眠い目をこすりながら隣を見てみるとそこには、姉がいた
「う~ん、むにゅ?」
なんて言いながら、よだれを垂らして寝ている
とりあえずそうだな今取れる一番の手は・・・
「起きろ!!!」
そういって腕を振り払い、姉をベットのから落とした
「うにゃ?」
かなりすごい音がしたが、どうやら無事らしく、まだ寝ていた
{よく寝るな~、智里さん}
ああ、そうだな
とりあえず智里を無視して俺はキッチンへ向かった
{さ~て、今日の朝飯は何だ?}
えっと、今日は・・・
キッチンのテーブルの上には何もなかった
{そういえば今日の飯当番ってお前じゃなかったか?}
あ、そうだったな
じゃあ早速作るとしよう
まずガスコンロに火をつけ、冷蔵庫から材料を取り出した
「あれ、卵がない」
食材を取り出している途中に気づいた
冷蔵庫のポケットの中には、一つも卵がなかったのである
{卵使うのか?}
ああ、朝は目玉焼きを食べないと朝食った気がしないんだよ
コンビニで売ってたっけな・・・
{近くのスーパー8時に開くからそこ行ったらどうだ}
へえ、そうか・・・8時!?
こんな朝早くに開くスーパーなんかあるのか?
{さあ?そこのチラシに書いてるから本当じゃないか?}
テーブルの上には新聞紙が無造作に置かれていて、その中に『二重人格』の言っていたスーパーのチラシがあった
あ、今日開店セールある
今って何時だ?
{7時39分だから、ゆっくり行ったら開店前につくぞ}
そうか
みそ汁の味を調節しつつ俺は出かける準備をはじめた
「ぽかぽか陽気とはいうけど、やっぱり朝方は寒いな・・・」
家を出発して10分
体を震わせながら、『二重人格』のナビゲーションのもと、スーパーに向かっていた
道の横には川が流れていて、太陽の光が反射してかなりまぶしい
上着持ってきておいて正解だった
{そういえば智里さんはあのままでよかったのか?}
大丈夫だろ
なんだかんだいってあいつは頑丈だからな
去年もインフルになったんだけど、その翌日には内職再開してたぐらいだし・・・
{お前たち姉弟の頑丈さってのは親譲りか?}
いや、違うらしいぞ?
両家のじいちゃんばあちゃんに聞いた話だと、二人とも貧弱だったらしい
{じゃあ先祖返りか}
たぶんそうだな
そんな会話?をしていると、目的のスーパーについた
どうやら8時を過ぎていたようで、店内には大勢の客が商品を取り合っているのが見えた
そこを華麗にスルーしつつ、メモを取り出した
えっと買うものはまず卵を2パックと、醤油も確か切れてたな。あとは・・・
{菓子が食いたい}
金がないから却下
{別にいいじゃんかよ~}
家の経済状況は結構やばいんだよ
そもそもお前、食べることも味わうこともできないから意味ないだろ
{いや、一応感覚とかはリンクしてるから物を味わったり、においをかいだりとかはできるぞ}
そ、そうなのか?
ならなんで痛みは感じないんだよ
{感じることのできる感覚は自分で操作することができるんだよ}
なんかずるいな
あ、ジャム買っとこ
これで十分かな?
{菓子を忘れているぞ?}
必要ないんでいいです
レジに向かうとさっきの人数が嘘のように空いていた
まだセール商品を取り合ってるんだろうか?
そんなことを思いながら商品をレジに通していく
ここは人員削減のため、セルフレジになっているらしい
「548円になります」
そんな無機質な声が聞こえた
千円札を投入し、お釣りを財布に入れ、退こうとすると、聞き覚えのある声が聞こえた
「あれ、おはようございます」
声の主は天童さんだった
昨日はきれいに整っていたボブカットが、寝ぐせのせいかあちらこちらはねている
「お、おはよう」
とりあえず俺はレジから退き、袋に商品を入れ始めた
「堀山君もここに来てたんですね。やっぱりセール目当てですか?」
「いや、ちょっと朝ごはん作ってる途中に材料が足りなくなって・・・ね」
天童さんは俺と話しながら商品を通していた
そのほとんどが、お菓子、お菓子、お菓子という、なんとも夢のような・・・
そんなに彼女は大食らいなんだろうか?
結構細そうに見えるけど、着痩せするタイプなんだろうか
そんなことを思っていると、天童さんは俺がどこを見ているかに気づいたようで、恥ずかしそうにしながら素早く商品を袋に詰めていった
「て、手慣れてるんだな」
なんとなく、空気を読んで話題をずらした
「え?ああ、うん。私の家はお父さんもお母さんも遅くまでお仕事しててね。帰ってくるのも深夜の2時とか3時とかで、二人ともいつも昼間でぐっすりと寝てるんだ。だから休みの日はいつもここで食材を買って、自分で作ってるんだ」
「へぇ、そうなんだ。俺は母さんも父さんも早くに死んじゃったからな。正直、羨ましいよ」
「そう、なんですよね。あの、すいません」
「4520円になります」
天童さんの声と機械の声が重なった
{4千円超えって・・・安売りしててその値段だと結構買ってるな}
そんな分析は必要ない!
天童さんはまた恥ずかしそうにしながら機械に5千円札を投入し、お釣りを取ると「さ、さようなら///」と顔を赤くしながら逃げるように走っていった
一緒に帰ろうと思ったのに・・・
{お前何言ってんだ?}
え?普通の事だろ?
{・・・・・・・}
なんだろうか
とりあえず目的のものは買えたし、さっさと帰って朝ご飯でも作るとしよう
家に帰っても姉は起きていなかった
朝落とした状態から全く移動していなかった
耳を塞ぎたくなるぐらい大きいいびきが聞こえているので死んではいない
まあ、朝飯のにおいをかいだら「おなかすいた~」とか言って降りてくるだろう
そういって目玉焼きの入ったフライパンに蓋をかぶしていると
<死亡予測時間の変更を確認しました 9時25分から8時36分に変更となります>
は?えっと『二重人格』
今は何時でしょうか?
{んあ、今か?8時32分だな}
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい
あと4分で死亡?なんで一体どうして
{わからん。ほらそれよりあと3分だぞ。まあがんばれ!}
とりあえず死ね!
そんな言い合いをしていると、地面が揺れ始めた
地震!?そんな、今ぁ!?
水屋に入っている食器はカチャカチャと音をたて、蛍光灯が落ちてきた
とっさにつけていた火を消し、揺れる視界の中ガスを止めた
あとはどうすればいいんだっけ?
{とりあえずテーブルの下にでも隠れとけ}
そんな助言を聞いて振り返ってみると、テーブルは足二つがぽっきりと折れ、倒れていた
そういえばこれはかなり前からこの家にあったものだ
そうか、もう寿命か・・・・
いままで、ありがとう
なんてこんな非常事態の中感傷に浸っていると、
{死亡時刻から推定すると結構長く続くなこの地震}
そんな『二重人格』の声が聞こえ、現実に引き戻された
そういえば中学生の時、理科で習った覚えがある
なんかまず軽い余震が来てそのあと強い本震が来るって・・・
え?余震?本震?これより強い?
俺の命、危険!?
そんなことを思っていると、突如悪臭が廊下の方から流れてきた
とても“自主規制”臭い
下水管でも壊れたのだろうか?
鼻を押さえながらなぜか匍匐前進で揺れる廊下へと向かう
あと少しで廊下にたどり着く、そんな瞬間にタイミング悪く・・・
冷蔵庫が倒れてきた