五話 助け出すには
※'16 12/10 言い回しなど変更しました
さて、作戦会議といこうか
{何の作戦だ?}
俺と天童さんを救う作戦だよ
{それなら『生け贄』を使えばいいんじゃねーか?}
それを使ったら天童さんの名前が出てきたんだよ
昨日もあんなことを泣きながら言ってたし、なんか、助けてやりたいなって・・・
{惚れたのか?}
ち、ち、ち、ち、ちげーし!!
ただなんか情が移っただけだし!!
{ふーん、まあいいか。それならクラスの誰かを生け贄にすればいいんじゃねぇの~?}
それもだめだ
天童さんを助けるとは言ったけど、やっぱり誰も殺したくないっていうのも本心だ
{そうか、まあガンバ}
そうか
まあどうでもいいが
{どうでもいいとは何かね真司君}
実際話さなくてもわかるだろ
こっちは作戦を考えてんだよ
{やめたらいいんじゃないの、人の死は絶対だよ。これは誰にもあらがえない。あくまで君は死を先伸ばしに、もっと簡単に言うと逃げているだけだ。それだといつかは捕まってしまう}
そうなのか
まぁ興味ないしいいや
{興味ないって・・・}
今は9時か
あと7時間ぐらいあるし考えとくとするか
17時
昨日のように天童さんが来た
姉より早くドアノブを握れるよう下に降りてきておいてよかった
「あ、こんばんは」
「あれ、どうしたの。こんな時間に」
「うん、今日のお通夜場所がわからないから一緒にいかない?」
うん、これは嘘だろう
もし本当ならあのとき俺がついていった背中は誰のものだろうか
たぶんあの話をするためにこんな嘘をついたのだろう
「いいけど、ちょっと時間的に早く着いちゃうな。ここからだと30分くらいで着くから、ちょっとうちで休まない?」
状況が状況ならたぶん通報間違いなしであろう
「あ、そうなの?じゃ、じゃあお言葉に甘えてお邪魔しようかな」
苦笑いで彼女はそう答えた
ちょうど智里はご飯を作っていたようなので俺と天童さんと智里の3人で食卓を囲むことになった
{おいおい、俺を忘れないでくれよ}
お前は人として数えていいのか?
そうやって『二重人格』と話をしていると
「そういえばお姉さんと、真司君は二人で暮らしているんですか?」
「ああ、智里でいいよ。うん二人暮らしだよ」
「そうなんですか、お二人とも若いのに大変ですね」
二人は二人でなんか仲良くなっていた
「あはは、よく初めて会う人に言われるよ」
「そうなんですか。そういえば智里さんはおいくつなんですか?」
「ふふふ、いくつに見える?私」
「ああ、こいつ21才で大学3期生だよ」
「ちょっと!なんで言っちゃうの!!」
「なんとなく、面白いから」
「真ちゃんのいじわる~」
「真ちゃん言うな!!」
国民的アニメキャラと呼び名被るだろうが!!
そんなことを思いながら姉の頭にチョップを食らわせた
「な、仲いいですね」
苦笑いしながら天童さんが言った
そんなことをして談笑していたらもう30分に近づいていた
「あ、もう行かないと6時に間に合わないな。よし、行こうか天童さん」
「あ、うん、そうだね、行かなきゃね」
「あら、もういくの~。もうちょっといてもいいじゃない」
「はいはい、8時ぐらいには帰ってくるから、ふろ沸かしといて」
「わかったー」
そんな適当な返事を聞き、俺と天童さんは家を出た
17時35分
死ぬまであと2分というところだった
俺らは道のり的に半分くらいのところにいて、まだあのビルさえ見えていない
これで死ぬことはないはずだ
{うんそうだね、これで君は今日死ななくなるだろう}
おい、いきなり出てきて何言ってんだよ
{ん?べつに、ただの忠告だよ}
忠告?
何のことに対してのだ?
{そうだな・・・まあ油断するなってことだ}
油断ねぇ
そういえば生け贄で誰が死んだとか出てないのか?
{いや、それは報告されてない}
そうか、なら安心だな
{・・・・・ああ、そうだな}
むっ!?なんか怪しいんだけど・・・
そうやって『二重人格』と話していると、最近感じたような浮遊感と、聞いたことのある少女の悲鳴が聞こえてきた
いきなりだがなんで車や自転車の運転中に電話をしてはいけないのか知っているだろうか
それは注意力が散漫になるからだ
まあつまり何が言いたいかというと、またトラックにひかれた
{あ~あ、やっちゃった}
いややっちゃったじゃねえよ!
こっちはすっごい痛いんだよ
殴るぞ!!
{実体があったらね(笑)}
わらってんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇ
とてもイライラするが、そんなことを考えている暇なんてない
しかしなんでだよ、『生け贄』に出てないんだったら死とかも回避できてるはずなのに
{だから言ったじゃん。『生け贄』を使うってことは、あくまで逃げているだけなんだって。鬼ごっこでいうならずるをして鬼から逃げてるって感じだ。でもそのずるは結局使わなきゃ意味がない}
ってことはやっぱり犠牲は出さないとだめなのか?
{ああ、そうだな。それよりわかってんのか?死亡時間までまだ少しあるから、死ぬまで辛い痛みが襲うぞ}
え、マジですかそれ?
{マジにございます}
ふざけんな、死ね!
{先にお前が死にそうなんだが}
そんな言い合いをしていると、天童さんが震えながら近寄ってきた
「だ、大丈夫ですか!しっかりしてください!!」
ものすごく焦っていらっしゃいます
{余裕ですね、貴方}
まあ生き返れるってわかってたらそうもなりますよ
「そ、そうだ救急車、救急車呼ばないと。えっと、えっと」
しかし取り乱し方が尋常じゃないな
{普通はお前がする反応なんだけどな}
どういうことだ?
{やっぱりさ、人ってのは痛みを何度も何度も与えられて、さらに死ねないってなってくるとかなり精神に負担がくるんだけど・・・なんでお前大丈夫なの?}
さあ?
こればっかりは人間の適応能力すごいねとしか言いようがない
「・・・はい、はい、えっとOOの2-7です」
{あーあ、もう間に合わないんだけどなぁ}
お!そうか、もう時間か
<スキル 『過去移動』を使用します>
天童さんの声に重なるように、あの声は俺の意識を奪っていく
<魂の移動を開始・・・成功しました。続いて記憶の移植・・・成功しました>
はい、じゃあおやすみ
そうしてまた、意識は遠のいていった