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英雄になれると思いましたか?  作者: 蔵餅
失われし憤り編
57/68

35話 よってあいつは変態『Q.E.D. 証明完了』

 さて閑話休題

 そもそもこんなところに来た理由を、俺はすっかりと忘れてしまっていた

 そのためにも、一刻も早くリリムさんと合流しないといけない

「と、いうわけなんだが・・・ 行けそうか?」

「無理です。寝させてください」

 そう言って彼女は、手渡した毛布を体に巻き付けた

 辺りはもう暗闇に包まれ、物音一つ立っていない

 つまりは夜が訪れた

 俺は特になんともなかったが、どうもルススは眠いらしく目が虚ろになっている 

「そうか。俺が守っとくから、ゆっくり休んどけ」 

「・・・・・・」

 かなり疲れていたようで、彼女は目をつぶるとすぐに寝てしまった

 その寝顔だけはとても可愛らしい少女の様だ

 ただ、首に巻き付けた赤いチョーカーと土で薄汚れた身なりのせいで、どこか奴隷のように見えてしまう

 しかも幼女体系である

 幼女体系である(重要)

 もしこんな場面を友人なんかに見られたら、それはそれは大変なことになるだろう

 女同士なのに警察にお呼ばれすることになるし、女同士なのにドン引きされるし、挙句の果てに女同士だというのに豚箱にぶち込まれるかもしれない

 ああでも、さすがにタッチはしてないからセーフだろうか?

 どこぞの勇者と違って偶然触れてしまったという事案もないわけだし、豚箱送りにはならないか

 それでも横に並んで一緒に歩いていると職務質問は受けそうだが

 さて、と

 そろそろルススも完全に熟睡したところで、こっちもやることやるとしよう




「とりあえず、これでも飲むか?」

 俺はどこからか以前レンにもらった酒を取り出し、適当に創ったグラスに注いで、鎖でぐるぐる巻きにされたお相手さんに差し出した

「敵から出されたものをそうやすやすと飲むほど、俺も落ちぶれてはいない」

「毒なんか入ってねーよ。これも知り合いにもらったやつだしな」

「嘘をつけ。酔わせて情報を吐かせようという魂胆であろう!」

「そんな計算高いこと俺がするか。たんにこれはお前にリラックスしてもらおうと―――」

「いいや、飲まないぞ!そもそも俺は酒が苦手なんだよ!!」

「そうか、それは悪いことをしたな」

 そう言うと、俺は彼に進めていた酒をのどの奥に流し込んだ

 カッとのど元が熱くなり、自然と口から吐息が漏れる

 うん、酒を飲むのは初めてだったのだけれど、かなり美味いなこれ

 これが美味いのか、酒全部が美味いのかは知らないが、なるほどこれはいい発見になった

「で、聞きたいことなんだが――」

「だから俺は何も言わないと言っているだろう!!」

 むー、かなり尋問とかに対して慣れてるな

 断固として重要なことを何も言わない精神はとても褒めたいところだが、しかし聞き出す側がそんなこと褒めても意味がない

 ・・・じゃあせめて、別のことでも聞いておくか

「なあ、吸血姫ヴァンピレスが珍しいって、どういうことだ?」

「・・・お前、知らないのか?」

「残念ながら」

 そもそも知ろうと思ったことがないし

「まあ、それぐらいのことなら教えてやるよ。一応、お前に負けた身ではあるからな」

「それならもっと重要なことを教えてもらいたいところだけど」

「それは話せんな。・・・これは俺が生まれるよりも前の話なんだが―――」

 

 これは俺が生まれるよりも前の話 

 だから人から聞いた話なんだが、今から数えると400年ほど前

 たった一人の人間族ヒューマンによって、吸血鬼ヴァンパイアの一族は壊滅したらしい

 そう、一匹残らずな

 理由?そんなのはわからない

 話してくれた奴によれば、その頃の吸血鬼ヴァンパイアっていうのはかなり人間族ヒューマンと敵対関係にあったらしい

 だから、何か人間族ヒューマンに対して都合の悪いことでもしたんじゃないかなんて言われてる

 といっても、真相はすっぽり闇の中なんだがな

 しかしてっきり吸血鬼ヴァンパイアの一族は消滅したものだと思っていたが、まさかその、いやその上位種の生き残りがいたとはな

 

「とっくの昔に絶滅してたってわけか」

「いや、俺の目の前にちゃんといるじゃないか」

「俺は、な。何というかイレギュラー的な存在だから」

「イレギュラー・・・ にしてはかなり盛大なサプライズだ」

「サプライズは嫌いではないだろ?」

「どっこい。俺はサプライズとかドッキリが苦手なたちでな。そういうのを受けると、つい反応が鈍っちまうんだよ」

 そういうと男はため息をついた

「で、これから俺をどうするつもりだ?もう一度言っておくが、俺は仲間について何も話すつもりはないぞ」

「ん?ああ、いや。情報はバッチリと頂いたよ。話している間にな」

「なに!?お前どういうことだそれは!!」

「お前上司に教わらなかったのか?見知らぬ相手と接するときは、いつでも細心の注意を払えって」

 まあ、心に注意なんてそうそう払えないと思うが


 『深層読心テレパシー


 天童さんの読心術に似て非なる技能スキル

 一見すれば、俺のも天道さんのもさほどの違いはない

 違うのは、技能スキルを切ることが出来るかどうかだ

 天童さんのは自動的に大人数に発動するタイプ、いわば劣化版だった

 変わって俺のは自分でコントロールすることが出来る

 短所と言えば一対一でしか使えないこと

 そして遠すぎると使えないことだろうか

 あと、消費魔力も段違いに高い

 欠点らしい欠点はそれぐらいだ

 さて、彼との無駄話をしている間にとても面白い情報が手に入った

 ルススが起き次第でも、さっそく彼の上司を叩いてみるとしよう






 山の中だというに月が上っているのは、とても違和感を感じる光景だ

 と言っても、あれはこの国の魔王が作り出したものなのだが

「・・・しかし、どこに行ったのかしら。まあ、彼女は私になんか会いたくないでしょうが」

 月明かりに照らされて、彼女は妖艶に笑みを浮かべた



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