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英雄になれると思いましたか?  作者: 蔵餅
失われし憤り編
56/68

魔王目録 『憤怒』の章

さて今回も過去編、的な何かです


今から400年前のこと・・・



 彼女は孤独な魔術師ウィザードだった

 彼女はその孤独を打ち消すためにひたすら鍛錬し、己を鍛え上げた

 しかし、その強さから人が寄り付かず、恐れられていることを彼女は知らなかった

 しかし彼女は強さを欲した

「もっと強くなればみんなから認めてもらえる」

「もっと強くなればこの孤独はなくなる」

 そんな希望にかけて、彼女は強くなり続けた

 しかしその希望は叶わなかった

 彼女はさらに人から寄り付かれなくなった

 最終的には「化け物」「冷酷非道の魔女」といった称号までつけられた

 そして彼女は、人を信じなくなった  



 そこから数年後、彼女はある男と出会った

 男の名は・・・・わからない

 彼女は長い時間の中で彼の名前を忘れていた

 そんな彼は彼女の強さには恐れず、興味を示していた

 彼は彼女に”名”と己が持つすべての”技術”を彼女に託した

 その結果彼女は最強と冷酷の称号を手にした

 しかし彼女は、冒険者としてまた孤独に生きていった




 彼女は、寂しかった

 なんで、なんで私は一人でいなければならないんだろう

 そんな思考が頭の中で空回りしていた

 そんなとき、ある知らせが入った

 『*******が戦いのさなか、敵国の兵士に殺された』と

 彼女は唯一の心の拠り所をなくし、その心にはもう敵に対する『怒り』しか残っていなかった

<上位技能『激怒アキレス』を獲得しました>

 国内最強の騎士が死亡したという知らせから、王国は戦争にあらゆる冒険者を惜しみなく投入した

 もちろん、彼女も含めて・・・




 彼女の”最強”の名は、もちろん敵国にも伝わっていた

 彼女が来るや否や、敵がすべて彼女のほうへ向かい始めた

 片や数の暴力で彼女を屠るため

 片や全ては最強の称号を手に入れ、富を得るため

 それぞれがそれぞれの目的をもって、死ぬ気で彼女へと特攻していった

 しかし、その気持ち自体が傲慢である

 そんな彼女の心の中はまだ怒りで満ち溢れていた

 もうだれにも止められないその烈火のような怒りは、すべて敵のほうへ向かっていった

〘紅蓮燈火〙

 彼女の怒りのように燃え盛る火柱が1本2本とどんどん燃え上がり、敵を焼き尽くしていく

 もう彼女には、師匠を殺された恨みを晴らすことしか頭になかった

 彼女の目の前は真っ赤に染まり、敵を殺していった

 多くの悲鳴の中、彼女は大きな笑みさえ浮かべていた

 長い間の孤独と、心の拠り所が無くなったことで、彼女の精神は壊れてしまっていた

 ただただ目の前にいるゴミを殺す、その意識だけを保ったままで敵を殺していった

 気づいたら、味方にも攻撃していたらしい

 しかし彼女はそんなこと気にすることなく、敵を殺し続けた




 気が付いたらそこにはもう何も残っていなかった

 敵の死体も、味方の死体も、何もかも

 もしかしたらあれは、夢だったんじゃないかと思えるほどだった

<上位技能 『激怒アキレス』が進化・・・成功しました。罪『憤怒(サタン)』を獲得しました・・・>

 だが、やはり夢ではなかった

 体についたこの血が、それを物語っていた

 そして、いつの間にか獲得していた技能スキルは、どうやら罪に変わったらしい

 今日、彼女は魔王に成った

<魔王への進化を開始します・・・成功しました。これにより、人体の魔人化を開始します>

 優しい女性の声とともに、激しい痛みと眠気が襲った

 そのまま彼女は眠りについた

 夢の中で、彼女は最愛の師匠のことを夢見ていた・・・




 彼女は今日、大切なものを失った

 愛していた師匠のことも、人の体も、優しかった心も・・・

 彼女の”名”は ルスス・バリウス

 3人目にして、『憤怒』の魔王となった




 —―――—――アーテス・ミルヴァ著 『魔王目録』より抜粋

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