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英雄になれると思いましたか?  作者: 蔵餅
失われし憤り編
50/68

29話 うさぎはどこ?

遅くなってすいませんでしたm(_ _)m

昨日今日と忙しかったんです、許してください

明日も、もしかしたら遅れるかもしれません・・・

「・・・お前がルスス・バリウス?」

 もしかしたら聞き違えたかもしれない

 ということで再度確認を取った

「何度言わせる気ですか。そうですよ」

「そうか」

 そういうと、俺は黙り込んだ

 うむ、何なのだろうな 

 もちろんこれは驚くべきことであって、同時に喜ぶべきことなんだろうけど・・・ 

 正直言って、どっちの感情も湧いてこないっていう

 こっちに来てから短いながらも、やっぱり驚いたことってのが多かったせいか、どこかずれを感じているんだよな~

 無理にリアクションしようか迷ったが、自分の演技力に自信があるかと問われれば、考えることなく否定するような人間だ

 以前瞬を騙すことには成功したが、それは騙す相手があいつだったからであって、別に俺の演技がうまいわけではないのだ

 しかし何故猫なのか

 別に犬とかでもよかったんじゃないのか

 じゃなくて、なんで猫になったんだ

 まさかそんな遊びが流行っているわけでもあるまいし

 と聞いてみると、

「そんなのわかんないですよ。ほんと気づいたら猫になってた、って感じですもん」

 だそうだ

「そんなカフカ並みのメタモルフォーゼが、この異世界でも起こりうるのか?」 

「カフカ?」

 そりゃ知るわけないよな

「作家さんの名前だ。で、しつこいようだけど本当にルスス・バリウスなんだな?」

「本当にしつこいですね。終いには焼きますよ」

 おおこわ

 じゃあ焼き払われる前に連れて帰るとするか

「ああそうだ、俺の名前は堀山し、じゃない。アーテス・ミルヴァだ。よろしくな」

「堀山し?」

「ただの癖だ。気にすんな」

 やっぱり別の名前を名乗るっていうのは違和感があるな     

「というかやっぱりミルじゃないですか。ほんとに私のこと覚えてないんですか?」

 いや、本当に知らんのだが

「俺は知らない。たぶん別の奴だろ」

「でも、姿も名前も同じだなんて・・・ そんなことありえます?」

「知ってるか?世界には瓜二つの人間が三人は居るそうだ」

「そうですか・・・」

 と、猫はその小さい首で精一杯うつむいた

「ところで、お前とその別のミルって奴とは、どんな関係なんだ?」

 数少ない友人とは聞いていたけど

「ちょっと、その言い方はやめてください。それだとまるでミルの方が偽物みたいじゃないですか。偽物は貴女ですよ!!」

「誰がパチモンだ!」

 さすがに泣くぞ?

 見た目女なのに男泣きするぞ?

「・・・そうですね。彼女と私は、戦友であり、相棒であり、家族でもあり、そして何より、唯一の親友、ってところですかね」    

「そうか。ん、親友?」

 でも、魔王さんはリリムさんの親友って言ってなかったっけ?

 あれか、3人ずっと一緒だよって感じか

 まあとりあえず、

「俺はとある人から命令で、お前を探してほしいと頼まれたんだ。けどなぁ、猫になってるとは思わなかったし、なんて報告しようか・・・」

「とある人っていうのは誰ですか?私そんなに人に恩とか売った覚えないんですが」

「よくそれで動いてもらえたな。えっと、トラスさんっていう人なんだけど、わかるか?」

「トラス?聞き覚えがないですね」

「一応『嫉妬』の魔王なんだけど・・・」 

「『嫉妬』!?もしかしてあの剣ですか!」

 おおう、剣ですかって

 全く、どんな覚え方してるんだか

 まぁあれはかなり印象的だけどな

「だからか・・・」

「ん?何か言ったか」

「ああ、いえ。だから、『嫉妬』の悪魔がいたんだなぁって思いまして」

 『嫉妬』の悪魔っていうと、もしかして、

〖七色の悪魔、でしょうね〗

 先に言わないで、頼むから 

〖それよりチャンスですよ、マスター。もしかしたら彼女と合流できるかもしれませんし〗

 そうだな

「で、その悪魔ってのはどこで見かけたんだ?」

「大体あっちの方ですね」

 短い腕を伸ばした先は、ここよりもさらに入り組んだ住宅街だった

 なるほど、入り組んだ方が奇襲を仕掛けやすいということだろうか

「わかった、じゃあ行くか」

「え?行くって、え?」

 疑問しか浮かんでなさそうな表情をしている彼女を抱きかかえると、そのまま勢いをつけて―――

「ちょ、いやぁーー!!」

 ジャンプした

 うん、結構気軽にやったつもりなんだが、思ったより跳んだな

 こいつが気絶しないことを、切に願っておくとしよう   




「ほんと殺す気ですか。まったく!!」

「だから悪かったって言ってるだろうが」

「気持ちがこもっていませんよ気持ちが!もっと、誠意を込めて謝ってください!」

 だからさっきからやってるだろうが・・・

 あのあと、気絶はしなかったもののかなり怖かったそうで、涙目になりながら俺に説教を始めた

 まあ見た目と半泣きになりながら怒っているせいでそこまで怖くはなかったけど

 で、ここまで来たわけなんだが本当に居るのか?

 気配すらしないんだが

「は?もしかして貴女、『気配探知』も持っていないんですか・・・」

「『気配探知』?」

技能スキルの一つですよ!マナを使って、相手の気配を気取るっていうものなんですけど、ほんとに持っていないんですか?」

「悪いがそんな技能スキル、見たことも聞いたこともないな」

「な・・・」

 その一言に、彼女は絶句した

 でもいったい何だというのか

 別にそんな技能スキルがあろうとなかろうと、関係ないだろ

 まあ便利ではあるだろうが

 

 そういうと、今度は呆れられてしまった

「いいですか、『気配探知』っていうのは戦場において必要不可欠な技能スキルなんです。これがないと貴女、確実に死にますよ」

「残念だったな。俺は死なないさ」

 当分は、な

「死なないって、どこからその自信が出てくるのか分かりませんよ。ともかく、気を付けてくださいよ。貴女がいないと、私も死ぬんですから」

「私も死ぬって、そんな極端な・・・」

「極端なわけありません。私は今、魔法も一部の技能スキルも使えないんですから。実際さっきも死にかけましたし」

「・・・お前こそ、よく生き残ってこれたな」      

「まあ私は強いですからね」

 そういうと、無い胸――この場合、貧乳というわけではなくやせ細ったという意味で――を前に突き出して、自慢げに言った

 そうですか強いんですか

 ・・・まぁ、頼りにはならなそうだし、せめて守ってあげるとしよう

 そう思いながら彼女を肩に担ぎあげた

 また跳ぶと思ったのか、少し警戒されてしまったが・・・ 

 これ以上怖がられてもあれだし、走るのもやめて歩いて探すとするか

 とりあえず、ここら辺を見て回ろう

 そう思った時だった

 走馬灯、という奴だろうか

 それが見えたのは何かの偶然だと思った

 ゆっくりと止まっていく時の中で、辺りを見渡すも、特に何の問題もなかったからだ

 いや、見れていない場所があった

 見落としてしまった場所があった

 というかこれは、見落としてしまったとしても、しょうがないんじゃないかなんて、未だに思っている

 だってそうじゃないか

 まさか―――

 まさか、家が降ってくるなんて誰も思わないだろう?

 周囲に、何かが崩れるような、そんな音が響き渡った

 その波にかき消されて、俺の悲痛が届くことはなかった

 

 

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