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英雄になれると思いましたか?  作者: 蔵餅
失われし憤り編
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26話 怪しいセールスにはお気をつけて

 さすがに3度目ともなると慣れたものだ

 オレンジに濁った大空を仰ぎながら、俺はそう思った

 あの後、村にある家を隅から隅まで探索してみたが、死体が積まれている以外、別段変わったことはなかった

 ああ、一応焼いておきましたよ?

 うちの国らしい弔い方で満足出来るかはわからないが、まあ、楽に逝ってほしいな

 さて、今はどこに向かっているかというと、あの国に向かっている

 あの村でかなりの時間を取られたせいで、もう日がかなり傾いているから、急がなければならない

 そう思いながら、バイクを起こすと再び走り出した

 目指したのは、何もない山岳地帯だった



 

 なぜそこに行くのかと聞かれても、どこかの登山家のように「そこに山があるから」などと答えるべきだろうか

 いや別に、ここには誰もいないし、登山家でもないからそんな質問をされるとは思っていない

 俺がそこに行こうと思ったのは、ただの直感だった 

 なんとなくそこに、彼女(リリムさん)がいるような気がしたのだ

 だから私は政治家になった……

 ではなく、だから俺はそこに向かっているのだ

 そういえば気になったんだが、ここって軽い内戦起こってるんだよな?

 それにしては静かすぎではないだろうか

 なんだ?もうすぐ暗くなるから気を付けて早めに帰りましょう、ってか?

 ……もしそうだとしたらお笑いなのだが

 そんな輪っかになった道を一方通行していると、やっと着いた

 けど、特に変哲もない山だしやっぱり気のせいだったのか?

 う~ん、と軽く岩肌を叩いてみると、軽い音が響いた

 あ、これって……

 そう思いながら、拳に力を込めて、

「ドッセーイ!!」

 岩肌を粉砕した

 夕日を受けてキラキラと輝く粉塵が宙を舞い、壊した岩が石となって崩れ落ちていく

 もしかして、いやもしかしなくてもそうだろう

 開けた穴に入り、暗い道を進むと光が見えた

 ああ、通りで見つからなかったはずだ

 まさか、山の中に街があるなんてな……

 光の先には、炎と死体と血痕が溢れかえった、とても広大な街が広がっていた

 

 


 彼女は走っていた

 死ぬかもしれない、そんな恐怖が最強と呼ばれる彼女を逃走に走らせたのだろうか

 それはわからないが、今の彼女に最強の2文字は見当たらなかった

 彼女は一匹の獣のようにしか見えなかった

 そして彼女を追うように後ろから男2人

 おそらく彼女を追っているのだろうが、しかしそれはなぜだろうか

 先ほども言ったように彼女は最強と呼ばれている

 そんな相手に攻撃を、あまつさえ追撃までしようとするなど自殺願望もいいところだ

 いや、もしかしたら彼女を他の何かと見間違えたのかもしれない

 もしくはただ、最強の名を持っていることを知らなかっただけか

 さすがに、自分の方が強いという慢心で挑んだわけではないだろう

 もしそうだとしたらとんだ『傲慢』だ

 でも実際、彼女は逃げることしかできなかった

 ……それは別に、彼女が彼らより弱いということではない

 さすがに彼女も疲れたようで、だんだんそのスピードが落ちていく

 それを見計らって男の一人が彼女の肩を強引につかんだ

 と同時に何かが壊れる音が、街じゅうに響いた

 男たちがそれに気を取られる隙に、彼女は肩に食い込むごつい手に噛みついた

 所詮少女の力、となめてはいけないようだ

 運よく犬歯が突き刺さり、肩をつかむ力が一瞬弱まった

 その隙をついてするりと抜け出すと、近くの路地裏に飛び込んだ

 追ってくるかと思ったが、どうやらその巨体で路地裏に入るのは無理があるようで、それ以上の追跡はなかった

 しかし何だったのだろうか、あの爆発?は

 誰か死んでいなければいいのだが

 腰辺りに付いた黒い尻尾を大きく振りながら、彼女はそう願った

 



 しっかしどこに向かうべきだろうか

 ここは周りより少し高くある程度遠くまで見渡せるのだが、この街めちゃくちゃ広い

 もう東京ドーム何個分の規模じゃない、比べるなら大阪府何個分って言った方が分かりやすい

 ここにリリムさんはいるのだろうか?

 いや居るはずなのだが、先程の一件もあるのでまた別の街かと疑ってしまうのだ

 ついでに言うなら、もしこれが目的の国だとしたなら一つおかしい点がある(おかしな点といってもとても些細なもので、実際は当たり前じゃないのかもしれないが)

 おかしな点というのは、城がなかったんだ

 クラテル王国もあの国も魔王がいる国には決まって城があったが、ここには無かった

 やっぱり、間違いだったか

 そう思い入ってきた穴から出ていこうとすると、

「そこの怪しいやつ、止まれ!!」

 衛兵らしき数人のグループに止められた

 彼らの手には長い槍が握られている

 槍の先にあるのは、もちろん俺の顔だ

 困ったな、俺特に悪いことした覚えないんだけど

「……貴様か?そこの壁を破壊したのは」

「んあ?そうですよ?」

 気の抜けた俺の返事に、なぜか兵士は驚いた

 いやどうしたよ

 そんな驚くことじゃないだろ?

「嘘だろ?ただの人間があの壁を壊せるはずがない」

「だとしたら協力者、でしょうか」

 後ろではひそひそと何か話し合っている

 まあがっつり聞こえているので意味はないのだが

 よく見るとこいつら人じゃないな

 甲冑をかぶっていたせいで気づかなかったが、一人は顔が犬で、槍を握る手のひらにも肉球が付いている

 他の奴は人に似たやつが二人と、猫耳の生えたやつが二人だった

 ……男の猫耳とか誰得だよ、と思ったが腐った、もとい発酵したお姉さま方はこういうものを好むのだろう

 さて、そんな思考は心の奥にしまい込んでどうしようか

 というか「ただの人間」ってなんだよ

 俺はれっきとした吸血鬼ヴァンパイア……

〖それは、単に妖気オーラが出てないからでしょうね〗

 ん?妖気オーラが出てないって?

 ってああ、[魔封じの首飾り(これ)]か

〖そうです。あ、あとですねマスター

 なんだ?

マスターは進化したので種族が吸血鬼ヴァンパイアから吸血姫ヴァンピレスに変化しているので、そこは気を付けてくださいね〗

 わかった、ありがt、ちょっと待って今なんて言った!?

〖いや、だから進化したので種族が変わりましたと〗

 いつ進化したの俺?

〖あの眠っている間ですよ。あれ、言いませんでしたか?〗

 聞いてない聞いてない

{まあ聞かれなかったからな}

 どこぞの白い未確認生命体かお前は……

{そこまで外道じゃねーよ}

 そうか

「協力者はどこだ!!」

 おっと、すっかり忘れていた

 もういっそのこと殴った方が早いだろうが、さすがに問題を起こすのはまずいな……    

 ……なあ『悪意ハイド

{なんだ?}

 この世界って、正当防衛とかあるのか?

{そんな詳しいこと知るかよ。この世界は国ごとに法律が変わってくるんだぜ?それにさ……}

 それに……なんだ?

{この状況を見ればわかるだろ?ここは間違いなく戦場で、彼らは兵士だ。ならやることは一つ}

 やっぱそうなるよな?

{そうしかないだろ?}

 じゃあ、戦るか

「協力者ねぇ…… 強いて言うならもう一人の俺、かな?」

 そういった後、間髪入れずに俺は剣をふるった

 ここは戦場で、彼らは戦うためにここにきている

 なら、俺がするべき、というかしなければいけない行動はこれだろう

 剣の軌道は、はっきりと衛兵の首をとらえていた 

 せめて彼らに敬意を表して、容赦なく殺してあげよう

 

 

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