21話 生まれし姫
今回、珍しく小ネタがありません
それでも楽しめるであろう内容なので、是非ゆっくりしていってください
「この国の魔王、ということは『嫉妬』でいいんだよな?」
「ああ、そうさ。君は例の異世界人でいいんだよね?」
例の?
なんだか引っかかる言い方だが……
「例のかどうかはわからないが、まあ俺は異世界人だ。あくまで魂だけだがな」
「あ~なるほど。転生者と聞いていたが、そういうことか」
「というか、さっきのちゃぶ台といい、箪笥といい、向こうの世界のものが結構あるんだけど……なんで?」
「それはね……」
そういうと魔王さんは一度それらを一瞥し、満足そうにうんとうなずき、
「私は異世界が、特に二ホンが大好きだからさ!」
と、はしゃぎながら言った
異、異世界が好きか……
なかなか珍しいタイプの奴だな、この魔王さん
「でもなんで日本なんだ?ほかにもあるだろ、アメリカとかイギリスとか」
「アメリカ?イギリス?そんな国が向こうにあるのかい!?」
あ、知らなかっただけか
「そうだ、リリムが世話になったね。主として礼を言っておくよ」
少し興味深そうにしながら、魔王さんは軽く会釈した
「別にいいって。大したことはやってないしな」
「いやいや。それに君は大きな功績を残したじゃないか」
大きな功績っていうと、あれか
「残念ながら、その功績はとある友人に譲ったんだ。もう俺の手柄じゃない」
「関係ないさ。重要なのは『誰が何をやったか』。君の友人とやらがその手柄をもらったところで、君がやったことには変わりないだろう?」
「そうかもしれないけれど、それでもやっぱり俺にはもったいないさ。そんな『英雄』の称号なんて。俺なんてただの化け物で十分だ」
「皮肉だねぇ。必死に努力して得たものは化け物の悪評だけなんて。同情するよ」
「する必要なんてないさ。俺が選んだ道だ。何度も何度もくじけて砕けて、文字通り必死となってたどり着いた道だ」
「それはそれは、長旅ご苦労様。で、ここからが本題なわけなんだけど……」
魔王さんは先程までころころと変わっていた表情を一変させ、真面目な様子で、
「一つ、仕事を頼まれてくれないかい!?」
いや、やっぱりおちゃらけた様子で俺に仕事を依頼してきた
「いきなりだな……で、何をやればいいんだ?」
「おお、さっきの様子からして断られると思ってたんだけどな~。どしたの、何かあったの?」
「別に、俺だってリリムさんに助けられたことがあったからな。そのお返しみたいなもんだよ」
「いや~、嬉しいね。じゃあさっそく説明といこうか」
魔王さんはそう言うと、手のひらをこちらに向けた
む、魔王さんの生命線長いな……
{なんでそこが気になるんだか……}
いや気にしないか?他人の手相とか
{気にならねーよ。それに魔王も悪魔だから生命線とか関係ないだろ。女子か}
一応俺、女なんだよなぁ
{精神は男だろうがよ}
そですけどもね
と、まあいつものような会話を繰り広げていると、魔王さんの手から『トータル・リコール』のあの薄い画面のようなものが表示された
画面は度々切り替わり、とある一人の女性が映し出された
「彼女は『ルスス・バリウス』。魔王の一人なんだが、数週間ほど前から消息が途絶えたんだ。一応彼女の七色の悪魔は現世にいるから、死んではいないのだろうけど……」
「ん?ちょっと待て」
「どうかしたかい?」
「七色の悪魔の存在と、魔王の死にどんな関係があるんだ?」
「ああ、そういえばそれは説明してなかったわね」
俺が魔王さんに疑問を呈すると、リリムさんが横入りするかのように答えだした
「七色の悪魔の存在は、魔王とイコールなのよ。魔王が生きれば、七色の悪魔は生かされ、魔王が死ねば、七色の悪魔も死ぬようになってるってわけ」
魔王とイコール、いわば同等か
じゃあ俺が怠惰の魔王さんを殺してたらベルも現世から消えてたってことか……
殺さなくてほんとによかった!
「でだ、何を依頼したいかというとずばり!彼女を見つけ出してほしい」
なるほど行方不明者の探索ね
でもあれだよな
別にこれって……
「俺じゃなきゃ、ダメかそれ?」
リリムさんでも3分でクリアできそうな難易度だろ
わざわざそれを俺なんかに頼むか?
「君じゃなきゃ、というよりは君たちじゃなきゃダメだよ」
「なんでそんな、」
「3571人」
「っえ?」
「この依頼を受けて死んだり、魔王がいなくなった国で反乱が起こったりして、殺されたりした人の数だよ」
「…………」
「これ以上死人を出したくない。お願いだ、言ってはもらえないだろうか」
先ほどの会釈よりも深く、魔王さんは頭を下げた
やめてくれよ、こんな俺に頭を下げるなんて
あれ、なんだろう
そんないつものような自虐のはずなのに、なぜか悲しくなってくる
「頭上げてくださいよ。分かりました、任せてください」
涙を浮かべながら言ったせいか、どこか締まらないな
「そうか、ありがとう」
俺の涙につられてか、魔王さんの目から一筋の滴がほほを伝った
「さて、そういえば君には名前がないんだったよね?」
「ええっ!そうだけど」
みると先ほどまで悲しそうにしていた彼女の姿はなく、いつものように笑っている彼女だけがそこにいた
それにしても切り替え早すぎだって
「よしリリム。どうせだ、君がつけてあげなさい」
「私!?じゃあ……」
不意をつかれたせいか、リリムさんは一瞬体をびくつかせると、頭を傾け考え始めた
しかし名前な~
今まで全く意識してなかったけど、そういえば名前無かったんだよな……
そう考えるとなんかぞっとするな
さてさて、リリムさんのネーミングセンスはいかがなものだろうか
そうやって期待していると、答えは出たようだ
「じゃあ『アーテス・ミルヴァ』で」
「その名前、夜叉姫の……」
夜叉姫?
魔王さんはとても驚いた様子で叫んでいた
何事かとみていると、
「っ!!」
突然、胸に熱い痛みを感じた
痛みは胸を中心として四肢へと広がっていく
そして俺の見ていた世界は、光を失っていった
<妖気の増大を確認。許容容量を上げるため、進化を開始……・・成功しました。吸血鬼から吸血姫に進化しました>
<進化に伴い、技能の進化、統合を開始…………・>
<上位技能『死神』と『蛇妃』が統合し、上位技能『降魔』に進化しました。また、『精気吸収』もこれに吸収されました>
<技能『物質操作』と固有技能『物体創生』を統合し、技能『物質創生』に進化しました>
<技能『読心』が上位技能『深層読心』に進化しました>
<耐性『物理攻撃耐性』を獲得しました>
<技能『マナ操作』を獲得しました>
<技能『詠唱破棄』を獲得しました>
<バックアップを作成しますか?>
〖…………はい〗
<【永劫記憶】により、記録、技能、魂への侵食状況が記録されました。これは存在 アーテス・ミルヴァの魂が完全に消滅するまで有効です>
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「ほ、報告いたします。先刻、北の国より龍王に似た妖気が確認されたとの報告がありました」
「それはまことか!」
「は、真実でございます!」
「……地下の骸は確認したか?」
「確認したところ、何の異常もなかったようです」
「と、なるとまずい事態じゃろうな」
「新しい魔王の誕生でしょうか」
「それはまだ気が早いじゃろうが、いずれそうなるやもしれん。兵士には警戒を強化するように、暗部には魔界の調査に行くよう命じよ」
「了解いたしました!」
「…………もし、龍王の子が生まれたとしたのなら、それは世界の終わり、じゃろうな」
伏線の張り方が露骨な人→私だ(゜ω゜)ノ お前だったのか(゜д゜)
小ネタを入れなかった( ・ω・) アマチュア小説家の( ・ω・)
遊び(゜∀゜)(゜∀゜)




