終われない青春
安定の謎サブストーリーです。
私という人間は、果たして存在するのだろうか。
そんな疑問が私の頭をよぎるぐらい、私は酷く追い詰められていた。
この人格も、この思考も、そして古い記憶さえも全てまやかしのように思えてくる。
今さっき、私が作られたかのような、そんな気さえしてくる。
親だってそうだ。
私の両親はいたって普通の夫婦だ。
父はしがないサラリーマン。
母は家事洗濯をこなすただの主婦。
そんなありきたりと辞書で引いたら説明にのってそうなほどに、私の家庭環境は平凡の極みだった。
それなのに、それだというのにあの家庭は、嘘臭い。
まるで誰かに作られたかのような、劇かゲームのようにただそこに配置されただけのように。
そんな表面しかない家庭で、私は今まで育ってきた。
今まで、とは言ったが実際そんなことがあったのかは怪しい。
もうここまでくると、私個人の存在の有無なんてとばして、この世界の存在自体が怪しくなってくる。
そういえばこの間、『世界五分前仮説』というものを授業で習ったか。
これが本当なら、この世界も、私も、あの家族も、5分前に作られたただの偽物なのかもしれない。
そうだ、きっとそうなんだろう。
もしかしたら5分といわず、10秒前にこの世界が誕生したのかもしれない。
そうするとなんだ?
私が先程まで巡らせていた思考も、ただの作り物という結果になってしまう。
そうなるとするなら、笑いものだ。
と、窓を眺めながら黄昏ていると、遠くの方で大きな音が聞こえた。
あそこは確か、ガソリンスタンドがあった場所だ。
火の不始末が原因だろうか?
ともかく、眼下にある校庭を見てみると、速足で校庭を横切る生徒が数名見えた。
まったく、朝も早よからご苦労なことだ。
まあ私もなのだが・・・
さて、長々とこんなことを言うと本当に鬱になってしまいそうだし、最後に疑問を私自身にぶつけてみようではないか。
作り物であろう私に、ぶつけてみようではないか。
「私は、本当に橋谷楼香だろうか?」
気が付くと、閉じられていたはずの教室のドアは開け放たれていた。
そこには、物珍しそうな目でこちらを見る、ひとりの男子生徒が立っていた。




