表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄になれると思いましたか?  作者: 蔵餅
失われし憤り編
41/68

終われない青春

安定の謎サブストーリーです。


 私という人間は、果たして存在するのだろうか。

 そんな疑問が私の頭をよぎるぐらい、私は酷く追い詰められていた。

 この人格も、この思考も、そして古い記憶さえも全てまやかしのように思えてくる。

 今さっき、私が作られたかのような、そんな気さえしてくる。

 親だってそうだ。

 私の両親はいたって普通の夫婦だ。

 父はしがないサラリーマン。

 母は家事洗濯をこなすただの主婦。

 そんなありきたりと辞書で引いたら説明にのってそうなほどに、私の家庭環境は平凡の極みだった。

 それなのに、それだというのにあの家庭は、嘘臭い。

 まるで誰かに作られたかのような、劇かゲームのようにただそこに配置されただけのように。

 そんな表面しかない家庭で、私は今まで育ってきた。

 今まで、とは言ったが実際そんなことがあったのかは怪しい。

 もうここまでくると、私個人の存在の有無なんてとばして、この世界の存在自体が怪しくなってくる。

 そういえばこの間、『世界五分前仮説』というものを授業で習ったか。

 これが本当なら、この世界も、私も、あの家族も、5分前に作られたただの偽物なのかもしれない。

 そうだ、きっとそうなんだろう。

 もしかしたら5分といわず、10秒前にこの世界が誕生したのかもしれない。

 そうするとなんだ?

 私が先程まで巡らせていた思考も、ただの作り物という結果になってしまう。

 そうなるとするなら、笑いものだ。

 と、窓を眺めながら黄昏ていると、遠くの方で大きな音が聞こえた。

 あそこは確か、ガソリンスタンドがあった場所だ。

 火の不始末が原因だろうか?

 ともかく、眼下にある校庭を見てみると、速足で校庭を横切る生徒が数名見えた。

 まったく、朝も早よからご苦労なことだ。

 まあ私もなのだが・・・

 さて、長々とこんなことを言うと本当に鬱になってしまいそうだし、最後に疑問を私自身にぶつけてみようではないか。

 作り物であろう私に、ぶつけてみようではないか。

「私は、本当に橋谷楼香だろうか?」

 気が付くと、閉じられていたはずの教室のドアは開け放たれていた。

 そこには、物珍しそうな目でこちらを見る、ひとりの男子生徒が立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ