三話 本当の別れ
※'16 12/10 言い回しなど変更しました
取り敢えず明日の作戦を確認するとしよう
1、昼までに家に帰れるだろうから例の時間まで家から出ない
2、窓に近づかない
3、部屋からも出ない
この3つを守っていれば大丈夫だろう
この3つを守れていたなら大丈夫だっただろう
明日、4月9日は、俺にとって特に難所の日だった
スマートフォンのアラーム機能のおかげでいつも通り目が覚めた
今日は4月9日
時が進んでいるを実感できるのは案外うれしいことだ
と、ここであるひとつの疑問が思い浮かんだ
もし今日、もしくはこれから死んだとき俺は、いったいいつの時間に生き返るのだろうか
これはとても重要になってくるだろう
昨日かもしくは今日か、それは死んでみないとわからない
まあこれから死ぬ気はないので結構必要のない疑問ではある
そんなことを思っていると突然姉が部屋に入ってきた
「おはよー、さっきさー連絡があってさ、『今日は1-3組は休みです。代わりに今日、大原 優也君の通夜式が18時にあるので全員来るように』って担任の平原先生が言ってたよ」
・・・・・は、はぁ!?
たぶんさっきのが死亡フラグにつながったの、かな?
とりあえずこれで外に出ないといけない状況になってしまった
「はぁ。で、通夜ってどこでやんの?」
「えっと、隣町でやるらしいよ。はいメモ」
そう言って住所の書かれた紙切れを渡された
うちから指定された葬式上までのルートだと、工事現場の近くを3回程通らなくてはいけないルートになってしまう
ああ、フラグってこう言う物なのかななんて思いながら、別ルートを模索してみることにしたが、俺のスマホ君が出してくれたルートはひとつを除いて工事現場の近くを通る道だった
残りのひとつは地球の反対側からいくという、なんともふざけたルートだった
マジで八方塞がりだったから、行ってやろうかとも考えたが、鉄骨の圧死以前に過労死してしまうだろう
となると、やはり休むことが1番得策だろう
俺のかわりに死んでくれた大原くんには悪いが休むとしよう
17時
何故か天童さんが迎えに来た
元々休むつもりだったのだが、姉が先に扉を開け、俺を呼んでしまった
これでもう休むことは出来なくなってしまった
がっくりとうなだれながら大人しく制服に着替え、自転車にまたがった
道は知っていたがどうやら彼女が案内してくれるらしく、俺は背中を追い続けるだけでよかった
それにこの時間なら死亡時刻前につくことができるだろう
そんな浅い考えを浮かべて、俺は彼女を追った
17時27分
通夜が執り行われる式場についた
そして俺の死亡(予想時刻)も少しづつ近づいてきている
しかし早めに来てしまったせいか先生を含め生徒はまだ誰も来てはいなかった
「あれ、ちょっと早めに来すぎちゃったみたい。ゴメンねもうちょっとゆっくりしてたかったでしょ?」
天童さんが謝ってきた
いや、まず来るつもりがなかったから謝らなくても大丈夫だ
まあそんなこと言うわけもなく、適当に返事をした
すると彼女は途端に悲しそうな表情をした
「実はね、大原くんとさ、私同じ中学校だったんだ」
なんと、意外な事実だ
3年間は一緒に過ごした仲間が死んだっていうのは、相当心に来るだろうな
「まあ実際に話したことは余り無かったけど、友達も皆別の高校に行っちゃったから知り合いがいなくて、とても不安だったときに、彼を見つけたんだ」
まあ確かに高校に入りたてときって同じ中学だった奴としかあまりつるまないからな
それは女子も同じだろうから、唯一の心の拠り所が失われたのがとても悲しいんだろう
「とても嬉しかった。一人で、とても寂しくてどうしよう、って思ったときに彼がいてくれた。それが本当に嬉しかった」
何だろう、俺のせいでもあるので、罪悪感がとても否めない
ってかなんだろう、いやな予感がするのは気のせいだろうか
「そして彼と話していたら、私の知らない人、そう貴方が入ってきたの」
彼女の目から数滴、涙が流れ落ちた
「そしたら急に大きな音とか何かが崩れる音がして、それで、急に変な音が後ろでして、後ろを見たら、大原君の頭から血がたくさん流れて、床が赤く染まって」
涙の勢いは止まらずだんだんと彼女の顔を言い方は悪いだろうがぐちゃぐちゃにしていく
「何回も何回も、昨日のことは夢であってほしいって願ったの。でもそんな願い叶わなかった」
彼女の口はどんどん悲しみを吐き出していく
彼女の目からは涙があふれ出ている
そこで運悪く運命の時間となってしまったようだ
式場はとあるビルの近くにある
そのビルが突然崩れ落ちてきた
とっさの判断で彼女を思いっきり突飛ばし、遠くにやった
この判断は自分ながらさすがと言えるだろう
しかし圧死ってこういうことか?
だが、さすがの俺でも前回の失敗を忘れたわけではない
冷静に判断しながら落ちてくるコンクリートのかたまりを避けて行く
そして丁度隙間ができたのでそこに入り込んだ
後は天に祈るのみだ
幸いそれから10秒も経たずに崩れきった
天童さんの悲鳴が聞こえてくるので、彼女は無事なのだろう
これでよかったと思い、画面がかなり悲惨なことになっているスマホで時間を確認してみると
意外にもまだ37分にはなっていなかった
いや、今、この瞬間に17時37分
俺の死亡時間となってしまった
すると夕焼けに染まった空が急に暗くなった
否、急に空から鉄骨が降ってきた
まず右半身が潰された
鉄骨の重さ+落下の勢いの力があれば人の半身ぐらいは持っていけるようだ
右目の視界は閉ざされ、もう痛みさえも麻痺していた
次に半分しかない腹に鉄骨が突き刺さった
肉がえぐられ、血がアスファルトに流れて行く
最後に鉄骨が頭を押し潰した
痛みは完全に麻痺していて、と言うか本当に一瞬の出来事で痛みを感じる暇さえなかったのかもしれない
つぶれた頭には甲高い少女の悲鳴が最後に記憶されていただろう
<確認 スキル『過去移動』を使用します>
二度と聞くことはないと思っていた声が聞こえた
<魂の移動······成功しました。続いて記憶の移植······成功しました>
ああ、また甦るのか
そんなことを思いながら、また俺の意識は暗闇に呑まれていった
やっと物語を一歩進めることができた~
一話一話を考えるのがとってもしんどいです
毎日投稿している人を私は本当に尊敬しています