18話 愛国者達的な・・・
・・・・・まぶしい
目にちらちらと入り込む日差しが、俺の意識を覚醒させた
最初に目に入ったのは、見知らぬ天井だった
古臭い、苔が生えまくった天井が
「あ、気づいたんですね」
まだ曖昧な意識のなかで、耳元に聞こえたささやきがゆっくりと溶けていくのを感じた
とても優しいささやきだった
そうまるで天使のような・・・
「気づいたの?それなら数発ぐらい殴っといてくれる?全力で」
悪魔が来た
「そんな。酷いことできませんよ」
そうやって笑いながらトサチスさんは俺の頭を優しく撫でてくれた
「そう。・・・そういえば瞬。魔王様が呼んでたわよ?」
「・・・え?」
長いこと眠っていたのか、しゃがれた声が俺の口から漏れ出た
でもなんで魔王が俺に?
「さっさと行ってきなさい。『救国の英雄』さん」
そう言うとガネーラは、ポーションを俺の口に押し込みその場を去っていった
「立てますか?」
「ん、大丈夫。しっかし、無理矢理飲ませるもんだっけ?あれって」
「まあガネーラさんですから」
その言葉一つで理解できてしまうから怖いわ
「そういえばさっきガネーラが言ってた『救国の英雄』って・・・なんだ?」
「貴方の事ですよ?瞬さん」
「いや、俺何もしてないんだけど・・・」
「そんなことないですよ。だって・・・・・」
そこから先を聞いたとき、自然と体は動いていた
先ほどまで寝ていたとは思えないような速さで部屋を飛び出すと、遠くにあの城が見えた
「一年のブランクか・・・まあ何とかなるだろう」
そのまま俺は走り出した
息を切らしながら、足を痺れさせながら
そして一歩一歩を踏みしめながら、走らなければいけなかった
『だって、魔王様が「勇者殿が我を救った」っておっしゃってましたから』
違う、俺じゃない
俺じゃないとするならばたぶん・・・
親友が、あいつがやったんだろう
なんでか、なんてことは考えなかった
ただがむしゃらに走り続けることが、今の俺にできる最善の行動だったからだろう
考えるのは、後だっていいのだから
「来たか。勇者殿」
彼女は悠然とした態度で俺を出迎えてくれた
周りには警備らしき魔人が数百と並んでいる
よく見るとその列の中には、あの少女の姿があった
けど、そんなことはどうでもいい
「どういう、ことですか」
「・・・・・ちょっと裏で話そうか」
彼女は手に持っていた剣を配下らしき男に手渡し、俺の腕をつかむようにして、個室へと引っ張り込んだ
「さて、まず何から話そうか?」
先ほどの表情とはうって変わって、今度は真剣にな顔つきとなった
「とりあえずなんで俺があなたを救ったことになっているのか、聞かせてもらっていいですか?」
「それは彼の、いや彼女の願いだよ」
「彼女って・・・」
「やっぱり君も知っているようだね。そう、あの吸血鬼君だ」
やっぱりお前か真司!
「彼女の願いは『あの勇者に自分が授与されるであろう表彰、そして国を救ったという事象を擦り付けてくれ』だそうだ」
「擦り付けるって・・・で、あいつは?」
「昨日、あのリリムとかいう女性の国に向かったよ」
「なら今から追いかければ間に合、」
「無理だよ」
俺の言葉を遮り、魔王様はそうつぶやいた
「彼女の国に人間は立ち入ることができない。そういう決まりなんだ」
「そんな・・・」
でも、なんであいつは・・・
「ああ、それと。一つ伝言を頼まれていたんだった」
「伝言、ですか?」
「えっと何だったかな・・・確か『あ・い・う・え・を』だ」
「・・・・・・・今なんて」
「え?だから、『あ・い・う・え・を』だって」
その言葉を聞いたとき、何かに憑かれたかのように全身から力が抜けた
昔、真司と合言葉を決めたことがあった
「ありがとう」だとか「あそぼう」だとか
そんな他愛もない子供の遊びだった
しかし、その中でただ一つだけ忌むべき言葉があったんだ
絶対に使われることがないと思っていた、誤りであり過ちであるその言葉
それが「あ・い・う・え・を」
意味は、絶交・・・・・
だんだんと視界は涙でにじんでいく
呼吸も荒くなり、心臓の脈さえ不安定になってきた
あの夢はこのことを予知していたのだろうか
そう思うと、とても怖くなってくる
「意味は我にはわからない。だけどその様子を見る限り、とても大きな爆弾を落としていったみたいね。彼女は」
俺の心情を察してくれたのか、苦しむ俺を横目に、彼女は部屋を出ていった
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{そういえば、あの『あ・い・う・え・お』って結局なんなんだ?}
ああ、あれか
あれはな大体中1くらいの時に俺と瞬で考えた合言葉だ
{で、意味は?}
また会おう
{・・・・・それなら『ら・り・る・れ・ろ』でよかったんじゃないか?}
いや、あいつメタル〇アソリッド一作もやったことないらしいんだよ
{なるほどな}
さー次回の章の内容どうしようか(笑)