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英雄になれると思いましたか?  作者: 蔵餅
堕落した戦姫編
19/68

4話 勇者様は刀がお好き!

 ・・・窓の外は今までにないぐらい騒がしい

 今日はとある人物の出陣式だそうだ

 窓の外を除いてみると、どこもかしこもプラネリの旗を飾っていて外に出ている人たちもどこかそわそわしている

 俺はゆっくりとベットから起きて、朝食の支度をする

 パン(のようなもの)を咥えつつ、鎧立てにかかっている白銀の鎧を身にまとう

 パンを食べきったところで、見計らったように外から扉を叩かれた

「瞬。出発の準備はもう済ませた?」

 扉の向こうから、女性の声が聞こえる

「ああ、ガネーラ。もう鎧は着込んだよ」

 そう俺は答えると、ドアを開けた

 外には、先ほどの声の主がいた

 その女性は赤いローブをまとい、魔法使いを彷彿とさせる帽子と杖を持っていた

 彼女はガネーラ

 俺のパーティーの魔術師ウィザード

「そう。なら早く来て。みんな待ってるからね」

 そう言って、ガネーラは少し怒りながら階段を降りて行った

「・・・じゃあ行くとするか」

 そう呟きながらドアを閉め、彼女を追うように階段を降りて行った・・・




 約一年前

 俺はこの地に舞いおりた

 どうやら時空の渦とやらに巻き込まれて、この世界に転送されたらしい

 そこからとあるスキルのおかげで、俺は勇者と呼ばれるまで成長した

 そして今日、隣国であるクラテル王国に出陣することになっている

 ガネーラによると、クラテル王国は数年前、急激な黒マナの増加で魔物が急増して滅亡したらしい

 そして最近になって黒マナが、このプラネリ国付近にも流れ込んできてるらしい

 そのことからこの国の貴族たちが、黒マナの発生源であり、クラテル王国を治めていた魔王クラトキの討伐を強制してきた

 そして、現在に至る・・・




 とても盛大なパレードに、正直うんざりしていた

 ただ馬に乗り、街の人たちに手を降るだけの簡単な仕事

 ただそう思っていた

 そんな中、どこか自分の友人に似た人物が目に止まった

 とある事件(・・・・・)に巻き込まれ3、いや4年前に死んでしまった、中学生時代の親友

 そいつにとても良く似ていた

 その人物を見ていると、急に民衆がどよめき始めていた

 何事かと気を取り戻し、周囲を見渡してみるが特に問題はなかった

 そうやって周りを見ていると、ポトリと手に小さなしずくが落ちた

 ・・・いつの間にか俺は泣いていたらしい

「ちょっと大丈夫?」

 ガネーラが心配したのか、少し不安そうに声をかけてきた

「ああ、大丈夫大丈夫。ちょっとな」

 涙を拭いながら、ガネーラに向かって笑顔を作る

 すると安心したように口を固く閉じた

 俺も再び手を降りながら、どんどん門へと向かう

 俺の異変がなかったかのように、再び歓声が飛び交い始めた

 そんな仕事を20分ほど行い、やっと門に到着した

「「行ってらっしゃいませ!」」

 門の両側にいた番たちがそう声をあげると同時に、重たい音を立てて門がゆっくりと開いていく

 そして見えてきた景色は、一面に広がる平原だった

 一年前に俺が降り立った平原だ

 門が完全に開くと、また馬が歩き出した

 全員が門から出るとまた重たい音を立てて門が閉まっていく

 結局、門が完全に閉まりきるまで住民の歓声は止まなかった

 そして馬はまた歩き出した

 目的の地クラテルへと・・・





 プラネリから出発して大体15分が過ぎたころ、瞬はその光景に少しばかり怯えていた

 勇者なのに、その光景を見ることを拒んでいた

 その光景は、地獄絵図という言葉を教えてくれるようなとても悲惨な光景だった

 死体の壁が高くつまれていて、いくつかからゆっくりと血が滴ってきている

 立ちこめる悪臭に思わず嗚咽した

 そんな瞬の様子を見て、同じ仲間であるタライトは、

「おい、あまりこれは見るな。勇者って言ったってまだひよっこの冒険者なんだから」

 そう声をかけてくれた

 ・・・どうやら、この国では1年足らずの冒険者はまだまだひよっこらしい

 俺の仲間は全員が手練れをすっ飛ばした最強と言われるほどの実力者で、一人を除いて長い間冒険者も続けているらしい

 とりあえず目を瞑り、タライトに背中を押されながらそこを進んで行った

 ・・・途中、仲間の一人が鬱陶しいようにため息をしたのは聞こえなかったことにするとしよう




 そうやって進んでいくと、タライトが足を止めた

 瞬はそれを疑問に思い、目を塞いでいた手を除けてみると、目の前には錆びついた大きな門があった

 それは、プラネリの門がおもちゃに見えるほどの大きさだった

「・・・これがクラテル王国の門?」

「ああ。しかしここまで錆びついてるとは思わなかったな。昔はとても立派な物だったんだが・・・」

 瞬の疑問に、タライトは驚いたような表情で答えてくれた

 瞬は物珍しそうに門に手をあて、軽く押してみたが、当たり前のようにびくともしなかった

「これって開くの?」

 さすがに心配になったので聞いてみると、

「大丈夫。ここの門は魔力を込めて動くものだから、込めるための装置が残っていれば動くわよ」

 ガネーラがそう答えてくれた

 そう言って、門へ近づいて行った

「・・・!?無い、無い無い無い!!!」

 とても慌てたように早口になり、馬をあっちへこっちへ走らせていく

 しかし彼女が探しているものは見つからなかったようで、絶望を露わにしたような顔でもどってきた

「どうやらこの数年で装置がどこかへ行ってしまったらしいわ・・・」

「えっとつまり?」

「この門を人力で開けるしかないってことよ・・・」

 その衝撃の事実に、パーティー全員が軽く固まった

 その後、全員が入るのにものすごい時間がかかったことは言うまでもない・・・




「うわっ・・・やっぱり中もこんな感じなんだな」

 中に入って5分

 俺は街の中にある腐った死体に少し吐き気を覚えていた

「まあ、かなり暴動が起きたりもしたらしいからな。死体なんてこの先でもゴロゴロ転がってるぞ?」

 タライトがかなり余計な情報を教えてくれた

 そんなタライトに恨みの目を向けつつ、できるだけ下を見ないように進んでいく

 そうやって進んでいると、崩れかけのビルらしき建物になにか動く影が見えた

 一応戦闘準備をして、一人でそこへゆっくり近づくとそこには腕がとれかけ骨が露出し、頭皮も削れ骨が見えた人、俗にいうゾンビのような生物がいた

「えっと、ハロー?」

 西洋の怪物だったはずなので、一応英語で話しかけてみる

 しかし、帰ってきたのは英語なんかではなく重い一撃だった

 ゾンビはどこからか取り出した大きな槌で、俺を殴ってきた

 幸い、鎧を来ていたおかげでダメージは軽かった

 反撃代わりに俺は持っていた剣で開いた脇腹を切りつけた

 ゾンビは苦しそうに後ろへよろめき、そのまま走り去ってしまった

「おい、どうかしたのか?」

 ゾンビが走り去った後、タライトが心配そうによってきてくれた

「大丈夫。軽く殴られただけだから」

 心配をさせないようにして、袋にしまっていた緑色をした液体の入った小びんを取り出す

 そしてふたを開け、中の液体を全部飲み干した

 直後、体に活力が戻った

 実名は違うらしいのだが、この液体を俺は回復薬ポーションと呼んでいる

 軽い怪我ならこれを飲めば治るし、魔力がなくなったときもこれで解決する

「よし!じゃあいこう」

 そういって、また進みだした

 その頃、この街で謎の魔獣が暴れていたらしい・・・




 後は、魔王がいるという城に乗り込むだけのはずだった

 そこへ行く途中にとある集落があったので其処によってみることになった

 その理由は、とある疑問からだった

 その集落には結構しっかりとした門があった

 しかしそこには居るはずべき存在である門番がいなかった

 しかも門が開け放たれた状態で、だ

 さすがに異常だとタライトは判断し、この集落の人の安否を確認することになった

 中に入ってみると、そこには誰もいなかった

 家は残されたまま人だけが消え失せたように

 ここまで綺麗な状態だと、魔物の大群がせめてきたわけではないだろう

 全員で手分けして探していると、仲間の一人が人を発見したらしい

 そいつの話を聞くと、何かの小屋に人が10人程倒れていたらしい

 今は意識を取り戻させようと必死になっているとか・・・

 とりあえずそこに向かうことにした 




「おい、大丈夫かおっさん?」

 言われていた小屋についてみると、タライトが倒れている男性の胸ぐらをつかんで安否を確認していた

 その衝撃で目が覚めたようで、その男性は大きな体をゆっくりと持ち上げ、寝ぼけたようにこちらに質問してきた

「おぉう、お前らは誰だ?」

「僕らはプラネリ王国から来た者です。いったい何があったんですか?」

 俺がそう答えたとたん、意識が覚醒したばかりでどこか虚ろになっていた目が急に大きく開かれた

「プラネリ・・・そうか。で、何しに来た。何も用がないならさっさと帰れ!!」

 この小屋がびりびりと震えるような大きな声で怒鳴られた

 その威圧感に俺は少しひるんだ

 周りの仲間たちも後ずさりしている

「どうしたんですふぁリーダー?そんな大声出して」

「ううっ、頭が痛いです~」

「・・・そうか奴に、か。儂ももう年じゃのう」

 その大きな声を聞いてか、周りで倒れていた人たちも続々と目覚め始めていた

「おう、プラネリのやつらが俺らに用があるってよ」

「「「「「!!!!!」」」」」

 リーダーと呼ばれた最初に起きた男性がそう呼びかけると、全員が敵意をむき出しにしてこちらをにらんできた

「何の用ですか?貴方たちお坊ちゃまたちにこんな危険な場所は似合いませんよ?」

 10歳ぐらいだろうか、それぐらいの伸長をした少年が嫌みったらしく用件を聞いてきた

 そういえばタライトに、「ここの人たちはとある件のせいで、プラネリ(うち)を物凄く嫌っているんだ」って出発前に言われたような・・・

 あれ?もしかして俺余計なことしちゃった?

 救いの手を求めて後ろを振り返ってみると、仲間が全員そっぽを向いてまるで関係ないアピールをしていた

 ちょっ、お前らふざけんなぁ!!

 そんな心の中の怒りは当たり前のように誰にも届かなかった




 とりあえず一通りの事情を説明して、自分が彼らを助けに来たことを説明すると、

「で、もしお前らが退治したら俺らはどうするんだ?このまま野垂れ死ねばいいのか?」

 そんな疑問が飛んできた

「いえ、一応貴族(うえ)の判断では一時的にプラネリに引き取って、その後各地に散らばっていってもらう形がいいのですが・・・」

 その疑問に対し、王に伝えられたように条件を提示していった

 そうやって伝えていると、

「無理だ。俺たちは断固ここを離れる気はない。それにお前ごときが魔王様を倒せるとでも?なめるなよ餓鬼。英雄を気取りたいならほかでやりな」

 ・・・すっごい剣幕で追い返されそうになった

 その言葉が俺に対しての侮辱(あながち間違ってないけど・・・)に聞こえたようで、仲間の一人であるパララが、

「何を無礼なことを言っている!!この方は勇者だぞ!?今まで我慢していたがもう許せん、今すぐ切り殺してやる!!!」

 そういって、腰につけている剣に手をかけた

 こいつは、若き天才と呼ばれる実力者だ

 その呼び名の通り、17歳という若さで最強の騎士ナイトと呼ばれるほど

 しかも、すっごいイケメンだ

 炎のようにゆらゆらと揺れる紅色の髪と夜空に浮かんでいる月のようにうっすらと輝く金色の目、そして甘いマスク

 これで性格がよければ良かっただろう

 ただ、実年齢に反比例するかのように精神年齢は幼く、全くもてなかったらしい

 正直この短所がなかったらそのイケメンフェイスを腫れあがるまで殴っていただろう

 そしてなぜか俺に対して神と呼ばれるまでの信仰心がある

 そのせいで彼はトラブルを起こしまくっている

 ほんとにどうしてこうなったんだか・・・

 そんなことはともかく、彼は手にかけた剣を抜きリーダーを切りつけようとした

 刹那、白い閃光がはしった

 驚いて俺は目を瞑った

 カランと何か固いものが落ちる音が聞こえ、ゆっくりと目を開けてみると案の定パララが抜いた剣の半分あたりから斜めにぽっきりと折れていた

 折れた剣先は床に突き刺さっている

 おそらくパララの剣を折ったのは白髪のじいさんだろう

 いつ取り出したのか、おじいさんの腕には日本刀が握られていたからだ

 うん、正直なんだ・・・

 物凄くテンションが上がった

「おぬし何を、「すげぇーーーーーーー!!!!」む!?」

 おじいさんが何かを言う前に俺はおじいさんのそばに寄り、握られている刀をまじまじと見ていた

 しかしこんな異世界で日本刀に出会うなんて思ってもいなかった

 ああそうだよこの美しい曲線、鈍く光り輝くこの鋼の質感、どれをとっても美しいよな~

 プラネリには剣はあっても刀はなかったからな~

 しかも日本刀はいつ見ても美しい、本当に美しむぎゃ

「痛い痛い!!何すんだよ!!ガネーラ!!」

 おじいさんが持っている刀を間近で見ながらその美しさに浸っていると、ガネーシャに耳を思いっきり引っ張られた

「それはこっちのセリフだ!何やってるんだお前は・・・」

「俺はただあの日本刀が美しすぎてだな・・・」

「言い訳はいいからさっさと話し合いを終わらせろ。あとパララは謝罪!!」

「は、はいぃ!す、すいませんでしたぁ。ついかっとなって・・・」

 そういってパララは深く頭を下げた

 ついでに俺もガネーラに頭をつかまれて無理矢理下げさせられた

 今日、俺は女性ガネーラを怒らしてはいけないと心に決めた・・・




 それから2時間

 長い話し合いの末、彼らの願いを可能な限り叶えるというなら自分たちの要件を吞むといった形で契約?が成立した

 その後、日が変わるまで集落の人たちとリーダーであるサラトさんが提案した俺たちの歓迎会を楽しんだ

 タライトは早速サラトさんたちと飲み比べをはじめ、パララは集落の女性をナンパしている

 逆にガネーラは集落の野郎どもにナンパされていた。全部断ってはいたけど

 今更ではあるがガネーラはとても美人だ

 少し青がかった腰まで伸びた黒髪に、宝石のように透き通った碧眼

 ど真ん中です本当にありがとうございます

 彼女がいなかったら確実に惚れていた

 あれ?言ってなかったっけ?

 俺には2年前から付き合っている彼女がいた

 それがかわいくてかわいくて・・・

 だから再び彼女には感謝した

 ・・・ただ、まだ俺のことを愛してくれているのだろうか

 たまにそんな疑いの心が芽生えるときがある

 それでもまあ、俺は信じるだけだろう

 そう思いながら俺は白髪のじいさんと刀のことについて夜が明けるまで語り明かした





 頭が痛いですはい

 調子に乗って飲みすぎた・・・

 今は作戦会議みたいなのをするために昨日争った小屋に集まっている

「まず、一人倒してほしい魔人がいるんです」

 どうやらその内容は昨日言っていた願いの一つらしい

「魔人、ですか?」

「はい。いや、魔人というよりあいつは化け物です。あんな奴はみたことがない・・・」

 そう言っているサラトさんの体は小刻みに震え、顔は青ざめている

「奴は儂でも倒せなかった。ほんとに化け物じゃよ」

「えっ!?それ本当ですか!!」

 バルト(白髪のおじいさん)が倒せなかったことを知り、パーティーの中で彼の実力を一番知っているであろうパララが驚きの声を上げた

「それと、そいつに僕たちの仲間が一人連れ去られたんですよ。名前はリリムさんって言って僕より背が高い女性です。彼女も助け出してもらっていいですか?」

 この声の主はタイトさんといって、美精族エルフの族長らしい

 とても臆病らしく、俺たちに話しかけている最中、ずっと体を震わせていた

「えっと、リリムさんですね。・・・わかりました。行ってきます」

 そういいながら俺は腰を上げた

 それを合図に仲間も立ち上がる

 パララだけは怯えて立ち上がらず、ガネーラに思いっきり叩かれてたけど・・・

 そして、かなり重い足取りで集落を後にしたのだった



ご指摘で、『悪意ハイド』の⦅⦆がスマホでは見れないと言われたので、⦅⦆から{}に変更しました


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