魔王目録 『怠惰』の章
意味不明だと思いますが、物語として重要な部分ではあるので一応・・・
彼女は聖騎士団の団長だった
彼女は強く、逞しく、誰からも尊敬されていた
いや、尊敬されていると思っていた
ある日、王に呼ばれた
どうやら近々戦をするらしい
彼女は王に期待されてることもあって、とても張り切っていた
しかし、それは彼女の思い込みであったことを、深く知ることになる・・・・・
それから3日後
彼女たちの騎士団はとある平野に配置についた
しかしそこには敵の影もなく、動物の一匹さえ居なかった
違和感を感じた副団長が帰還を提案したが、彼女は期待に応えると言い張り、帰還命令を出さなかった
そのまま3時間が過ぎた
さすがにおかしいと感じた彼女は、王国に連絡することにした
そうして、連絡用の水晶を取り出したその時、平野の先にある丘で、大きな爆発が起きた
何事かと振り向いてみるとそこには自国の旗を持った30万を超える軍勢が、砲撃を開始していた
砲弾は自分たちを襲っている
全員が裏切られてことを理解し、すぐさま撤退しようとした
彼女を残して・・・・・
その後、何とか生き残り彼女は国から遠く離れた洞窟へと身を移した
結局あの後、彼らがどうなかったのかを知るすべはなかった
どちらにせよ、彼らへの興味なんかはなかった
そのまま彼女は、ゆっくりと心を閉ざしていった
それから約30年
彼女は洞窟内で一生を過ごした
誰にも見守られず、一人でひっそりと死んでいくはずだった
しかし、彼女は不運だった
彼女は死ねなかった
いつしか手に入れた上位技能『憂鬱』の効果によって死ぬことが許されなかった
しかし彼女は絶望しなかった
どうせ死んだって意味がない
なら今この瞬間を堕落していきる
そう誓ったのだった
最近、外が騒がしくなってきた
どうやらこの近くで戦が起きているらしい
彼女のからだは『憂鬱』により半魔人化していて、思うように動かせなくなっていた
それでもなんとか洞窟から這い上がり、外へ出てみるとそこにはなにもなかった
ただ一人、少女が立ち尽くしているだけだった
すると頭のなかに急に
<対象 ルスス·バリウスの魔王への進化を開始········成功しました>
美しい女性の声が聞こえてきた
(魔王への、進化?)
そう思いながら見ていると、
<上位技能『憂鬱』が、罪『怠惰』へと進化しました。此より魔王への進化を開始します>
そう聞こえると突如人の部分である左半身への痛みと、眠気が襲ってきた
その痛みが全身を駆け巡る前に、彼女は眠りについた
深い闇のなかで彼女はあの戦のことを思い出していた
あの戦がなかったら、彼女はこうはなれなかっただろう
彼女の名はクラトキ·ラス
4人目にして『怠惰』の魔王となった
—―――—――アーテス・ミルヴァ著 『魔王目録』より抜粋