2 Glory days
セノ、ユウ、エリスの3人は、スペード王国エース村を出発し、エースとセカンズの村の間に位置する町、ユルンガへと向かう。
「エリス、セカンズの村まではどのくらいかかるんだ?」
「ここからですと・・・大体3日ほどでしょうか」
「3日!?そんなに遠いのかよ・・・」
「セノ、旅に出ると言い出したのは君なんだから、もう少ししっかりしてくれよ」
「へいへい」
―スペード王国ユルンガ-
「ここがユルンガかぁ、俺、自分の村以外の町に来るの初めてだよ」
「僕もだよ」
「ユルンガは商業の町と呼ばれていて、エースの人もセカンズの人も多く訪れるのですよ」
「エリスは来たことあるのかい?」
「ええ、昔お父様とご一緒に」
セノとユウの2人は初めて見る光景に目を奪われていた。エース村の建造物とは少し建築様式が異なるようだ。すると、
カラーン♪ カラーン♪
「何の音だ?」
「時計台の鐘の音よ。この鐘が鳴ると皆仕事をやめて家に帰るの」
エリスの言う通り、商人たちが次々と店を閉めていく。
「一先ず宿屋を探しましょ」
「そうだな」
(えっと、1番近い宿は・・・ん?)
「おーい、ユウー、そんなところで何やってるんだよー」
「え!あ!ごめーん、今行くー」
「全く、迷子になるなよな」
「ごめん、ごめん(誰かに見られていたような・・・)」
―宿舎「安らぎの家」―
「いらっしゃーい」
「えっと、1泊お願いしたいのですが」
「承りました、何部屋ご利用で?」
「3人入れるなら1部屋でもOKっすよ!」
<<バッコーン!
ユウのゲンコツがセノに入る
「いって!何すんだよユウ!」
「一体何を考えてるんだ君は!女の子が1人いるんだぞ!」
「それがどうしたって言うんだよ、1部屋の方が安いじゃんか」
「そういう問題じゃなくて・・・」
流石にセノも呆れてしまったようだ。
「え、えっと2部屋でお願いします」
「は、はい承りました・・・」
支払いを終えた3人はそれぞれ部屋に向かう。
「じゃあ、私ここだから」
「おう!またな」
「おやすみなさい、エリス」
「おやすみ、セノ、ユウ」
《ガチャン
「俺たちの部屋はあっちだな」
「うん」
「そういえばユウ、何んでさっき立ち止まってたんだ?」
「あ、えっと・・・それはねぇ」
(誰かに見られていた気がするなんて言ったら、またセノに笑われるんだろうな・・・)
「ううん、何でもないよ」
「そっか、何かあったら言ってくれよな」
そう言っている間に部屋に辿り着いた。荷物を下ろし、ユウは明日の荷造り、セノはベッドにダイブする。
「ふかふかぁ・・・おやすみぃ・・・zzz」
「コラッ、セノ、寝るな!」
「えー・・・なんだよ・・・」
すると、ユウは歴史書を取り出し、セノの前に置いた。
「うげっ、お前ここにまで歴史書持ってきたのかよ」
「当然だよ、学校に行かない分、自力で勉強しないと」
「そうかそうか、真面目君はエライエライ、精々頑張ってくださいナ」
「勿論、君も勉強してもらうからね」
「なんですと!」
「奥儀は使えても、僕より成績は下なんだから」
「別にお前の下でも何でもいいよ」
「ダメだ!ちゃんと勉強しろ!」
「お前は俺の親かっ!」
(全く、セノはいつもこの調子なんだがら)
ユウは呆れはしたが、村を抜け出しても、いつものようにセノとこうやって言い合えるのが嬉しかった。けれど、こんな日常が突如崩れるなんて、この時の2人は思ってもいなかった。
「じゃあ始めるよ」
「へいへい・・・」
「この世界には古くから4つの異なる種族が共存して生活していた。しかし、ある日を境に世界は急変した。異種族同士の戦争だ」
「どうして戦争が起こったんだ?」
「うーん、この本には書いてないね・・・」
戦場は村や町にも広がり、商人や農人も争いに参戦。村は炎に包まれ、作物は育たず、多くの村人が餓死していった。どの人種も戦力を失い始めたころには、既に地獄と呼べる状態にまでなっていた。けれど、ある1人の人間が立ち上がり、人々を地獄から救い上げようと行動を起こした。その人間は神の力を使い、種族を4つの国に分け、それぞれに階級を設けた。神の力は絶大であった。終いには、4つの国を1つに統一し、その人間が国のトップに君臨したのだ。
その人間は神の力を“トレジャートランプ”と呼んだ。
「こんなの1000年前の伝説だろ、どうして勉強しなくちゃならないんだ?」
「僕に聞かれても困るよ・・・でも学校で扱うのだから何かしら意味があるのかもしれない」
「そんなものかね・・・」
≪すると突然、凄まじい爆発音が鳴り響いた≫
「なな、何の音だ?」
「奥の部屋からだ!」
セノとユウは急いで音のした方角へ向かう。
「ここは・・・!!」
「エリスの部屋だ・・・」
「まさか・・・!」
(嫌な予感がする)
「エリスっ!!」
セノが呼びかけるが、何の反応もない。部屋に入ってみると壁に大きな穴があけられていた。
「エリスが・・・連れ去られた・・・」
「くそっ!」
セノは急いで宿を飛び出し辺りを見渡す。すると黒い影が遠ざかるのが見えた。
「あれだっ!」
ユウは待てと言いたかったが、その前にセノは走り出していた。
(僕の気のせいでは無かった・・・セノにちゃんと話していれば・・・)
ユウもセノの後を追いかける。
ユウとセノの距離がだんだんと遠ざかっていく。
(待ってくれ、セノ・・・)
そう思ってもセノは振り返ってくれない。絶対セノに追いつかなければ。そうしないと、なんだかこのまま2度と会えない気が・・・。
(・・・一体僕は何を考えているんだ!)
ユウも必死に走る。けれど、ユウの考えていたことは現実となってしまった。
「そんな・・・嘘だ・・・」
それは目を瞑ったエリスと、血塗れのセノが、黒い二人組に連れ去られる姿であった。




