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03

◇◇◇◇◇◆◆◆◆◆◇◇◇◇◇



それは、初等部最後の年。

ジリジリとした熱が照りつける、とある夏の日。


授業が終わり、下校時刻となった直後。

ケルナはアリオーネの取り巻き達に囲まれた。


「アリオーネがあなたを呼んでいるの。ついてきて。」


(またか……)


クラスの誰もが、関係ないていを装うのはいつものこと。

しかも、ついてきてと言うが、こう囲まれては逃場も無く強制でしかない。


(今日は何をされるんだろう。早く終わればいいな。)


魔法が使えない。話せない。それだけでいじめられる自分。

なんで苛められるのか正直不思議で仕方ない。

人と違うのなんてそこだけだ。

話せなくても、身ぶり手振りで。

文字を覚えてからは、書けば伝達もスムーズになった。


でも、当たり前に出来る者達にとってはやはり異質なのだろう。

だからこんなことになっているわけだが。


「来たわね」


裏手に絶壁を持つ、薄暗い校舎裏。

彼女に目をつけられる前は、クラスに馴染めてるとは言えないが、ここまで浮くようなことはなかった。


次第に出来なくなる、「おはよう」や「宿題やった?」などの何気ない会話。少しずつ始まる嫌がらせ。無いものとして扱われる自分。

正直落ち込まないわけではない。

けれど、彼女の家の話を聞けば仕方ないとも思える。

家の考え方に彼女が疑問を持たないかぎり、訂正できるわけがないのだ。

そして、一定時間外から隔離されてしまうこの施設の中で、彼女をやり過ごすのは無理だと、抵抗するだけ酷くなるのだと学んだのだ。


やり過ごす代わりに決めたのは、いくら酷い目に合わされても「屈してやらない」その1つだけだった。

いくら痛め付けられようとそれは上部うわべの自分なのだ。

ただそれだけ。

離れていく人間は、自分への関心などその程度なのだ。

いちいち気にして心を痛めるより、やりたいことを多いに楽しんだほうが良い。


それでも、嫌がらせはなるべくなら穏便なものが良いが……

今日は確実にハズレだろう。


何故なら、自分を呼び出した時、いつも苦々しそうな顔で睨み付けてくる彼女が、すっきりとした晴れやかな顔をしているのだ。

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