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01

 柔らかな陽光が降り注ぐ午後一番。

 フワフワとした綿雲がのんびりと空を流れ、形を変えていく。


 (ただでさえ眠いのに………)


 「アフッ」とあくびを噛み殺しながら少女は窓の外をぼんやりと眺めた。退屈なのだ。かといって、今座っている場所から動くわけにも行かない。なぜなら、今少女は学校の授業を受けている最中だからだ。



 「……魔法とは、魔力を言葉に込めて発動した力のことを指し………」



 カツカツと音がするので、教師が黒板に何か書いているのだろう……。

 しかし、その言葉は適当に聞き流しても問題はないものだった。すでに初等部で習った一般常識とされていることだ。



 (みんな真面目よねーー)



 教室の中で彼女のように退屈そうにしているものはひとりもいないのだ。思っても顔に出さないだけかもしれないが、「よくやる」と少女は思う。

 何事も基本が大事なのは分かる。分かるが、こちらの言い分としては、「そんなもの午前中だけで十分だろう!」というものだ。中等部に上がって初めての授業が、こんな授業ばかりなのはどういうわけなのか。


 暑くもなく寒くもない。ポカポカとした陽気と心地好い風と合いまり、眠りを誘う呪文でしかない。


「……魔術とは、魔法を発動する課程のことを指します。それらは【詠唱】と【方陣】の大きく2つに分類され………」


常識と言えば…

目の前の光景もそうだ。


ヒラヒラ、ヒラヒラ、揺れるカーテンの隙間から、光の花弁や花、葉が舞い込む。

青いのはラフィモネ、黄色はデポポ、薄紫はラクサの花。

生まれたばかりの双葉に、瑞瑞しく生命力溢れる葉。


色とりどりの光が室内に吹き込みあふれる様は幻想的であるのに対し、室内の誰もがまるで気に留める様子は無かった。


それが「当たり前」だから……

少女は手のひらを上に向けて、そっと(フイラと呼ばれる)光を受け止めた。

それは肌に触れた瞬間みるみる雪のように空気に溶けて消えていく。


この光り達(フイラ)は儚くもある。

遠くから運ばれてくるものもあるのに、触れることが出来るのは一瞬。

地に付いたら空気に溶けて消えてしまう。

それは触れることができないのと同義で……。

だから誰もが興味を示さない。

存在しないものとして扱う。


(確かに存在してるものなのにね)


「……召喚とは魔術により、幻獣や魔獣を呼び出す事を主に指し、契約とは……」


室内へと視線を戻せば、教師はまだ初級の内容を説明している。

中等部最初の授業。しかも中等部から受けることの出来る召喚科だったわけだが、これではあまりにお粗末だ。

1限目の終了まで後10分。

召喚科の初回だけ2限続けて行われるので、次が本番と言えば本番なのだが。


(実践までいけるの?これ……)

この教師、少し不安だ。


アフッと再び出そうになる欠伸を噛み殺す。

少女はウツラウツラと思考が微睡んでゆくのを感じた。


(後10分だし。まぁいっか。)


どうにかなるだろうと、少女は一眠りすることに決めた。

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