晩秋の事
まだ少し早いかな
葉を落とした枝に垂れ下っていた、赤い瑪瑙のように熟しきった柿の実が鳥に啄まれぽとりと落ちた
地上に積もるかつては赤々と燃えていた葉の上には、落ちた柿の実が潰れ、真赤な熔岩のような果肉を覗かせている
雲母のような霜が降り、輝く赤い落葉にてらてらと光る果肉が生々しい
天は高く蒼々と雲一つとして見えず、寒風吹き、野を焼く煙の匂いを漂わしている
稲田の稲孫は、萎びた葉に玻璃片の如き霜を纏い朝日に輝く
身を裂くような凍える大気は鋭い吹毛剣の如し
十の指が凍え、頬は冷たい絹の風に撫ぜられた