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夢を見る
私も、寝るのが大好きです。
午前8時、長尾優衣は起床する。あくびをして眠そうにドアを開けると、足元に朝食が置いてある。それを机に持って行って食べ、残った皿をドアの向こうに置いた。そして疎ましそうに窓の下を見下ろし布団に戻る。朝昼晩、3回同じことをする。これが優衣の日常だ。
高校の友人は現役で大学に受かり、順当にいっていれば大学の2回生だ。優衣は高校を卒業しても、優衣以外になれなかったので部屋に引きこもって2年になった。2年の間、優衣は家族の顔すら見ていない。トイレやお風呂以外で部屋を出ることもない。おまけに趣味などもなく、食べて寝るだけの生活なので、声も出さなかった。
食べて寝るだけの生活など、常人なら自殺してしまうのかもしれない。しかし、優衣は満足していた。生産性のない自分を、生かしてくれている両親に感謝していた。人間が嫌いな優衣にとって、人間と会わずにすむ生活は、何はなくとも幸せなものだったのだ。