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ヘカテーの語りクライムストーリー

お待たせしました。

第二部の開幕です。

ごきげんよう、私は傍観者ヘカテー。

想造主によって造られた存在。

今回は、滅んだ世界にて紡がれたある男の懺悔を語りましょう――。


昔々、あるオンラインゲームの世界が人で溢れていた時のことです。


みんながそのオンラインゲームを好きだったから、溢れているのは当然と言えます。


男もまた、そのオンラインゲームが好きだった人々の一人でした。


ある時のこと、男はとあるボスを倒すために仲間を集めていました。

みんなでわいわいと賑やかに過ごすためです。

それをきっかけにして、男は友を増やしていました。


その時はまだ、男とその周りには平安が満ちていました。


男は再び、別のボスを倒すために仲間を集めていました。

それが男に良い変化を与えました。

尊敬できる一人の人に出会えたからです。


男はすぐさま、尊敬できる人のギルド――気の合う仲間同士のコミュニケーションを図るための機能――に入りました。


その時も、男の平安は仲間との密度を深めつつ過ぎていました。


ある時、男は知ってしまいます。

自分と周囲の平安を破壊する爆弾の存在を。


未来において、懺悔のための言葉を紡いでいる時に、知るべきではなかった存在を。


爆弾とはすなわち、ある[匿名での書き込み板]のことを指します。

そこにある板のなかに、男の好きなオンラインゲームについての板もありました。


そこに書かれていた内容は非道いものでした。

ある人物について、罵詈雑言をもって叩いていたのです。


まるで、狼の群が迷い込んだ羊を狩るように、

集団で個人を非難していたのです。


そして、非難されていた人物の中に、男の仲間もいました。


男は非難していた者たちを許せませんでした。


自分に対するものならば、人は我慢できます。

ですが、他の人――特に、肉親や友人への侮辱は、我慢はできはしません。


男は仲間への侮辱を、自分へと向けるために。

侮辱者たちを見つけ出すために。

仲間を守るために。

好きなオンラインゲームの中で、ログインしている全員に向けての機能――俗に全体チャットと呼ばれる機能――を使い発言しました。


「俺が神である」と。


男は目立ちたくはありませんでしたが、「仲間を守るため」という純然たる思いに突き動かされるままに、全体チャットを乱用しました。


男の他の仲間たちは、リーダーである尊敬者も含めて、やめるように説得をしました。

何度も何度も繰り返し続けました。

尊敬者から、ギルドからも追放すると言われながらも。


それでも男は乱用を続けました。


結果としては、男の努力の甲斐もあり、匿名者たちから侮辱を受けていた仲間は「男が身代わり」となることで救われました。


ですが、その代償は大きかったのです。


全体チャット機能の乱用は、そのオンラインゲームの管理者からの処罰を――キャラクターの強制リセット――受けることになりました。

それは、仕方がないとも言えます。


代償はそれだけではありませんでした。


尊敬者がオンラインゲームから抜けることになったからです。

理由は分かりません。

推測することは出来ますが、全ては過ぎ去った事象に過ぎないのです。


尊敬者を喪った男は、自暴自棄となりました。

自分を支えてくれる存在がいなくなったからです。


そんな男を、尊敬者の代わりに支えようとする者たちがいました。

男の友人たちです。

中には口喧嘩してしまった者もいました。


それでも、男を助けようと手を差し伸べました。


自分の我が儘のせいで、仲間をバラバラにしてしまった男は、友人たちの暖かな想いに触れて、泣きました。

自分がしてきたことの罪が許されたような気がして。

救われたような気がして。


男は、自分がしてきた罪を受け止めるために、懺悔の言葉を一冊の本に込めて綴りました。


そして、男は――好きだったオンラインゲームから去りました。

尊敬者の痕を追うようにも思えます。


男の心意は、私には分かりません。

分かることと言えば、ただ一つだけ。

新しいオンラインゲームで、仲間たちを作りたかったからだと思います。


真実は誰にも分かりません。


今はもう、男が綴った本はありません。

終焉の黒嵐に呑み込まれてしまったからです。


なぜ、終焉の黒嵐に呑み込まれてしまった本のことを知っているのかって?


答えは一つしかありません。

男の懺悔の内容を想造主が覚えていたからです。


これにて、私の語りはお終いです。


これを読んでいる貴方が、どう思っているのかは、私には分かりません。


ですが、これだけは言っておきます。


私が語ったこの話は、実際にあったことだと言うことを――


この話は実際に合ったことなんです。


私は彼に「偽りを勝手に決めつけられた」という被害がありますが、過去のことです。

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