鏡面幻実ホラージェノサイダー
当初の執筆予定には無かった話です
それは、未解決事件の中で
解かれる時が
永遠に訪れないがために
未解決であり続ける
全国を巻き込んだ
無差別殺人事件
あまりにも不可思議で
あまりにも不可解で
あまりにも猟奇的で
あまりにも怪異的で
あまりにも残酷な
対処すらも出来ない
[未知なる虐殺の狂宴]と
とある幻想詩人によって
名付けられた
鏡面なる現実を蝕む物語――
「……あれは、最初から猟奇的でもあるし
怪異的でもだった……」と
事件に関わった者たちは語る
初めに知られた
被害者の遺体から
猟奇と怪異が伴っていた
ベットに仰向けで
倒れている人体
しかし、片腕は
極度に薄く鋭利な刃物で
一閃されたかのように
躊躇なく切断されていると
仮定のみがされ
腹部には、大蛇らしきものが
貫通した穴も確認されており
その極めつけが
遺体の表情だ
想像を絶する激痛に
見ているだけでも
想像共感して
しまいかねないほど
苦痛の表情で
固定されていた
それは、狂気的な恐怖によって
絶命した
米国の架空の恐怖作家を
思わせる死因だった
その遺体だけにまつわる不可思議は
どのように殺害したのか
凶器の仮定すらも
加害者の痕跡すらも
必要な条件すらも含めて
分からないということ
発見者たちは言う
「……黒ずんだ大量の血痕と
死に様が今も
脳裏に焼き付けられていて
忘れようにも忘れられない」と
この事件全体で
最も猟奇的で
残酷な遺体について
その遺体は見るからに
他の遺体と違っていて
残酷さが際立っていた
片腕だけでなく、四肢すべてが
切断されており
遺体の顔面も
勢いを付けたハンマーみたいな
強烈な力で潰されたかのように
無惨な顔面であった
さらには、遺体の喉も
ひどい損傷が見えており
加害者の残虐性も窺える
腹部にある穴も、大蛇らしきものが
貫通したようにも見えたため
同一犯であることも
考慮に登っていたが
その事件全体の不可解性が
同一犯の考慮を阻んでいた
この大量無差別殺人事件において
エレベスト山脈以上に
険しい謎
全国で遺体の鑑識を
行った者たちは
不可解たらしめる
遺体の共通点を述べる
「……全国にある
すべての遺体の
殺害推定時刻が
……日時も何もかもが全部一緒なんだよ
……数分の、否、数秒の狂いもなく
全員が全員、同時刻に
……殺されていたんだ
……犯人が複数いたとしても
こんな共通点なんて
……有り得ないんだ!?」と
ヒステリックな叫び声をあげて
怖気に心が支配されていた
狂気によって、精神を狂わされた
一人の詩人が死の間際に
書き記した戯言
「誰も彼もが
彼奴からは逃れられない
溜め込まれた負が
無念が、怒りが、絶望が
彼奴を作り出したのだ!
人がいくら謎を解こうとしても
すべてが徒労に終わってゆく
彼奴は人じゃ、無いからだ!
無駄な足掻きだと、
救いなき鏡面なる現実だと
絶望ともに知ればいい!」
真実は狂気でしか見えないのか
正気では見えることはないのか
狂った詩人の戯言なのかは
誰も解らない
そして、[未知なる虐殺の狂宴]は
嘲笑と哄笑を入り混じらせながら
被害者の山脈を築き上げている――
真相は第三部に明かす予定です
それまでお待ちください