サタンジェノサイドⅢ
前話のあとがきで予告した通り、残酷描写が酷い←作者的には)ので気をつけてください
毒々しい赤紫色をした
暗雲立ち込める空へと
竜翼にて羽ばたいた
魔王サタンは
最後の大罪人を
獲物を狙う鷲のように
隻眼であるが
紅紫の瞳を鋭くさせて
上空から探していた
【ほう、我に見つからぬよう
柱の陰に隠れるか
だが、我は上空から
眼下を見渡せる
制空権という名の
アドバンテージを
甘く見るものではないぞ?】
魔王サタンは
邪悪に歪めたその顔で
そう呟くと
注意深く眼下にある
コロシアムを調べた
しかし、最後の大罪人は
狩り手である魔王サタンを
臆しているがためか
巧妙に隠れており
幾度となく探すも
姿は見せない
【ふん、我という猫に
狩られる側である鼠が
こそこそと逃げても
生きる時がわずかに
延びたに過ぎないことを
解せぬらしいな
しかし、このままでは
無意味に時を
費やすはめになるか……
動かぬと決めているならば
動かざるを得ないようにすればいい
なら、獲物を炙り出すために
獄炎でも放つか】
閉じこもる獲物を
外へと誘い出す手段は
幾らでもある
相手に興味を引かせることで
餌に引き寄せられた鼠のように
こちらの手中へと
無自覚のままに招くのだ
魔王サタンは
左手に獄炎を生じさせると
付加的な魔力の意思を込めて
まばらに乱立する骨と髑髏の柱群と
黒い光線の乱射による
倒壊によって生み出された
その丘があるコロシアムへと
まるで、バスケットボールを
床に勢い良く叩きつけるかのように
投げ落とし放った
すると、コロシアムという地上に
落とされたことによる衝撃をスイッチにして
上空と地下を除く全方位へと
火がつけられた蜘蛛の巣が
一気に燃え広がるようにして
獄炎がコロシアム中を
駆け巡る
最初こそ、燃え広がる獄炎が
唸りをあげるのみだったが
最後の大罪人は
辺りを燃え包んでゆく獄炎に
隠れきれなくなったのか
動き出した
その隙を魔王サタンは逃さない
最後の大罪人が
獄炎にて狭められた
通路の逃走路を
先読みし、新たなる獄炎にて
封鎖すると
動揺を突いて、最後の大罪人の背後へと
急降下で降り立った
「ヒッィイイッ!?
た、助けて……助けてくれよぅ!?
痛いのは嫌なんだよぅ!!」
追い詰められた最後の大罪人は
魔王サタンに助けを請う
【こそこそこそこそ隠れて
無理だと悟ったら
助けを請うか
貴様は解らんらしいな
このような手間を
かけさせられた
我の怒りが】
「えっ?」
魔王サタンは
絶対零度に近しい声音で
そう述べると
般若のごとき形相で
【ふんっ!】
と一息で、黄金竜鱗の片手剣で
連閃を繰り出すと
「ギャァアアアアアアッ!?」
最後の大罪人の四肢を
斬り落とした
「なんでっ!? なんでなんだよぅううう!?
助けてって、助けてってぇええ!?
言ったのにぃいいい!?」
」
痛覚倍化の邪術がかけられている
黄金竜鱗の片手剣で
斬られたことと
四肢を斬り落とされた激痛の
比類無き双激痛に
最後の大罪人は大声で
断末魔に近しい悲鳴を
喚きあげる
【助けるだと?
我は一言も、そのような言など
言ってはいないな
そもそも、タナトスに集められた時点で
元の――現実には帰れはしないのだからな
そして、貴様たち大罪人たちは
天国や極楽などへは
行けやせぬ
自ら犯した罪を、否認してきた貴様たちは
地獄に向かうのが相応しいのだからな】
「そんなぁああ!?
そんなのってぇええ!?
無いようぅうう!?」
残酷なる現実を告げられた
最後の大罪人は
比類無き双激痛のなか
ただただ
否定しかあげれぬ悲鳴を
叫び喚くだけ
【耳障りだな
黙らすとするか】
最後の大罪人が喚く悲鳴を
煩わしく感じた魔王サタンは
淡々とした口調とは裏腹の
大地を抉り出すような
強烈な威力を伴った
蹴りを二回ほど
最後の大罪人の
顔面と喉とに
恐るべき瞬発力で
繰り出した
「……っ!? ……っ!!」
魔王サタンの強烈な一蹴は
最後の大罪人の
顔面を潰し盲目にもさせ
喉笛を傷つけ、失語を招かせた
それによって、最後の大罪人は
完全なる無力へと陥った――
次話でサタン視点は最後です