プロローグ
ファンタジックホラーが適切かも知れませんね。
それは、暗き闇の中から始まった――
苦痛の悲鳴が
無数の嘆きが
数多の悲しみが
絶え間なく渦巻いている
愚かしき嘲笑に
自己正義に浸る言葉に
謂われ無き非難に
身勝手な不満に
心を傷つけられ
物語を紡がれなくされ
断筆に追い込まされた者たちの
無念を源として
渦巻いている
その闇の中に
拳を頑ななまでに固く
握り締めながら
憤怒と憎悪に
顔を歪ませている者がいた
「愚酒に溺れし者たちの
無自覚なる大罪によって
物語を紡ぐ力を砕かれ
無念に覆い包まれた者たちよ
あなた方の無念を
私は憐れもう
あなた方の無念を
私には晴らすことはできないが
あなた方の無念に
覆い包ました大罪人の群れを
私は憎悪の刃を向けよう
そのために、どうか
そのために、私に力を
貸してほしい!
自覚無き大罪という
悪を屠るための力を
刃に変えて
彼奴らを討つために!」
彼は、創造偽神デミウルゴスであり
物語を紡ぐ想造主と呼ばれし存在
彼の叫びに呼応するかのように
闇の中を渦巻いていた
断筆者たちの無念は
黒い羽ペンという形を取って
想造主の手に収まった
すると、闇が霧散し
空間が膨張しながら歪み
想造主を飲み込んだ後
収束すると
そこは、今までいた
暗き闇の中ではなく
本棚とテーブルがある
想造主のいつもの部屋だった
想造主はいつもどおり
心の中で、紡ぐ物語を
確固にしてから
愛用の魔導書を開き
まだ真っ白い
空白の本へと
黒い羽ペンを走らすように
大罪人どもに
復讐するための物語を
紡ぎ出し始めた――
作中から推察できるように、報復がテーマです。