刻苦
14:30 駅のホーム
「落ち着いた?」
「うん…。」
「良かった~。」
またよしよしと頭を撫でられる。
「ほらぁ~制服ベタベタだよぉ」
笑いながら奏は言う。
「ごめん。」
「いいよ~。」
冷静になって状況を整理する
ここはどこだ。
駅のホーム
何してた?
人前でマジ泣きの後友達に慰められた
その友達は?
中学時代、話したのは3年通して5回位の女の子
…。
ヤバイな。
頬の奥が熱くなる。
「ッ~!!!」
「? どうしたの?」
「なんでもない!!」
「?」
奏の話によると、テストが終わり、塾の用意をするために帰ろうとしたところで明らかに表情がおかしい俺を見つけたそうだ。
「どんな顔してた…?」
「なんていうか、職務質問受けそうな感じ?」
あぁ…。
「…っていうか、塾いいの?」
「…。」
「…。」
「あああああああ!!!!!!」
「ごめん…。」
「ううん!大丈夫!でも私もう行くね!」
「あぁ。ありがとな、奏。」
「ふふ。」
「奏には元気もらってばっかだ。」
なぜかにやにやしている彼女は、子供のように無邪気に告げる。
「奏。」
「え?」
「奏って呼んでくれてる。」
「ぁ…。」
無意識だった。
「じゃあ私行くね。」
「うん、じゃあな。」
「またね!」
駆け足気味に去っていく彼女の背中を、ゆっくり歩きながら見送った。
15:40
家に着いた。
自室に入るとすぐ、パソコンを立ち上げる。
インターネットに接続して、検索バーに慣れた手つきで打ちなれない言葉を入力していく。
Gooogle 〔○○町 バイト〕[検索]
一回落ちただけでめげてちゃダメだ。
見事に奏に勇気づけても貰った俺は、すぐさま次のバイトを探していた。
単純なのだろうか。いや、それでもいい。
今は前に進んで、そのまま逃げ切りたかった。
この、将来に対する恐怖から。
理由の分からない高揚感から。
死のうと思ってた頃とは180°方向の違う気持ちに、驚きと、妙な心地よさを感じていた。
それは、もう周りに迷惑をかけないためだろうか。
いや、まだ心の何処かでゲームを欲しいと思っているから?
それとも、奏に少しでも近づきたいからなのだろうか。
頑張ったねと、また言ってもらいたいからなのだろうか。
よくわからなかった。
母が仕事から帰ってきた。
「朋也、今日なんかあったの?」
「え?」
「なんだか顔がいつもと違うよ」
「そうかな?」
「朝行くときは死人みたいな顔してたのにね。」
侮れない人物だ。
全部見透かされてるみたいだった。
なんだか、とても清々しい気分だった。
状況がなにか変わったわけじゃないのに、不思議だ。
今度こそ、頑張ってみよう。
今回少し短めでした。
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