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水源調査~2

 

 湖だったところはすっかり干上がって大きな窪地になっていた。


「すっかり干上がってるニャ……いつからニャ?」


「一月前から水量が減って7日前にはすっからかんだ」


 ハインリヒは鼻を動かして窪地の匂いを嗅ぎまわって、ヘンタイなおにいさんはミリーに付き纏っている。


「ほぅら、ミリーちゃん飴玉だよ。それに大きくて長い棒状の飴もあるんだよ」

 

 そう言いながら皮の袋からいろいろな種類の飴を出してみせるおにいさん。ミリーはそれを見ながら目をパチクリさせた。


「おにいさん、飴屋さんなの?」


「ちがうんだよ。おにいちゃんはねぇ、いつ何があっても良いようにいつでも持ち歩いているんだよ」


「わぁ! おにいさん、アスランみたい!」


「アスラン?」


「あたしの幼なじみなの。字とか計算教えてくれて、いつも飴くれるの!」


 そんなわけでミリーは、飴をくれる人に悪い人はいないと信じている。


「そうか、何だかそいつに凄く親近感を感じるなぁ……なんでだろう?」


「分かんない。あ、あたしも調査しなきゃだから、邪魔しないでくださいね」


 ミリーはよいしょ、と立ち上がり湖の調査を始めた。湖は中央に行くほど深く、干上がってヒビ割れた土から紫の草が生えているのが見える。ミリーは注意深く歩きながら湖の中央に向ったが、何度かペチョンと転んだ。

 ミーシャとハインリヒは湖の中央で乾いた土を手に取り調べている。土の臭いを嗅ぎながらハインリヒは嫌な顔をした。


「魔界の臭いがするな」


「マズいニャ。もしかして湖と魔界が繋がったのかもしれない」


 人間には嗅ぎ取れないが硫黄のような臭いが微かにする。魔界の臭いだ。

 そして魔界と繋がってしまった場所は魔物の発生源になる。


「そう考えれば魔物が増えた理由も付くな」


「……最悪、ダンジョンにするしかニャいな」


 世界各地には魔界と繋がった場所が多数ある。自然現象の一つなのでどうしようもないのだが、そこには、魔族と人族で協力してダンジョンと呼ばれる結界が張られる。


「ねぇねぇ。二人とも?」


「どうした、ミリー? ここは危ないからお兄さんたちと一緒にいるんだ」


「うん、でもね、どうして紫の草が生えてるの?」


 二人はミリーの指摘に回りを見回した。確かにカピカピに割れた土から、紫色の草が茂っている。ミリーは首を傾げながら思いつくまま言ってみた。

 ミーシャもハインリヒも魔界で紫の草は見慣れているためあまり違和感を感じていなかった。二人は「しまった」と言う顔でお互いの顔を見た。


「もしかして、地下に何かあるのかな?」


「……湖と魔界が繋がったんニャ」


「えっ!? だから水が無くなったの?」


「ああ。だが、水が無くなるより大変な事態だ」


「ど、どうしたら良いの? どうしよう」


「落ち着いて。まず、ギルドに報告ニャ」


「大丈夫かいミリーちゃん!」


 三人で話し合っているとヘンタイおにいさんがやってきた。ミリーが何度か転ぶのを見て、転ぶ姿を間近で見たくてコッソリ後を付けて……心配してやってきたのだ。


「早く戻るんニャ! ここは危険ニャ、ニャ二ニャニョン……やべぇっ!? 大物だ!」


 ミーシャとハインリヒがミリーの手を取って戻ろうとしたとき地面が大きく揺れた。地面はうねるように大きく揺れて四人は立っていられなくなった。


「きゃあああぁぁぁっ!」


「ミリー! しっかり捕まってろ!」


「大丈夫か! ミリーちゃん!」


 地面から巨大な渦が昇ってくると、ヘンタイおにいさんは咄嗟に三人を庇うように纏めて抱き締めた。




*


「ナーガ……」


 地面から発生した渦に四人は目を瞠った。それはナーガと呼ばれる、魔王殿を支えている巨大な蛇だ。

 それは鎌首をもたげると四人に目を留めて、体を伸ばしてきた。


「こりゃ……ウォードラゴンどころじゃないな……大丈夫か、ミリー?」


 ハインリヒがミリーを見ると、こっちり固まって動かなくなっている。


「おい、ヘンタイ! ミリーを抱えて逃げるんニャ!」


「あ、あ、ああ!」


 ミーシャに怒鳴られて同じように固まっていたヘンタイさんは我に帰りミリーを抱き上げようとした。その途端ミリーは杖を掲げた。


「あ、あたし、大丈夫だから! 蛇さんの動きを止めるから皆も逃げて!」


「な、なに言ってるんニャ! 良いから逃げろ! 俺たちで足止めする!」


「ヤダ! ヤダヤダ! えぃっ!」


 ミリーはやけっぱちにクルッと回り「えぃっ!」と杖を振った。

 すると空を割るような大きな音が響き、ナーガは真白い光に包まれた。


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