一人で薬草採取
「ねぇ、みんな。薬草摘みのお仕事いっぱいあるよ?」
大きな依頼を終わらせた四人は、小さな仕事で体力の調整をすることにした。薬草採取の依頼がいつの間にか四件入っている。
「ねぇ……一人一つずつできるんじゃないかな? 良いですか、お姉さん?」
きっと依頼をした人は待っているはずだから早く終わらせないと、とミリーは考えた。
「ええ。大丈夫よ」
お姉さんはニッコリ笑って頷いた。
*
「よぅ、ミリーちゃん。あれ? 今日は一人なんだね?」
ミリーが薬草採取に一人で町の外へ出ると、顔馴染みの冒険者たちが声を掛けてきた。彼らだけではなく町の人たちも気さくに声を掛けてくれるので、ミリーはナキ町が大好きだ。
「こんにちは。薬草採取なので一人一つずつなんです!」
「おっと、走ると危ないよ」
嬉しそうに駆け寄ってくるミリーを冒険者たちはハラハラしながら見守っている。
「どこまで行くんだい?」
「エメットの森です」
ミリーが採取する月下草は薄暗いところに生える植物で、町のすぐ傍にあるエメットの森に生えている。
「俺たちもそっちに用があるから、途中まで一緒に行こう」
「はい!」
ミリーはそれはもう嬉しそうにニコニコしながら冒険者たちに混ざった。
「そういや、ミリーちゃんってどこの出身なんだい?」
「ぇ……ぅ……リース村、です……」
いつもニコニコしているミリーの顔がショボーンとなって小さな声になってしまった。それを見て察した冒険者たちは苦笑した。
「ミリーちゃん、今幸せかい?」
「は……はい!」
「俺たちも、故郷に良い思い出はあまりないけど、でも今はそれなりに……まぁ幸せにやってるんだよ……うん、だから、まぁそういうことだ!」
「おい、それじゃどう言うことか分かんねぇよ! はっはっは!」
仲間が笑いながら突っ込むとミリーも笑顔になった。彼の言っていることは分かり辛いが、何となく分かる。
「はい! ありがとうガイルさん!」
髭面の厳つい冒険者にたどたどしく諭されてミリーは頷いた。それからウォードラゴン退治の話を聞いたり、ルキ町の話をしているうちにアッと言う間に森に着いてしまった。
「あ、そうだミリーちゃん。『飴あげるから』って言われても知らない人に付いていっちゃいけないよ」
別れ際に冒険者の一人がお父さんのような顔でミリーを諭した。
「はい……分かりました。ありがとう、気を付けてくださいね! いってらっしゃい!」
「おう! ミリーちゃんも気を付けてな!」
長い間手を振っていたミリーだが、皆が見えなくなると顔をキュッと引き締めて薬草を探し始めた。
*
月下草は日光に当たると成分が変質してしまう。ミリーは摘んだ月下草を黒い布に丁寧に包んでから皮袋に入れた。
採取を終えて、一人トボトボと町へ向かうと村にいたときのことが思い出される。
優しいお母さんが死んでから一人だった。5才年上のアスランも、冒険者になると言って王都に行ってしまった。
『迎えにくるから待っててね、ミリー』
ミリーは待っていた。
毎日、丘の上で待っていた。
だけど、アスランは帰って来なかった。
ミリーだって心の奥底では分かっていた。ただ知らないフリをしていたかっただけだ。
村を出て行った男たちは誰も帰って来なかった。
皆、新しい生活を初めて村に置いてきたものを心の隅に追いやって、そうしていつか忘れてしまうのだ。
アスランはもう帰って来ない。
だけど、村を出たミリーはアスランを責める気持ちはまったくない。
ミリーは今、とっても幸せだから。
だから、アスランの思い出も幸せな思い出として、ちゃんと心に残しておける。
そして今、一人で歩いていても一人じゃないと分かった。ミリーは急いでギルドに向った。みんな、もう仕事を終えてミリーを待っていた。
「ただいま! みんな」
「お帰り、ミリー!」




