Aさんとの会話。
俺のクラスにAという女子がいる。
そいつは、ちょっと頭が壊れているけど、文武両道で、美人な奴だった。
最初はスキルの高さから言い寄ってくる男も少なからず存在したのだが、
Aの頭の壊れぶりに失望し、言い寄る男はいなくなった。
そして、その壊れた考えは友人をも見放させるほどのものであった。
「そう。僕、人と価値観がズレまくりみたいなの。今となっちゃ、話すのなんて君くらいだよ」
そう言ってAは爆笑した。
本人も認めるほどの異常人と。何故顔を合わせて話しているかって言うと、理由はない。
出会いも特に変わったこともなく、ポツポツと話しているうちに、こうなっていた。
「そう考えると、こんな変人とうまく付き合える君も、相当な異常だよね」
「俺はお前みたいな狂った考えに興じたことなんてねえんだけど」
「ははは。僕はそんなに嫌な考えの持ち主かな?」
Aは笑い方も、どことなく普通ではない。ああ、そうだ。ちょうどRPGのラスボスみたいな笑い方だ。
普通の振る舞いをしていても、どことなくぎこちない。それは、俺も同じなのかもしれない。
「当たり前だろ。だって――――」
「『両親が死んだ時に葬式場で爆笑なんて出来ない』かい?」
またラスボスの笑いをするA。俺の驚いた表情を満足げに覗いて、話を始める。
「図星かい。あれね。あれは……。流石に両親の死に対して死に顔が面白すぎて笑ったんじゃないよ。事実面白かったけど」
Aは、いつものようなニヤついた顔ではなくて、どちらかと言えば真っ黒な笑みを浮かべていた。
「僕は、あの二人の葬式で大泣きする周りの人間の反応に笑ったんだ」
Aは髪を指に絡ませながら続きを話し始めた。
「僕はあんなたった一つの死に対してよくもまああんなに泣き叫べるなあっと。考えてたら笑いが止まらなくなったんだ。ツボにはまったとも言えるだろう」
Aは思い出し笑いをしたのか、くくっと笑いをこらえた声をだした。
「両親の死を軽く受け止めすぎじゃねえか?」
「そうかもね。僕は目の前で両親を殺した犯人を見ていたわけだし」
「さすがにそれは、初耳だぞ??」
「僕も幼いながらに警察にはちゃんと連絡したんだ。まあ、その日の内に出頭したらしいが」
Aは呆れたような顔をし、はっ。とバカにしたような笑いをひとつくれた。
「僕はね、あの人間と両親が以前から金のトラブルで悶着あったのを知ってたのさ。そこが原因だと、そいつを見てひと目でわかったさ。だから、僕は彼に言ったよ。『お疲れさま。楽になるね』ってね」
「は、犯人にか!?」
「ああ。僕と彼は両親は知らなかったが、彼とは凄く仲が良かったんだ。遊び仲間としてね。だから、笑顔で見送ってやろうとそう言ってやったら、奴は怯えた目をして凶器をその場に捨てて逃げ出したよ」
バカだろう? とでもいいたそうな声で、Aはその話を昨日起こったちょっとした面白いことのように話し上げた。
俺はとりあえず、そんな言葉を吐かれるとは思ってなくって怖くなったんじゃねえかと、苦笑混じりに答えておいた。
するとAは
「世の中にはな。どんな奴が居たっておかしくないというのを、彼は学ぶべきだな。そうだとするならば」
「まるで、知ったような口を利くな。お前は」
「ああ。僕は認めているからね。殺人者も、同性愛好者も、馬鹿も、天才も、超能力者も、幽霊も、僕みたいな。いいや。僕以上に狂った考えを持つ人間すら。全てが存在するとね」
「半分答えになってない気がする」
「僕は、人と会話するのが苦手なのさ。こういう風な質疑応答が出来ないからね」
「ああ、そう」
俺は、奴を見るのをやめた。Aはふふっと笑い、空を見上げた。
「やっぱり君も、少し変だよ」
俺は今度は、何も答えなかった。
Aは、誰が誰に何してもいいと、後日語っていた。
僕は、それに興味がない。と。知ったことじゃない。と。
そんなの僕が止める権利も、許す権利もないじゃないか。とね。
俺はとりあえず、そうだな。と答えて飲んでいた紙パックのジュースを飲み干した。




