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惑わされてひとひら
ぬくもりの中それは芽吹く
親木一つから分けられた花
人を惑わし懐かしさをもたらす
咲き誇る姿は一枚の絵
咲き並ぶはふるさとの山々
一升瓶がころころと転がっていく
青い空と青いシートの狭間に
笑い声の連なり
盃にひらりと落ちる花びら
作られたものであるのに
もはや欠かすことのできない
春の一幕
誰もがその下でため息をつく
君の名はソメイヨシノ
桜色の花びらが
地面を埋め尽くす頃には
若葉が顔を揃えて夏を待つ
枝を折ることも切ることも
繊細な君には御法度
ただ落ちる花を拾うこと
それだけはせめて許してくれないか
美しさに酔うように
儚さに惑うように
咲く姿に言葉は不安定さをましていく
2013/04/01