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心の動き  作者: 心曖空 shiara
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「あぁ、君もいなくなってしまうんだね。」


告白をされ、短くない時間を一緒に過ごしてきた。


一途な気持ちと依存。

この違いを区別するのは難しい。


相手のことを大切にしたい。

それだけなのに。


始まりは単純だ。

「次、いつ会えるかな」


気が付いたときには、もう遅かった。


他の異性と話さないで。

自分の知らないところで関係を広げないで。

その笑顔を、他人に向けないで。


自分のことだけを考えてよ。

どこにも行かないでよ。


なんだってするし、なんだってしてあげたい。


どうしてダメなの。


どこにも行かないで。

一人にしないで。


いなくならないでよ。


 


「お疲れ様!今日も頑張った!」


元気な声で話しかけてくるその人は、ひとつ上の先輩だ。


なぜか周りと少しだけ距離がある自分にも、

気さくに話しかけてくれる。


優しい人なんだと思う。


 


「今日頑張ったし、これからご飯一緒に行こ!」


周りの人にも声をかけているけれど、

みんな苦笑いで断っているのが見える。


 


「みんなひどいなぁ」


少し肩をすくめながら、こちらを見る


「もちろん、君は一緒に行ってくれるよね?」


こうやって距離を詰められるのは、少し苦手だ。


こんな言い方をされたら、

好意があるんじゃないかって。


そんな勘違いを、してしまうから。


 


「よし、行こっか」


先輩はそう言うと、すぐに歩き出した。


 


「とはいっても2人だしなぁ。家で飲もっか。」


ほんとうに、ずるいと思う。


 


気が付けば、テーブルの上には

飲み終わった缶がいくつも並んでいた。


「今日さ、なんか元気なかったよね。どうしたの?」


最近はバイト中に小さなミスが多かった気もする。

たぶん、少し疲れているだけだ。


お酒も飲んでいて思考がふわふわしている。


「困ったことあったら頼っていいんだよ。」


その優しさにすがりたくなる。


でも、そういうことを言う人ほど、

きっといなくなる。


缶を持ちあげ、少しだけ口を付けた。


 

気が付けば、口が動いていた。




「好きになると.....」



「だめなんです。」




言葉にするつもりはなかった。


 


「どんなふうに?」

 


そう優しく聞いてくる。



あなただったらこの気持ちを受け止めてくれるのだろうか。



この関係性が好ましいと思っていたからこそ、


伝えるべきではなかったと後悔する。


 


「はじめのうちは、まだいいんです。」



「でも好きの気持ちが、大きくなるたび」


 


言葉を探すように、手の中の缶を見つめる。

 


離れてしまうかもしれない、そんな恐怖が襲ってくる。


自分の知らないところで楽しそうにしていたら。

自分の知らないところで笑っていたら。

自分の知らない表情をしていたら。


もう、いらなくなったんじゃないかって。


ほかの人の話をしないで。

どこにも行かないで。


一人になってしまうのが、怖い。


「依存しちゃうんです」


「一緒に終わろうかって言われたら」


「叶えてしまうぐらいに」


 


視線を感じる。


自分のことを見ている、そんな気がした。


 


怖くて顔を上げることはできなかった。


 


「ごめんなさい。変なこと言っちゃいましたね」


 


お酒のせいなのか


出てきてしまった気持ちのせいかなのか。


 


少しずつ、目の前がぼやけていく。


 


「こんな気持ち、絶対に隠さないといけないのに」


 


心が、限界だった。


 


目が覚めると、先輩はいなかった。

 


テーブルの上には


新しい飲み物と、ゼリーが置いてあった。


 


バイト終わり。



先輩はいつも通りだった。


 

「今日空いてる?」



目が合いそうになる。


 

「今日はちょっと、、」



視線をそらす。



そのまま横を通り過ぎようとする。



「昨日のことなんだけど」



慰めるような言葉を、言ってくるのだろう


きっと、優しい言葉を。


それを聞くのが、怖かった。


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