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第8話 交渉の切り札
アルフォンス王が鋭い目を細めた。
「……通行権を餌に、会議の場に引き出すと?」
「そうです。そして第二のカードは、我々が遺跡の『一次調査』を既に終えている、という事実です」
セレストの言葉に、使者が驚いて顔を上げた。
「え?しかし、調査隊はまだ……」
「報告書によれば、遺跡周辺で我が国の商人隊が、現地住民からいくつかの『遺物の破片』を購入していますね。それらを分析した『予備報告書』を作成します。内容は、遺跡の危険性——古代の防衛魔法がまだ活性化している可能性——と、解読が極めて困難であることを強調するものにします」
彼女の声は、かつての会議室で戦略を語る時のように、明確で力強い。
「彼らが我々を除いて単独で遺跡に突入すれば、莫大な人的損失を被るリスクがある。一方、我々と協力すれば、安全なルートと、初期調査の知見を共有できる。この『リスク』と『ベネフィット』を明確に示せば、交渉のテーブルにつかせることは可能です」




