7/9
第7話 竜の巣の交渉術
彼女が振り返った時、目には冷静な決意の輝きがあった。
「武力衝突は最後の手段です、陛下」
静かな、しかし宮廷全体に響く声だった。
「まずは国際会議を提案しましょう。遺跡の共同研究と、そこから得られる利益や知識。そしてもし技術が応用可能ならその成果を公平な分配について、話し合う場を設けるのです」
一瞬、水を打ったような静寂が訪れた。
やがて老練な宰相が咳払いをした。
「……会議?陛下、彼らは既に剣を抜きかけています。言葉で納得させるなど、夢物語では?」
かつてのセレストなら、この否定に逆上しただろう。
しかし今の彼女は、ほんの少し口元を緩めた。
「交渉は条件次第です。夢物語かどうかは、提示する『条件』と『代替案』の現実味にかかっています」
彼女は机の上の地図を指さした。
「ご覧ください。遺跡『竜の巣』への最も安全で大規模な物資輸送が可能な陸路は、我がオルテニアが支配しています。険しい山岳地帯を迂回する他のルートは、コストが倍以上かかり、季節によっては通行不能です。これが我々の第一の交渉カードです」




