最終話 調印そして新たな始まり
交渉七日目の夕刻、歴史的な合意が成立した。
「竜の巣共同研究協定」
三国による共同研究機関の設立、利益配分の詳細な規定、紛争解決のメカニズムが盛り込まれた。
調印式で、アルフォンス王はセレストに深く頷いた。
彼女の目には、かつて数億ドルの合併案件をまとめ上げた時の達成感と同じ輝きがあった。
「すべて、計画通りに」
彼女は囁くように言った。
会議から一ヶ月後、竜の巣遺跡で共同調査が開始された。三国の研究者たちが協力して古代の謎に挑み始めたのだ。
城の書斎で、セレストは報告書を読みながら窓の外を見た。
かつての愛河亜弥としてのスキルが、この世界で新たな形で花開いていた。
「王妃陛下」
宰相が入ってきて深々と頭を下げた。
「レガリアとヴァルドラントから感謝の書簡が届きました。武力衝突を避けられたことを称える内容です」
セレストはほほえんだ。
「次は経済協定の交渉です。三国の貿易障壁を減らす提案を準備しています」
「まさに……驚くべきお手腕です」
彼女は机の上の地図を見つめた。
現代のビジネススキルが中世の外交を変えつつあった。
数字と論理、心理学と戦略。
それらは時代を超えた普遍の武器だった。
「さて」
セレストは立ち上がり、次の計画書に目を向けた。
「仕事はまだ始まったばかりです」
窓の外では、三国の旗が並んで翻っていた。
かつては敵対するはずだった国々が、今は共通の目標に向かって進み始めていた。
すべては、1人の女性の知恵から始まった小さな奇跡だった。




