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普通のおっさん、夜のコンビニで“守りたいもの”を拾う 〜ハッピーエンドしか認めない〜

作者: べーべー
掲載日:2025/11/09

初めて作った小説です。心が雪の結晶レベルでもろいです。優しく見守ってください。


昼前に起きて、スマホで動画をだらだら眺める。

気づけば午後になり、また気づけば夜。

疲れきったおじさんの、どうしようもなく平和で退屈な休日だった。


ようやく腹が減っていることに気づき、冷蔵庫を開ける。

中には、数日前にショート動画で見て衝動買いした「腸活にオススメ!」なヨーグルトが一つ。


「……賞味期限、十日も過ぎてるじゃねぇか。

いや、ヨーグルトなんて最初から腐ってるようなもんだし……」


しばし葛藤。

だが、明日も仕事だ。ここで腹を壊すのはリスキーすぎる。

大人は無謀と勇気を履き違えないのだ。


ため息をつき、着替えもせずダル着のまま外へ出た。

「夜のコンビニって、なんで虫とヤンキーが集まるんだろうな……」

少し治安が悪い地域なので、夜になるとまだヤンキーが生息している。


コンビニの光が見えてきた――が、今日は妙に騒がしい。

何やら、夜職っぽい女性とヤンキー君が揉めているようだ。

まぁよくある光景だ。関わるのは御免だとスルーを決め込む。

……の、だが。


「お前のせいで仲間が捕まった」

「責任は取ってもらう」

「上のところへ連れていく」


聞こえてきた言葉に、背筋が冷たくなる。

最悪の想像が頭をよぎった。聞くんじゃなかった。

だがもう、聞いてしまった以上、見なかったふりはできない。


――無謀と勇気を履き違えない。

それでも、大人として必要な勇気はある。


「何か揉め事かい?」


近づいて声をかけると、ヤンキー君がこちらを睨み、胸ぐらを掴んできた。

「はぁ?消えろやオッサン!調子こくなよ!」

恫喝。近い。怖い。もう帰りたい。

でも、女の子は――泣いているだろうか?

そう思って振り向いた俺に、女の子は冷たい目を向けて言った。


「アンタ誰?関係ないヤツは消えろよ!」


……え? なんで俺、女の子にまで罵倒されてるの?

もう泣きそう。


その時、女の子が小さく囁いた。

「こいつら、“虎舞流”っていうチーマーだよ。早く逃げなよ。」


よく見ると、彼女の手は小刻みに震えていた。

――この子、俺を守ろうとしてるのか?

そう思った瞬間、胸の奥がギュッと熱くなった。

頭の中は冷静になる。腹は、もう決まっていた。


「ヤンキー君、君、“虎舞流”のメンバーだろ?見たことあるよ。

オジサン今日は非番だから、あんまり仕事したくないんだよね。」


一瞬、男がきょとんとする。

「署に連絡するのも面倒だし、今日はこのまま帰ってくれないかな。」


“非番”“署”――その二つの単語で、彼の頭が動いたのが分かった。

こちらを睨みつけながら手を離し、吐き捨てる。


「おい、覚えとけよ。」


勢いよく車を走らせて去っていく。

ようやく静かになったコンビニ前で、俺は息を吐いた。


「大丈夫か? ……典型的な捨て台詞だったな、あれ。実際に言う奴、初めて見たわ。」


軽口を叩く俺に、女の子は険しい表情のまま言う。

「怪我とかはないけど……助かった。けど、それでもポリは嫌いなんだ。」


「そうなん? じゃあ早く帰りなよ。誰か通報してるかもだし。」


「オッサンに見つかってるじゃん。」


「え?俺、警察官じゃないよ?」


「は? さっき“非番”とか“署に連絡”とか言ってたじゃん!」


「俺は普通の介護士で、今日は夜勤明けの非番。

警察への連絡は“市民の義務”ですー。」


「……嘘ついたん?」


「嘘じゃねえし。勝手に勘違いしたんだし。

嘘つきは泥棒の始まりだぞ? 大丈夫か?」


女の子は一瞬ポカンとした後、吹き出した。

「なるほどね。たしかに“警察官”って言ってない!

でもそれ、泥棒じゃないけど詐欺師じゃね?」


助けてやったのに、なんて失礼な奴だ。

もう知らんと背を向けて、目的のコンビニに入る。

……が、なぜか女の子はついてきて、ずっと話しかけてくる。


「その弁当、美味しくないよ。」

「うわ、油っこいの好きだねオッサン。」

「このサラダおすすめ!」


うるさい。けど、気づけば彼女おすすめのサラダを手にしていた。


会計を終えて外に出ると、また彼女がついてくる。

「なぁ、はよ帰れよお前。」

「家バレてるんだよねー。帰ったらさっきの奴いそうで怖いなー。」

「なら警察行けよ。」

「助けてくれたのに、今度は見捨てるんだー。大人のくせに途中で逃げるんだー。」

「犬猫拾ったんじゃないのよ。人間の女の子は拾って帰らないの。犯罪だから。」


彼女は少し黙った後、ぽつりと呟く。

「家がバレてるのはホント。今日だけでいいから、泊めてくれないかな。」


不安そうな目。

見捨てるのは簡単だけど、せっかく助けたんだ。不幸にはなってほしくない。


「……わかった。今日だけな。」


「やった!ありがとうオッサン!」


「オッサンじゃねぇし。お兄さんだし。」


「わかったよオッサン!」


「……はいはい。」


歩き出す。

「俺がベッドで寝るから、お前ソファな?あと、なんもしてくるなよ。」

「逆じゃね? 女の子にはベッド譲るのが普通でしょ?」

「なんで俺がソファで寝なきゃなんねぇんだ。床じゃないだけ感謝しろ。」

「あー叫びたくなってきた!“痴漢ですー!”って!」

「やめろぉぉぉ!社会的に死ぬわ!」

「この衝動はベッドじゃないとおさまらないなー。」

「……わかった。お前がベッドでいいよ。」

「やったね!」


苦笑しながら歩く俺。

いつの間にか、笑っていた。久しぶりに。


「今日だけだからな。明日にはちゃんと出ていけよ?」

「テレビある?観たいドラマがあるんだけど。」

「ねぇ聞いて? “出ていきます”って約束して?」

「そのサラダ貰っていい?お腹すいた。」

「もうヤダこの子。自由すぎ。」

「道、こっちで合ってる?」

「知らん。先行くな。」


夜風が少し冷たい。

だけど、胸の奥はほんの少し温かかった。


いつもの、退屈な休日になるはずだったのに――

気づけば、やけに賑やかな夜になっていた。


長編として続きも書いてみました!よろしければそちらも見ていただけると嬉しいです!

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