完璧な作戦
〈作戦1:廊下の角で運命の出会い作戦〉
「これは何ですか?」
人気のない部室棟。
昼休みに入った今、通常時よりも一際人気のないそこに位置する美術室で僕はある人物に一枚の紙きれを差し出した。清運朱莉である。彼女は紙面に書かれた文字を指でなぞり首をかしげる。
「有崎さんと仲良くなるための作戦だよ。授業中に考えてきた」僕が胸を張る。
「ああ、それはご丁寧にどうも…ではなく!具体的に、どういう意味の何ですかっ」清運さんが乗り突っ込みをする。
「そもそも、今朝直接話しかけに言ったんじゃないの?」川合さんが弁当を食べながら言う。
もっともな質問に言葉を詰まらせたのは清運さんだった。僕も今朝の事を思い出し、ある意味予想通りの結末に感心する。
清運朱莉に人間関係を学ばせるために建てた第一目標。実質的なクラスのドンである有崎純玲に取り入れようとする作戦は失敗に終わった。目標を前にして清運さんが逃走したからだ。あの後は勢いで有崎さんから言質を取ろうとしたり、美術室まで全力疾走して酸欠で死にかけてしまった清運さんを看病したりで大変だった。お陰で遅刻ギリギリだ。僕は乗り掛かった舟の行く先に不安を思わずにはいられない。
とはいえ、そんなぼろぼろの船でも、有崎さんを第一目標にしようとする方針は間違っていないと思う。けれど今朝の様子を見るに楽観はできない。時間だって無限ではないのだ。ゆえにと、僕は清運さんの持つ紙を指さす。
「要は、話しやすいきっかけが大事だと思うんだ」
作戦はこうである。
有崎さんが曲がり角を曲がったところで、荷物を持った清運さんが飛び出してくる。有崎さんは注意深い人だが、身長が高い分、清運さんの頭の位置は死角になるはずだ。二人の変人はあえなく衝突。清運さんの荷物が空中にばらまかれる。謝罪をする両者。なんならその時、顔を赤らめながら「ど、どこ見てんのよ馬鹿!」と言ってもいい。きっと張り倒されるだろう。次いで、両者の視点は床に散らばった荷物に行くはずだ。普通の人間であればそれを拾い集めるのに手を貸すだろう。その時、有崎さんは気づくのだ。彼女が拾っているモノ、清運さんが運んでいたモノが、彼女の珠玉の作品たちであることに…。思わず目の前の女の子を見る有崎さん。そこにいるのは今朝来た変なの、清運朱莉だ。彼女は思わず言うだろう。
『絵、上手いのね…』
『ええ。自慢じゃありませんがルーブルと寝たこともあります』
『感動したわ清運さん。どうか私をあなたの額縁にして!」
『生半可な飾りじゃあ、私には合わないぜ…』
~Be My Friend~
完
ひとしきり説明し終えると、僕は指を弾いた。
「こうなるはずだよ!」
「ならないね」
「ならないと思います…」
「…」
総スカンだった。いい案だと思ったんだけど。
「とりあえず一回やってみようよ」
「えぇー…」
「まあいいじゃん。方向性は間違ってない気がするし、やってみたら?」
「きっとうまく行くよ!僕たちもサポートするし!」
「え?私も?」
作戦はその日のうちに行われることになった。実行は他の生徒がほとんどいなくなった放課後だ。有崎さんは最近何やらやることがあるらしく、日が傾くまで教室にいることが多い。けれどあまり長居はしないので、そのタイミングを狙おうというわけだ。
「有崎さん、まだいた?」川合さんが言う。
僕たちは渡り廊下で作戦会議をしていた。
「まだいたよ。でも集中してるみたいでまだ掛かるみたい」
「有崎さんって、こんな時間まで何してるの?部活とかも特にやって無かったよね」
「教科書広げてたし、多分勉強。でも確かに、なんで部活入ってないんだろう…確か中学の時に国体出たんだよね」
「…あ、それ私も聞いたことあります」
「アカちゃんが知ってるってことは、皆知ってるってことか」
「どういう意味ですか!」
真剣な顔で顎に手をやる川合さんに、清運さんが顔を赤くして突っ込む。渡り廊下は斜陽に染まっていた。
「とりあえず僕、教室にいるよ。有崎さんが帰りそうになったら連絡するから、準備できるように待機しといて。怪我だけ気を付けてね」
「りょーかい!」
「ほんとにやるんですかあ…?」
そのあと簡単に段取りの確認だけ済ませてその場を後にした。数分か数十分か、どれほどかかるかは分からないがそれほど長くも無いだろう。何故なら本棟の教室は下校時刻からある程度の時間が経つと教師の見回りがあるらしく、強制こそされないものの無言の圧を喰らうらしいからだ。僕も浩平と遊んでいた時に一度遭遇したことがある。
そんな事を考えていると教室についた。1年3組。入学してからまだひと月も経っていないのに、いろんなことがあった気がする。思い出と言えば、ここ数日にあったことがほとんどではあるけれど、どれでもこの数日は濃密だった。これから先もこんなことが続くんだろうか。だとすればそれは楽しそうな反面、縄の上を歩く様な緊張感もあるように思える。というのも、僕のような人間が不用意に他者と人間関係を構築して、それが長期に健全なものとして続く気がしないからだ。僕は平均以下の人間なので、当然、『普通』に人と仲良くし続けることが出来たためしがない。こういった予想は大抵当たり、数日もしないうちに何か不快になるような事件が起こる。分かっていれば避けられるというものでもない。こういう時、現実に失望しない一番の方法は期待をしないことだ。自分というよりかは、自分の人生に。自分の人生に期待を寄せなければ、何が起きてもまあこんなもんかと他人事でいられる。これ、僕がハッピーに日々を過ごすためのマインドセットだ。これがない僕は多分2年前とかに命を絶っている。
教室の扉を開けると、思いのほか大きな音が響いた。教室の中にはそれ以外の音が無かった。音に釣られて有崎さんが視線を向ける。彼女は僕を認めると、しばらくしてそのまま視線を下に移した。
「…」
僕は彼女の背後を通って自分の席に座る。悪いと思いつつ机上を除くが、何をかいているのかは読み取れなかった。彼女はノートに何事か書きなぐってるように見えた。けれどそれは古文の単語や数式の羅列などでは決してなくて、何かもっととりとめのないモノだ。内容までは分からなかったので、それらが何を目的にしているのかは分からない。
机に腰かけると低い音を立てて椅子がきしんだ。普段の椅子と変わらないはずなのに、こうも響くともうダメなんじゃないかと思えてくる。金属製の机は表面だけ木造で、使い古されて所々削った後がある。今まで多くの同志がそうしてきたように、最早消せない落書きがある。僕はそれらをそっと指でなぞって、窓の外からグラウンドを眺める。グラウンドは夕日を浴びて土がオレンジ色になっている。その中をサッカー部が主に走り回っているが、それももうお開きのようだ。遠いところから聞こえる喧騒は木の葉がこすれる音の様に心地よい。窓を開ければそれがより顕著になるはずだと僕は窓に手をかけて、そこで声がかけられた。
「何をしているの?」
声のした方を向いた。有崎純玲だった。彼女は視線をおとしたまま僕に問うている。
「何って、窓を開けようと思って」僕が言う。
「なんのために?」有崎さんが言う。
「…換気したくて」
「なら外に出ればいいじゃない。私はあなたが教室にいないといけない理由を聞いているのよ」
声には強い拒絶の意思があった。僕は思わずドキリとする。
単純に邪魔なのか、個人的に嫌われているのか、もしかしたら嫌な疑いでも掛けられているのかもしれない。とにかく彼女は僕を見もしないで、この場にいる事を拒んでいる。
「二度は言わないわ。そこから離れなさい」
僕は少しばかりムッとする。有崎さんは僕と目も合わせない。最低限の礼儀もはたしていない。そんな奴の横暴に、どうして僕が付き合わなければならないのか。
「なんでそんな――」
僕が勢いのまま言い返そうと一歩出た、その時だった。
「え?」
パリィン!
と、大きな音が耳の傍ではじけた。その音はそのまま教室の壁を突き破り、無人の校舎を反響していった。
何かきらきらしたものが視界の隅を舞っていく。それは砕け散ったガラスの破片だった。
勢いよく野球ボールが教室の床を叩いた。校庭の方からは悲鳴にも似た声が聞こえる。
「だから言ったのよ」
僕は呆然と有崎さんの方を見た。
ボールが突き破った位置と、その後ボールが描いた軌道。それは数秒前に僕がいた場所を示していた。
「有崎さん…」僕が言う。けれどその後に続く言葉は見つからない。
有崎さんは黙って帰宅の準備をしている。
「何の音!?」
血相変えて教室に飛び込んできたのは川合さんだった。そんな彼女の表情も、教室の惨状を前にしばし固まる。彼女の視線が僕と交わる。僕はゆるゆると首を振った。有崎さんはすでに教材を仕舞いきり、立ち上がろうとしているときだった。
有崎さんは赤く染まった教室の出口に向かう。彼女の体が頭から陰に入っていく。その姿が完全に教室から出ていくまで、僕は何も言えなかった。
教室に転がっている野球ボールを拾い上げて、川合さんがため息を吐く。
「不運だったみたいだね」
「そうみたい」
二人で顔を見合わせる。僕は事態が起こる直前の奇妙なやり取りを伝えるかどうか思案して、そこで思い出した。
「そういえば、清運さんは?」
「あ、忘れてた」
「忘れてたって…じゃあ作戦は中止って伝えなきゃ」
「まあ、こんなことになったらねー」
「それもあるけど、今日の有崎さん。いつにも増して不機嫌だったから」
「ああ、それは、まずいね…」
川合さんは不機嫌な有崎さんに嫌な思い出でもあるのか眉を歪めた。
「ちなみにアカちゃんは、今も階段で待機してる」
「それは、まずいね!」
僕たちは二人して教室を飛び出して、会談に向かう有崎さんの姿を追う。その向こうに――ああ、ダメだ。やる気満々な顔をした緑色の何かがちらちらと様子をうかがっている!
清運さん!連絡するまで体は見せるなと言っていたのに、不安で確認してしまったのかい?でもそんなに身をなりだしたら駄目だよ、丸見えだ――ていうか、あれ絶対、有崎さんに見えてる。完全に悪ふざけだと思われる。友達ルートが消滅する!
「ダメだ。清運さん――!」
制止しようとする僕の声もむなしく。けなげにも一瞬曲がり角に身を隠した清運朱莉は、勢いをつけて曲がり角から飛び出した。一見するとバレバレのその動きは、しかしその行動の意味不明さから被害者に驚きと怒りを提供する半分不可視の魔弾として有崎さんのおなか付近に突き刺さる。
はずだった。
しかしそうはならなかった。清運さんの死角からの突撃は、全くかする素振りも見せず、有崎さんの華麗な横ステップによって躱されてしまったからである。
その代償に勢いよく清運さんはすっころび、持っていた画用紙たちが宙に舞う。そんな様子は意も介さずといった様子でカツカツと階段を下っていく有崎さんである。僕たちは無言で画用紙を拾っている。清運さんが過去に描いた作品群に触れながら、僕は呟いた。
「この作戦、普通に危ないな」
「今ですか!?」
清運さんの突っ込みは数刻前の野球ボールより大きく校内に響いたが、やがてどたどたと階段を上ってくる野球部の足音にかき消されていった。
◇◇◇
そんなことがあった翌日。
昼休みに僕らは美術室に集まっていた。全員の視線は長机の上に置かれており、一枚の紙がライトに照らされている。
紙面にはデカデカとこう書かれていた。
〈作戦2:キュートアグレッション!動物を利用して親交を深めよう大作戦〉
「何、これ?」僕が言う。
「発案者は、私!」勢いよく手を上げて、海野さんが言う。
「海野ちゃん…」清運さんは何か言いたそうに海野さんを見上げる。
「とりあえず、内容を聞こうか」
「ええ、まだやるんですかぁ...」
僕は美術室の丸椅子を持ってきて腰かける。美術室内の丸椅子…そのどれもがいつ付着したのかも分からない絵の具のついたモノの中では、珍しく綺麗な逸品だ。こんなものまで見つけてしまうなんて、僕もこの環境に慣れてしまったようだ。
「私の作戦はこうです!」
「…」
不安そうな顔をする清運さんを尻目に話が展開していく。
彼女の作戦はこうだ。
人間初対面の人間と話すときに建てる作戦は色々あるが、そのテンプレートとして”共通の趣味を切り口にする”ものは多いだろう。例え最初は他人でも、何か同じ方向を向いているモノが一つあれば話題作りの手間は省けるし親しみやすさだって湧きやすい。川合さんはそれを対有崎さんとの交流で適応しようというのだ。しかし、そこで問題になる事が一つある。僕たちは誰も…有崎さんの趣味を知らない。いや、おそらく読書が趣味というのは何となくわかるのだが、それを切り口にしようというのはあまりにも難しい。
「清運さんって、本とか読む?」
「た、たまに…」
生半可な知識で本気の趣味の人と渡り合うのはあまりにもハードルが高い。必要なのは事前知識等が全く不要で、趣味等より”好き嫌い”程度の低いハードルを満たせるものであって、それでいて自然に会話が弾むようなもの。
即ち猫だった。
「猫が嫌いな人間なんていません」
「人によると思う」
「猫が嫌いな女子なんていません!」
「あの、私、猫アレルギー…」
「…」
「…」
「…」
美術室内が沈黙に包まれた。
「知らなかったんだ。幼馴染なのに…」
「!!」
ぼそっと呟いた僕の声に、冷や汗をかきながら川合さんがこちらを見る。チラと清運さんを見ると、うつろな目で苦笑いをしていた。
そういう所だぞ、川合さん。
そして余計な事を言うな、僕。
「ご、ごめん!アカちゃん。私、忘れてて」
「いえ、分かってるので。別にいいです…」
珍しく(?)本気で焦った様子の川合さんである。彼女はとっさに両手を合わせて、眉尻を下げている。とはいえ僕は川合さんに同情的だった。彼女らの関係がどれほどのものなのかは想像もできないけれど、他人の体質についていちいち覚えていろなんて、そっちの方が無理な話なのである。
僕なんて自分の家族の誕生日すらうろ覚えなのだから、そんなに気にすることではないと思うのだが。
それとも女社会というものは、やっぱりそういうの、厳しいのだろうか?
一度聞いた誕生日は絶対に覚えてお祝いをしないというような、そういうの。
「じゃあ、犬にする?」僕が言う。二人の視線がこちらを向いて、少し緊張する。
「犬…ですか?」
「うん、犬。うち犬飼ってるから」
「…う、うん!それいいねえ!本当はうちの子の猫に担当してもらおうとしてたんだけど、ナイス、あんどありがとう!下沢君!こ、これできっと上手くいくよ~…!」
健気に声を張り上げる川合さんだったが、その目はしきりに清運さんを気にしており、次第に尻すぼみになってしまっていた。清運さんも乗り気でないようで、明らかにテンションが下がっている。「こんなことしてる暇があったら絵を描きたいな…」といった顔だ。
「こんなことしてる暇があったら絵を描きたいな…」
言った。
「!!!うぅ」
あ、川合さんがショックを受けている。受けているどころか、ちょっぴり涙目だ。凄い。こんな人間味にあふれている川合さん、初めて見た。
僕は立ち上がる。
どうやら有崎さんと仲良くなる以前の問題みたいだった。
「よし、有崎さんと仲良くなるのはいったん保留にしよう」
「え…」
清運さんが僕を見る。その目は真意を測りかねている。
「まずは僕らがもっとお互いの事を知らなきゃ」
「お互いの事を…?」
「うん」
僕は続ける。
そもそも、出発点は悪くなかったように思う。まともな人付き合いをしてこなかった清運さんに、友達を作る。友達を作って、社会の一部になって、視野を広げる。そうすれば、今の膨大な未知を少ない既知で穴埋めするような歪な作品は生まれない。
あくまで感覚の世界だ。しっかりとしたメソッドがあるわけじゃない。でも他ならない清運さんが自身の弱点を理解してこの方針を認めてくれた。僕らはその片棒を担いだものとして、多少なりとも貢献するべきだ。その結果が昨日考えた作戦だ。我ながら良い作戦だった。しかし、友達を作り、世界を広げたいのなら、恰好の標的はここにいるではないか。何も友達になるのがクラスメイトである必要はない。ただ有崎さんを目標に挙げたのは、彼女は比較的公平で、同姓で、曲がりなりにも僕の数少ないよく話す人であり、クラスで位が高いから、取り入るなら彼女が良いのではないかという安直な考えだ。清運さんが対外的には普通に話すのも難しい人間である時点で、スタート地点にすら立てていなかったのだ。だからこれは仕方のない事だった。
川合さんと清運さんを順番に見る。
僕が思うにだ。
「忘れてたなら、思い出せばいいんだよ。毎日話せば、そんなことぐらいあるさ」
二人には何かのっぴきならない事情があるのかもしれない。でもこうして毎日会えているのだから、そう深刻なものでもないと信じたい。少なくともその兆しがあるのなら、少しでも仲の良い方が健全だと考える僕である。
「僕、先に帰るね。放課後になったら来るから、またあとで」
美術室を後にする。きっと今から彼女たちは女子トークに花を咲かせることだろう。その場に僕がいては邪魔になる。我ながら実に論理的なナイス判断だ。何も全く知らない人と友達にならなくったって、すぐそばにいる人と仲良くやれば良いじゃないか。しかも同姓で、友達が多い人がいる。これを使わない手はないってものだ。今日の僕は実に冴えてる。
友達として僕が川合さんに勝っているところは何一つない。ランニングだって勝てないし。
決して色々面倒くさくなったわけではないのだ。
僕は特別棟の渡り廊下を抜けて喧騒の聞こえる本棟へと戻っていく。
その途中で、有崎さんに声をかけられた。
「下沢君」有崎さんが言う。長い黒髪が揺れている。
「有崎さん。何?」
「…別に、何でもいいのだけど」
彼女は数秒逡巡して。
「下沢君はアレルギーってある?」
そう言った。
それはまた、タイムリーな話だ。
「ないけど。何で?」
「全校アンケートよ。新聞部に頼まれたの」
「へー」
そういうこともあるのか。あるのか?いや、絶対嘘だ。そんな一ミリも利益にならないことをする人間じゃないだろ、この人。短い付き合いの僕にだってそれぐらい分かるぞ。
でも口に出しても否定されそうだったので辞めた。
「有崎さんは?」僕が言う。
「犬」有崎さんが言う。
「…」
「私、犬アレルギーなの」
「…あー」
「だから絶対、犬を私に近づけないで」
「近づいたら、どうなるの?」
「貴方の枕元に化けて出るわ」
「有崎さんって冗談言うんだ」
「笑いごとじゃすまなくなるわよ」
それだけ言って有崎さんは去っていった。確かにアレルギーというのは重大だ。
僕はポケットからスマホを取り出し、作戦中止の旨を伝える文言を考える傍らで、ふと思う。そういえば、川合さんの具体的な作戦って何だったんだろう?




