ラーメンと牛丼とビールの文筆修行
「三流週刊誌の記事みたいな
文章書くな!」
と罵声が飛ぶ研究室。
研究室は様々な学術書や
学術雑誌が山積みになり
ゴミ屋敷のやうである。
俺は今、猛烈に後悔をしている。
とんでもない師匠に
文筆修行の弟子入りを
してしまったからだ。
「三流週刊誌の記事みたいな
文章書くな!」
週刊誌の物書きさんには失礼極まりない
言葉を吐くこの老人。
T大卒のインテリの経済学者である。
口が悪く性格も悪いが
史學やら文學には異様に詳しい。
変人の学者老人だ。
こんな時代錯誤なスパルタの文筆修行の
弟子入りをしたのは
僕が田舎から東京の大学に出てきて
食べ物を買う金もなく
大学構内で困り果てていた時期である。
「ファミレスでビールを飲まないか?」
僕は講義の後いきなり変人老人学者に
誘いを受けたのだ。
俺はビールが飲めることが
嬉しくて堪らなかった。
九州の貧しい田舎ではビールは高級品。
甲類焼酎しか飲めない地域出身の僕は
高級品であるビール、
ファミレスでビールが飲めると誘われ
喜びついていった。
そこではひたすらビールを飲んだ。
酔っていて
記憶はあまりない。
気づいた頃、
僕は何故か
この変人老人の学者の
文筆修行の弟子となっていた。
今思うと
若い学生を酔わせ
弟子入りさせ
自分の弟子を増やそうという
策略だったのだろう。
海の見える研究室で
ラーメンを食い、
牛丼を食い、
深夜まで研究し
寝る。
研究室のコンパでは
師匠と弟子の野郎だけの
東京名物のビールでの宴会の日々。
今でも海を見ると
研究室に缶詰で修行をしていた
苦しき修行の
あの日々を思い出す。
嗚呼‥‥!
苦しきは旅路の街道。
樂しきは麦酒。
美しきは海。
海が美しいと酒が旨い。