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45.月翔と僕の、大好きな

 それから10秒ほど須磨子さんと抱き合って、僕はリビングに向かった。

 そっと亮介さんのもとに近寄ると、亮介さんは驚いたように目を見開く。

「月飛、くん……」

 何かを言おうとして唇を微かに開くも、彼はそのまま口を閉じた。

「おかえり」

 ふわりと花が柔らかく咲くように、亮介さんはそう言って笑った。

「ただい、ま。……おとう、さん」

 まだ、「お母さん」も「お父さん」も言いなれないけれど。

 いつか、心の底から親子だと思えるようになりたい。

 そう思った。


「えっと、陽太くん……よね?」

「あっ、はい。來山陽太と申します。突然押しかけてしまって、すみません……お邪魔でしたらすぐ帰りま、」

「私が誘ったの。一緒にご飯どうって」

「あら、そうなの? なら、ぜひ食べていって。作りすぎちゃってねぇ、4人では食べ切れないのよ」

 困ったように頬に手を当て、須磨子さんが言う。

 陽くんはもう断り切れなくなったようで、戸惑ったように頭を下げた。

「3人とも、手洗ってきてね」

 優しく亮介さんが笑って、慈しむような光が目の奥で光った。


 3人順番に手を洗って、食卓に向かう。

 陽くんは両親に連絡をして、「多分帰ったら怒られるなぁー」と笑っていた。

 食卓の椅子にすわ、……え……?

 ——オムライス?

 僕は、ふっと目を見開き。ひゅっと息をつめた。

「……須磨子、さん。どうして、オムライス……」

「え? んー……理由はあんまりないかなぁ。オムライスにしようかなって思って」

 ん? と首を傾げながら、須磨子さんが優しく答えてくれる。

 ……だって。

 だって、オムライスは。

 ——親戚がいないときに、僕が家で作ってあげた。

 月翔と、僕の。

 大好きな、料理なんだから。

「っえ、どうしたの月⁉ オムライスが気に入らなかった⁉」

「っ、そうじゃ、なくてっ……嬉しくっ、てっ……」

 いつの間にか、すぅっと涙が頬を伝っていた。

 須磨子さんたちは、オムライスが僕と月翔の大好物だとは知らなくて。

 本当に偶然、オムライスを作っただけなんだろう。

 でも……それでも。

 嬉しかった。

 泣きながら、オムライスをスプーンで口に運ぶ。

 ふわりと卵が柔らかく溶けて、甘いケチャップライスがほろりと口の中でほどけていく。

 ……おいしい。

 僕は涙の痕を残しながら、満面の笑みを浮かべた。

 月翔。

 月翔にも、食べさせてあげたかった。


「陽太くんさ、せっかく来たんだからゲームとかやってったら?」

 碧が言うと、陽くんは考え込む素振りをした。

 5秒ほど考えて、彼はにこっと笑う。

「そうですね。やって帰ります」

「じゃあ何する? 人生ルーレット?」

「トンジャラとか」

「すごろく?」

「オセロ!」

「はいって言うゲーム」

「人狼」

「もういっそトランプ」

「じゃあQNO(クノ)

「ワードウルフ」

「……うーん。いっぱいありすぎてやばい」

 碧が頭を抱えて呻き、陽くんもん-と悩みだす。

 ……ワードウルフとか……人狼、してみたい……な。

 そう思って、意を決し声を出した。

「ワードウルフとか……人狼、してみたい……な」

「お、いいじゃん。しようしよう」

「どっちからしますか? ワードウルフの方?」

「どっちでも。ワードウルフでいいんじゃない? あ、あとお母さんもお父さんも入るからね」

 はーい、と須磨子さんと亮介さん2人の返事が聞こえると、碧は満足げに頷いた。

「んじゃ、最初は私マスターでいい? で、次陽太くん、月、お母さん、お父さんの順でマスターやってこ」

 碧はそう言ってにこっと笑う。

「誰でもいいから早く来てねー」

 ひょこっと顔を出して、彼女は一言添えて奥に消えていった。

「じゃ、まず俺から行くなー」

 陽くんも消えて行ったが、10秒ほどで帰ってきた。

「じゃあ、次は僕が」


「お、来たね月。えっとー、月は……“鬼ごっこ”ね」

 耳元でささやかれ、僕はこくっと頷く。

 鬼ごっこ、鬼ごっこかあ……。


「じゃ、始めよう。最初俺からー。『遊び』だよな!」

 うんうん、とみんなで頷く。

「うーんと……『小学生くらいまでしかやらない』かしら」

「『走る』だね」

「『大人数』……かな」

「『いろんな種類がある』」

「ええと……『何の道具も使わない』?」

 僕はその言葉を言ってから、みんなの反応を見る。

 須磨子さん、陽くんは何の違和感もなく頷いているけど、……あれ。亮介さんは、一瞬え? という顔をして、周りを見てからああ~と言った。

 ……怪しい……。

「1周回ったね。じゃあ、投票に移ろうか」

 碧がそう言って、僕たちもこくりと頷いた。

「えー、誰だろ」

「わかんないわねぇ」

「そうだね、分かりにくいね」

 口々に言っているけど、みんななんか目が鋭い。

「じゃあ、いっせーので!」

 一斉に指を誰かに指して、みんながみんなの投票先を見る。

 ……ええと、僕が亮介さん、亮介さんが陽くん、陽くんが亮介さん、須磨子さんが僕……バラバラだ。

「あら、私のことはみんな投票してないわねぇ」

 柔らかに笑って、須磨子さんがそう嬉しそうに言う。

「えーと、ウルフはー……お父さん! でしたー」

「「いぇーい」」

「あらまあ、亮介さんだったの?」

「バレてしまったね……」

 やった、当たった……っ。

 僕は嬉しくて、にこにこと笑った。


 それからワードウルフを5回して、人狼もして、さあ次は何をする……と考え出した矢先。

 陽くんが、申し訳なさそうに手を合わせて言った。

「すみません、もう11時なので、流石に帰ります」

「ああ、わかった。ごめんね、こんな遅くまで」

「いや。とっても楽しかったです。また来てもいいですか?」

「勿論よ。私たちも楽しかったしねぇ」

「そうだね。僕たちも楽しい時間になったよ」

「陽くん、また来てね」

 僕たちに向かって優しく、太陽のように明るく笑って、陽くんは出て行った。

 最後まで手を振り続けて、陽くんの姿が見えなくなってから碧と話す。

「はー、楽しかったね」

「うん、楽しかった。またやりたいね、碧」

「そうね!」

 僕たちは笑い合いながら、温かい家に戻った。

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