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44.ただいま
そうして僕たちは、家路をゆっくりと帰った。
その道中で、僕は陽くんの過去、陽くんが碧に助けてもらった話を聞いた。
陽くんの両親と兄は、僕が聞く限り最悪で。
そんな最悪な家庭環境でこんな優しく明るい陽くんが育ったということ自体が、奇跡だと思った。
「——ただいまー」
「お邪魔します」
「……ただいま、です」
口々に言って、家に入る。
僕の……居場所。
須磨子さんと亮介さんは、怒っていないかな。
そんなことを不安に思いながら靴を脱いで、フローリングに足をつけた。
その時。
「碧ちゃん……どうだっ——月、飛……くん……?」
須磨子さんがぱたぱたとスリッパを鳴らして駆け寄ってきて、僕は体をこわばらせた。
須磨子さんは碧に声をかけようとした時、僕の姿を認めてはっと目を見開く。
怒声が飛んでくることを覚悟して、僕はぎゅっと目を瞑る。
すると——
ふわり。
優しく、何かに包まれた感覚の後に。僕は須磨子さんに抱きしめられたのだと、遅まきながら知った。
「おかえりなさい、月飛くん」
穏やかな声で、須磨子さんはそう言った。
僕はそっと目を閉じて、小さく須磨子さんの耳元でささやいた。
「うん——ただいま、……おかあさん」
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